2016年12月28日水曜日

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2016年12月1日木曜日

Masters Forum 2016 ご来場のお礼

Masters Forum 2016へご来場いただき、誠に有難うございました。

2017年も開催を予定していますので、またのご来場を心よりお待ちしております。

Masters Forum イベント事務局


2016年11月7日月曜日

教育の有効性 ~QbD(Quality by Design)アプローチ~

様々な教育が社内では展開されていますが、
その有効性はどのように検証していますか?
Holly DeIaco-Smith, MS
HDS Consulting

コンサルタントという立場だと、クライアント全体で何が効果的に機能しているのか、共通の問題点とは何かを把握できるという利点があります。そのため、事例のガイダンスや共有する問題を回避するための実践的アドバイスの提供を目的として、プロジェクトにご一緒させて頂く機会が多くあります。

最近の例として、「教育の有効性を検証するための最善の方法とは何ですか?」といった質問をクライアントから受けました。「教育の有効性をどのように定義していますか?」と、コンサルタント的には定番の返事を返したところ、「はっきりとは分からないのですが、さまざまな監査で指摘されます」との回答がありました。


教育の有効性とは何か?
では、教育の意味を掘り下げて、定義するところから始めてみましょう。「効果的な教育」というと、担当者が教育で新たなスキルや知識を学んで、業務などを改善・向上することが頭に浮かびます。

基本的には、教育の有効性とは、教育を実施した結果、組織内における担当者の知識やスキル、行動パターンがどの程度、改善されたかで図ります。

簡単に言えば、教育の目的が実際に達成されているかということです。教育で予定された内容をすべて習得できているか?参加した担当者は、教育で学んだことを翌日の業務から活かすことができているか?ということなのです。

特に、GMP規制を受ける環境下では、教育の有効性が頻繁に取り上げられています。しかし、曖昧な部分が多いともいえます。いわゆる、教育の有効性が何であるか、どのように導入すればいいのか、有効な教育というものに対し規制当局は何を求めているかといった内容を、誰もが明確に理解できずにいるのです。規制の内容を見ても(後述する規制をご参照ください)非常に漠然としています。内容を要約すると、「組織は教育の有効性を定期的に評価するプログラムを持つこと」といった内容が述べられており、解釈する上でかなり曖昧な部分があります。この点に加えて、概念の実践に関しては、限られた実用的情報しかない点、また監査で指摘されたが内容は不明確であるといった現状を加味して、考えていきましょう。


本記事に関連するホワイトペーパー


教育の有効性についての認識


規制要件の観点からみた傾向
規制当局による教育の有効性への注目度は高くなっています。しかしながら、FDAが教育の有効性について指摘することは、組織の再教育(所見の結果やCAPA関連の場合が通常)が機能していないと再三に渡って実証される場合を除き、ほとんどありません。以下に示すサイクルについては、ご存じだと思います。


1. 監査の所見で、根本原因は人為的要因によると指摘を受ける。

2. 該当人員の再教育を実施する。

3. 逸脱が再発する。

4. 根本原因は人為的要因によると特定される。

5. 再教育を再び実施する。

6. そしてまた逸脱が再発というサイクルが繰り返される。

このような場合の典型として、根本原因の適切な分析が行われていないことが推測できますが、これは別のトピックとしましょう。

最近、元FDA担当者に、「製薬企業が有効な教育を行っているというデータの根拠や証言を示す資料として何を求め、何を以って適合との判断を下しているのでしょうか」といった質問をしてみました。その回答は、「根本原因である人為的要因の発生率が少しずつ低減され、安定していることです」というものでした。つまりこれは、査察で焦点になるのは、結果がベースになっており、教育関連の頑健なプロセスが構築されているかではないということです。


品質上の観点からみた傾向
ISO9000の旧バージョンでは、当初、教育ニーズの特定、教育の実施、記録の保管(適格性の一部として)に焦点が当てられていました。しかしながら、最新版では、力量及び教育の有効性に関する文言が追加されています。「6.2.2 力量、教育・訓練及び認識」では次のような記述があります。 

組織は、次の事項を実施しなければならない:
  • 製品要求事項への適合に影響がある仕事に従事する要員に必要な力量を明確にする。
  • 該当する場合には、その必要な力量に到達することができるように教育・訓練を行うか、又は他の処置をとる。
  • 実施した処置の有効性を評価する。

この文言は、規制当局と同様、ISO9000で注目すべき対象は、プロセスから成果へと移行していることを示唆しています。


過程から成果への移行
適切な担当者を対象に、妥当性のある教育が実行されていると示すプロセスや、文書化が整備されていることなどを証明するだけでは通用しません。こうした基本的な要件に翻弄されている企業も多いことかと思います。自身の業務や役割とは無関係な作業手順書(SOP)を読まなければならない状況に陥っている担当者に聞けば、きっとこの意見に賛同することでしょう。つまり、実施した教育に対する「有効性を定期的に評価」することが求められているのです。しかし、これは具体的には何を意味しているのでしょうか?

こうした規制上の要求事項をどのように解釈したらいいのか、役立つガイダンスがあれば良いのですが、残念ながら何もありません。定着しているカークパトリックの評価法を用いて、教育の有効性を測定することは可能です。カークパトリックの評価方法は優れたモデルですが、プロセスだけでなく成果においても整合性を確保することが求められる環境にどれだけ当てはまるでしょうか。施設レベル及び大規模な組織全体で教育を見渡し、「確かに整合性を確保しつつ、高い品質の教育を運用し、その結果として技能と適格性を有する人員を確保し、結果的に事業に対してより品質の高い成果(臨床データ、患者の安全性、医薬品など)を生み出しています」と言えるためにはどうすべきなのでしょうか?




何から手をつけたらいいかわからない方のために、教育の有効性評価へ簡単に適用できる方法をご紹介したいと思います。


教育の有効性への2段階アプローチ





教育の有効性の確保
組織は、教育の設計、開発、提供方法の最善策・事例における重点実施項目から教育の有効性を確保することが可能です。これはまさにQuality by Designアプローチであり、担当者が教育に参加するより前のタイミングで発生します。

  • 方法は?
成人対象の学習や教育の設計、開発、提供におけるベストプラクティスを標準の教育方法論に組み込むことで、組織は「適切なタイミングで適切な人員に対し、適切な指導者による適切な教育を実施し、その結果として適切な成果を挙げる」といった目標を達成することが可能となります。

  • どのようなもの?
Quality by Designアプローチの例を以下に示します。



*注:これはすべての教育プロセスの総合的な知見を示すものではありません。


教育の有効性の評価
組織は、教育完了後、教育の定期的なレビューを通じて、その有効性を評価することができます。

  • 方法は?
定期的な評価は、個々の施設レベルで実施されることが多いのですが、複数の施設を有する大規模なグローバル組織を見越した密接な連携のもとで実施することもできます。教育の有効性の評価は、担当者が教育に参加した後に実施し、特定の定期的レビューに位置付けることができます。

  • どのようなもの?
定期的レビューの実施については次のとおりです。
      • 選ばれた教育に対し監査を実施
      • レビュー結果を文書に記録
      • 教育の有効性確保のための継続的改善

重要事項:最低限実施しなければならない評価の定義
定期的レビューの実施前に、特に組織の拠点が複数の場合には、必要最低限実施すべき評価項目を明確にしましょう。 例として、教育の有効性を評価する施設/場所/組織が、最低限採用している評価方法を以下に示します。




個人的には、このように必要最低限の評価を用いることで、教育の有効性の是非を実感できると思っていますが、より多くのデータを示すための評価方法は他にもあります(フォローアップ評価、担当者の技能証明、年1回行う達成度(パフォーマンス)の評価など)。注意点としては、やりすぎないということです。

選ばれた教育に対し監査を実施
評価法を定め定期的レビューを行う準備が整ったら、どの教育を評価すべきでしょうか。私は、監査のアプローチを推奨しています。監査のアプローチでは、定期的レビューの際に、多大な労力を費やすことなく教育の有効性について、極めて正確な判断をすることができるからです。定期的レビューで実施例を挙げてみましょう。

1. 有効性の評価に合理的と思われる教育のパーセンテージまたは最小値を決定します。教育は、各種を織り交ぜるよう(最低ハイリスクやハイインパクトトピック向けの講師主導型の教育を1つと自修型教育を1つ等)にしてください。脚注:* Read and Understand (AKA Read & Sign) “Training” is not considered a self-study.

2. 最低限の評価にて教育の有効性を評価する。「担当者の評価完了」に関する2番目の測定に移りましょう。アプローチの例は次の通りです。

  • 選択された教育別に全セッションを通じた参加者総数の25%(あるいは、各組織で適切な割合)に対し評価スコアを抽出する。
  • 評価スコアをチェックする。
  • 次の考察を行う
    • チェックした担当者評価スコアの内、目標達成率について、達成期待値未満である割合は?この場合、組織のスコアから不適合状態であると考えられます。
    • 25%以上か
    • 特定の教育で不適合評価の割合が25%以上であれば、その理由を特定します。
    • 根本原因分析を行い、施設内でどのように、誰が、いつまでに修正するかについて文書に記録します。

必ずしもこの手順に従って評価する必要はありません。1つの例ですが、この例では、教育の有効性の評価が、部分的ですが見えるようになります。次のステップでは、監査や教育の結果、その後のアクションを文書に記録し、これらを用いて継続的改善プロセスへ反映します。

成熟した教育管理が有効性には必要
現実的に、教育の有効性には教育管理の成熟度が考慮されます。「教育の有効性を確実にする」という記載で、標準的な教育の方法があると言ったことを覚えているでしょうか?方法は、完全なものである必要はありませんし、フレキシブルであって良いのですが、一貫性と基準の採用が要求されます(例、維持に関する基準 – 担当者に期待する読み込み、理解する手順書の数の制限、教育時間の制限)。組織は、教育プロセスの完成度を十分に高める必要があります。最善の方法に繋がるような完成度の高い教育機能が欠けているにも関わらず、なぜ、教育の定期評価の構築に多大な労力を費すのでしょうか?そこからは常に同じ結果、つまり非効果的な教育が導かれるしかないのです。

【結論】
事前に十分な時間を費やし、教育の設計、開発及び提供を行ってください。これにより担当者は成果を挙げてくるはずです。教育の有効性を最も良く示す方法として、逸脱の減少になります。

教育の有効性を確保するうえで、成果に基づいたアプローチが欠けていては、担当者の業務レベルは向上・改善されず、品質もまた同じ道筋を辿ることになるでしょう。

法規制に関する参照- GMP


オーストラリア
Therapeutic Good Administration (TGA) - Australian code of good manufacturing practice for human blood and blood components, human tissues and human cellular therapy products Section 208.
「継続的教育を行うこと。 実践的有効性を定期的に評価すること。」https://www.tga.gov.au/book/personnel-and-training

European Union
The Rules Governing Medicinal Products in the European Union
Volume 4 – EU Guidelines for Good Manufacturing Practice for Medicinal Products for Human and Veterinary Use, Chapter 2: Personnel
Section 2.11 Training
“GMPの理論及び実践に関する基本訓練以外に、新規雇用人員は彼らに割り当てられた職責に対し適切な訓練を受けること。継続的教育を実施しその実践的有効性を定期的に評価すること。教育プログラムが準備されており適宜製造部門の長または品質管理部門の長のいずれか一方が承認していること。訓練記録は保存しなければならない。」

European Medicines Agency – EMA(欧州医薬品庁)
COMMISSION DIRECTIVE 2003/94/EC, Article 7
Personnel
「人員は、特に品質保証及びGCPについて必要な場合は、治験中の医薬品の製造のための特定の要求事項に関し、その概念及び適用について、導入時または実施中教育を受けること、そして教育の有効性について検証すること。」

Health Canada(カナダ保健省)- GMP
C.02.06 Personnel
1. 「継続して行われる教育の有効性を定期的に評価すること。」

World Health Organization(世界保健機関)(WHO)
WHO – Annex 2 - WHO good manufacturing practices for pharmaceutical products: main principles
Section 10: Training
“10.2 GMPの理論および実践に関する基本訓練以外に新規雇用人員は割り当てられた職責に対し適切な訓練を受けること。継続的に訓練も実施し、実効性は定期的に評価されること。承認された教育プログラムが準備されていること。”


著者のご紹介
Holly Deiaco-Smithは、企業診断に関するコンサルティングを20年に渡って従事してきた経験により、クライアントの皆様がさらなる成功を実現させるために、改善の支援を行っています。Big 4でAccenture及びIBMグローバルサービスのコンサルティングを経験し、最善方法論、最先端の実践手法、クライアントコンサルティング業務に関する基礎を築きました。Holly女史は、教育的技術でMSを取得、Six Sigmaに精通し、 Myers-Briggs Type Indicators Steps I & II.の管理及び解釈の認定を受けています。
戦略的な計画、工程改善など、主に、最先端の実践手法、組織改革、大人を対象にした学習の設計・開発と行動変化管理などの経験を有しています。企業にとって、優秀な人材開発の必要性が必須となっている現在、クライアントの学習戦略における定義や改善の支援を行っています。
クライアントと共に共同で考えるユニークな手法と管理改善への注目度の高さによって、秀逸なサービスと結果を提供しています。お問い合わせは、610-871-2316 またはhjdeiaco-smith@hdsconsulting.comをご利用ください。HPアドレスwww.hdsconsulting.com


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2016年10月5日水曜日

Masters Forum 2016 開催のお知らせ


マスターコントロール製品をご利用いただいているお客様、また、その導入をご検討中のお客様向けに、業界の最新動向や製品の最新情報をご提供するイベント「Masters Forum」を開催いたします。

本イベントには、行政機関や企業でご活躍されていた専門家の方々や、マスターコントロールの公式パートナーによる業界セッション、米国本社にて製品のプロデュースに携わっている担当者の講演などを予定しています。また、マスターコントロール製品のデモブースもご用意しておりますので、皆さまのご来場をお待ちしております。




開催場所・日時
  • 日時:2016年11月29日(火)13時から19時30分まで
  • 場所:UDX GALLERY(秋葉原UDX内4F)
  • 〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1(秋葉原駅下車徒歩すぐ)




注意事項
  • 席数に限りがございますので、お早目のお申込みをお願い致します。
  • IT関連ならびにコンサルティング企業のご来場は、事前許可を得ている例外を除き、ご遠慮いただいておりますので、ご了承ください。
  • Masters Forumでは、当イベントへの参加登録にオンラインのイベントプラットフォーム「EventRegist(イベントレジスト)」を採用しています。購入手続きには、「EventRegist」への会員登録が必要となります。

Masters Forum 2016 特設Webサイト

ご登録はこちらから:http://mastersforum.jp/

2016年9月6日火曜日

eTMF管理:ご使用のソフトウェアはOne-Trick Pony?それとも・・・



One Trick Ponyとは、直訳すると「一つの芸を持つポニー」
ですが、「芸が一つしかない人(または物)」という意味です。
電子治験マスターファイル(eTMF)向けソリューションを検討
される場合、One-Trick Ponyと呼ばれるような一つの機能だ
けが特徴的なソフトウェアではなく、高い汎用性を備えたソリ
ューションをお選びください



Patricia Santos-Serrao
MasterControl's Market Segment Manager
Global Pharmaceutical, Blood & Biologics

電子治験マスターファイル(eTMF) ソリューションをご検討中の企業の皆様は、「eTMF業界のリーダー」、あるいはこの手の宣伝文句を掲げるベンダーを目にすることが多いかと思います。数多くのベンダーがリーダーと称していますが、eTMF分野におけるリーダーとはいったい何を意味するのでしょうか?eTMF管理目的で導入予定のソリューションを評価する場合、どこを重要視したら良いのでしょうか?この質問に明確な回答を提 示することは、思ったよりも難しいことなのかもしれません。






eTMF要件の明確化
「臨床試験の管理は、単に臨床試験を通して作成された文書を管理するだけの作業にとどまるものではない」と言われています。リスク管理やモニタリング、監査、データ収集、教育、ベンダー管理、試験実施計画書からの逸脱の管理等、臨床試験の成功に影響を与える要素は多く存在します。試験に関連する活動や文書、チーム内での連携を包括的に管理することができれば、の透明性だけでなく効率化の向上も果たすことができるのです。

eTMFにおいて見落としがちなのは、医薬品開発業務受託機関(CRO)や治験依頼者、メディカルライター、治験責任医師、その他の外部試験関係者との文書のやり取りや共有化、共同作業の必要性です。CV、FDAフォーム、IRB承認などの文書が試験施設で数多く作成され、そうした文書が施設や試験の件数分、さらにCRAの人数分存在することになれば、文書のインポート、索引付け作業を四六時中行うことになりかねません。ソリューションを使用して治験責任医師の施設からeTMFに文書を直接的に、しかも簡単に提出したり管理したりすることができるのであれば、臨床担当者は付加価値のある職務に集中し、より多くの時間を費やすことが可能となります。また、ソフトウェアを使用して、CROやメディカルライター、監査担当者といった外部の関係者と、文書の作成やレビュー、共同作業、承認手続きができるとなれば、文書化の際のレビューサイクルが短縮され、より多くの時間を費やすことが可能となります。また、ソフトウェアを使用して、CROやメディカルライター、監査担当者といった外部の関係者と、文書の作成やレビュー、共同作業、承認手続きができるとなれば、文書化の際のレビューサイクルが短縮され、より多くの時間を本来の業務に費やすことができるのです。


本記事に関連するホワイトペーパー


eTMF要件を超えた視点
eTMFソリューションを評価する際、eTMF文書の作成や確認、承認といった当面のニーズを超えた視点で判断してみることが必要です。eTMFを管理する場合、収集あるいは発信した情報を継続的に管理する為、文書の現行ステータスやレビューサイクルの把握、権限や依存性の管理が必要となります。


また、臨床試験終了後の文書管理や発信の容易性も見極めなければなりません。例えば、FDA(米国食品医薬品局)など各国の規制当局への販売承認申請書として利用、提出する際の利便性を見極めます。また、短絡的な判断に注意することも重要です。短絡的な判断とは、組織全体における特定分野に対する投資という見方ではなく、臨床ニーズを満たすことができるソリューションとして投資を導くことです。貴社でeTMFソリューションを検討中であれば、eTMF管理を超えたソリューションの潜在的可能性について、次の要件を確認してみてください。



社外関係者
このeTMFソリューションを使用することにより、社外関係者(CROや治験医師)との文書業務の分担、レビュー、共同作業を円滑に行うことができるのか?

臨床試験を外注する企業が増える状況では、情報や文書の共有化などの日常業務に外部関係者が加わることによって、「実質的な」臨床試験関係者間の業務に支障をきたすようでは困ります。試験チーム内では、治験に関連する文書作成業務を共同で円滑に実施できる機能があることが必須となります。


臨床試験の品質
このソリューションによって、臨床試験の品質に関する文書(標準的な「eTMF」ではない臨床試験SOPなど)を管理することが可能であり、臨床試験関係者が必要な場面で手順書を簡単に利用することができるか?

eTMFの文書収集は、治験関連文書のコンテンツに綿密に対応するものですが、手順書や業務の実施方法や規制準拠 (HIPPAや盲検法など)をまとめたSOPなどの臨床試験の品質に関連する文書は含まれません。eTMFには組み込まれていませんが、疑問が生じた際に臨床試験の品質に関連する文書が同一システム上で即座に利用できるようにしたとしたら、その後の業務のやり方は違ってきます。利用できる場合にはその手順に従って業務を遂行できますが、利用できない場合には、数か月前に受けた教育の内容を思い出すことに頼るしかないのです。


GCP教育
臨床試験チームによる臨床試験手順の理解を図るためのGCP教育や教育記録の管理が可能か?

臨床試験の品質に関連する文書は、日常業務を行う上で必須の文書です。そして、臨床試験関係者全員に臨床試験の業務遂行にあたり、誰が、何を、どこで、いつ、なぜ行わなければならないのかを周知徹底することは、臨床試験品質管理者及び試験管理責任者の責任となります。これが正常に機能しない場合には、試験全体の品質に重大な影響を与えてしまうことになりかねません。


薬事業務
当局への申請が必要な臨床試験の関連文書は、どのような方法で薬事部門に提供可能か?

臨床試験実施業務と薬事部門業務は、臨床試験を通じて緊密な関係を維持しながら行っていくことが非常に重要となります。薬事業務には、治験医師の文書や治験実施計画書の修正や有害事象の更新など日次または週次の頻度による提出義務が存在します。eTMF管理ツールがeTMFのみを管理し、当局への申請文書を管理しない場合、臨床関連文書をシステムからエクスポートし薬事システムにインポートする必要があります。この場合、申請文書と原資料のリンクは存在せず、文書がどこで、いつ提出されたかといった履歴を残す機能は失われてしまいます。


他部門と連携を取らないやり方の排除及び透明性・効率性の向上
他部門と連携を取らないやり方は組織内に蔓延し、非効率性をまねき品質の低下をもたらします。真のテクノロジーとは、他部門と連携を取らないやり方を最大限に減らし、社内及び社外の関係者間における情報の交換や共有を促進しうるものであり、またそれを果たすべきものであります。企業全体の文書管理が単一プラットフォームを使用して行われる場合、各部門特有な文書管理ニーズに関連する機能を組み合わせた構成が可能となります。つまり、敏捷さと透明性を実現する能力を制限してしまうような見えない壁を作ることなく、各部門が情報管理に必要なものを入手できる体制を整えることができるのです。

Multi-Faceted Steed「多才な(芸を持つ)馬」
複数のeTMFソリューションを検討されている場合、そのソリューションはeTMF管理以外に何ができるのか、ベンダーに聞いてみてください。One-Trick Ponyと呼ばれるような、芸が一つしかないソフトウェア(ポニー)ではなく、Multi-Faceted Steedと呼べる、多才な(芸を持つ)ソフトウェア(馬)を探してみましょう。


著者のご紹介
Patricia Santos-Serraoは、Western Connecticut State University及びUniversity of Phoenixにて経営学の学位を取得後、医薬品業界の薬事や臨床分野にて、20年以上もの経験を有するライフサイエンス分野のプロフェッショナルで、Schering-PloughやBoehringer Ingelheimでは、薬事や臨床分野を担当していました。現在は、マスターコントロールの医薬品や血液、バイオ分野向けのプロダクトマネジャーです。マスターコントロールに入社する前は、品質やコンプライアンスを管理するソフトウェアメーカー「Qumas」にて、医薬品R&D分野向けの製品企画やセールス、マーケティング、導入サービスなどをプロデュースし、特に、申請文書管理とTMF管理の分野に注力していました。また、複数の医薬品やバイオ、医療機器メーカーに対して、電子文書管理や申請文書管理、eCTD、各国の申請文書向けソリューション導入の支援の経験もあります。現在は、RAPS(Regulatory Affairs Professional Society)やDIA(Drug Information Association)のワーキンググループでも活動しており、RAPS及びRACBからRACB(Regulatory Affairs Certification Board)の認定も受けています。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年8月24日水曜日

Quality Managerが品質文化を創造する6つの方法

「品質」に対する共通認識を持つことが、品質文化を育てる唯一の方法です
Beth Pedersen
Marketing Communications Specialist, MasterControl Inc.


Quality Manager(品質責任者)は、非常に大変な役割です。製品やサービスのライフサイクル全体において、一定の品質と安全性を確保する責任があり、様々な経験や知識を駆使して、対応することが求められます。その為、日々の業務も、品質に関わる様々な分析や測定、評価といったことが中心となり、食事中など勤務時間外でも品質のことを考えているといった方も少なくないと思います。そのような多忙な毎日が続いていくと、品質について熟考する時間も取りにくいかと思いますが、本稿では、言葉の基本に戻って、顧客からの要望や義務といった見方ではなく、本来の「品質」の概念について、検討したいと思います。


まず、「品質」の意味に注目してみましょう。「品質」という言葉には数多くの定義がありますが、American Society for Quality(ASQ)における定義は以下の通りです。

個人またはセクターで独自の定義が存在する主観的な言葉。専門的な利用方法としては、次の2種類が挙げられる。


       1. 明示または黙示のニーズを満たすような性能に関わる製品またはサービスの特徴
       2. 欠陥や不備を伴わない製品またはサービス


Joseph Juran氏によれば、品質とは「使用する上での適合性」であり、また、Philip Crosby氏は「要求事項への適合性」としています。

欠陥や不備を伴わない高品質の製品及びサービスを届けるためには、組織的な努力を結集させる必要があります。しかし、品質という用語に「個人やセクター独自の定義がある」のであれば、どのようにして一貫した品質を確保できるでしょうか。ASQ 及び Forbes Insights*1の調査では、品質文化の必要性が指摘されており、品質について組織で共通の理解を深め、共通言語で表現し、全従業員が品質重視の行動を取るといった環境を備える必要性があります。


本記事に関連するホワイトペーパー


企業文化を変えることは容易ではなく、一人で実現できるものでもないですが、品質文化へと大きく踏み出すためにできることを、いくつかご紹介します。


1. 品質について定義する

品質という言葉には、上述のものを含めて数多くの定義があります。一番重要なのは、社内でどのように定義するか、あるいは顧客が品質をどのように定義するかということです。品質の意味について他部門の責任者と意見を交わし、品質を定義してみてください。可能ならば、顧客ニーズや顧客にとっての品質とは何かについて、顧客とのコミュニケーションを図ってみてください。もし無理であれば、顧客情報を見直して顧客の立場に立ってみるとよいでしょう。既に組織における品質が定義されている場合には、従業員への周知を徹底し、職務ごとに品質が持つ意味とは何かを社員と話し合ってみてください。

品質の定義が定まったら、企業全体の目標や価値観が要約されている短文で覚えやすい理念を作成しましょう。頻繁にこの理念を復唱し、これを指針として業務にあたり、従業員にもこのやり方を推奨してください。理念の例をいくつか挙げてみましょう。「我が社における最優先事項は品質です。全社員が責任をもって実行します」や、「品質とは安全で効果的な製品を届けることであり、我々の原動力です。」品質の定義や理念は、単に標語にすればよいというのではなく、説得力があることが大切です。 


2. 従業員の手本となる

従業員や組織に備わってほしいと思う品質を、まずはご自身が実践してください。自らの仕事やチームに誇りを持つことです。他者に一定レベルの品質を求めるのであれば、自身も同様の高い基準を保つ必要があります。周知の事かもしれませんが、従業員の手本となるということは、効果的なリーダーシップ術のひとつであり、驚くほどの変化をもたらします。従業員と同様、管理者も変革(品質への取り組み方の変更)に抵抗を感じることがありますが、それでも品質への取り組みの強化に挑戦してみてください。そしてチームにおける変革を決して軽視しないようご注意ください。もっと正確に言えば、変革に誠実に取り組み、それが個々の職責にどのような意味をもたらすのか、従業員との率直なコミュニケーションが欠かせないのです。

品質を取り締まるのではなく、生活の一部にするのです。各部門の取り組みは会社のために役立つことをなすためであるという確固たる信念を管理者が持つことで、社員は企業の品質の定義や目標を信じ、納得できるようになるのです。単に管理能力だけでなく、管理者の指導力というものが、社員が正しいことを正しく行うことへの後押しとなります。なじみのある古い格言に「有言実行」とありますが、まさにその通りなのです。


3.品質に対する動機づけや「ゲーム感覚」での取り組み

品質改善の取り組みへのアイデアを集めるために、小規模でも切磋琢磨する場を設けてみましょう。評価を行い、実行できる可能性が最も高いアイデアや事業への影響力が高いと思われる内容を提案した従業員あるいは部門を表彰するとよいでしょう。提案されたアイデアや評価結果は社内で発表します。こうすることにより、品質に関する意識を公に称賛できるだけでなく、他の社員のモチベーションを向上させることができるのです。別の言い方をすれば、各々の業務や仕事ぶりの品質が、企業の品質目標にどのように貢献できるかということを全社員に問いかけることになる訳です。こうしたやり方は、品質を維持するために作られた規則を押し付けるよりも社員の心を掴み、品質に対する自覚を持つために、非常に有効な手段となります。

品質に対する「動機づけ」の手段には、品質評価基準に関わる社内表彰や認証制度、優秀な業績を残した社員を社員自身が直接推薦する機会を設けたり、社員個人への報酬、ボーナスの支給や昇格など、他にもいろいろあります。


4. 品質向上を目的とする要員の確保

Quality Managerの数多くの業務の中でも、雇用は重要なものだと考えられます。雇用という非常に大切な場面で、自社で成長を見守りたいような品質への価値観を既に身に着けた人材を選ぶ権限があるわけです。面接の際には、新卒であれば、品質を理解しているか、また経験者の場合には、前職における具体的な例を挙げてもらうなど、品質に関連する質問をいくつか訊ねてみてください。

入社時の会社説明では、品質に関する企業の方向性、価値観や目標を説明してください。企業にとっての品質の重要性や社内での品質の話題を中心に話すとよいでしょう。可能であれば新入社員教育の場に上級管理者も加わると、社内の様々な立場からみた品質の重要性が伝わると思います。


5. 「品質の共有化“Quality Share”」ミーティングの開催

一日、一週間、あるいは月に1度(スケジュール次第)、部門内の人員が集まり、出席者が順番に、品質に関する事象や部門にとって有益な経験談を報告する場を設けるとよいでしょう。例えば、業務関連、あるいは業務とは無関係なことでもかまいません。これは、品質に関連する事象を特定する訓練になり、品質の視点からの発想が身に付きます。業務と関係する品質の事象が共有できることで、費用負担を生むミスの繰り返しを回避することができるのです。部門内の人にとっては事象を聞く良い機会になるだけでなく、互いに学び合い、部門内で共有の土壌が認識できますし、認識の相違が見つかれば足並みをそろえる良い機会となります。時々、数分程度の会議を開催するだけでも、オープンで前向きな話し合いができ、他の重要な議題に発展する可能性もあるのです。


6. Lean Six Sigma認定

品質を考える際には、ビジネス運営を改革するための方法論で広く知られるツールを使うことも良いアイデアだと思います。リーン式哲学では、運営や文化、指導力について、無駄を排除し、顧客にとって価値あるものを強化する必要性を述べています。Six Sigmaでは、経営における管理能力や品質改善への取り組みに注目しています。いずれか一方あるいは両方の認定を受ければ、部門や組織全体に対して効果的な働きかけができるでしょう。

品質管理部門の管理者は、日々、品質(またはその欠如)に取り組んでいらっしゃるわけですから、品質の重要性はすでに気づいているはずです。企業では、品質プロセスへの取り組みや品質関連の規則や基準へ適合させるべく熱心に取り組んでいると思いますが、義務とされることを文化へ変更することで本物の利益が生まれるのです。品質の在り方を組織の一部とするために何ができるのか社内で考えてみてください。方針を僅かに変える、つまり、Quality Managerは品質を監視するものといった考え方から、管理者は積極的に品質を育てるものと考えを変えることで、品質管理の価値観の改変にどう役立つのか、実際に体験してみてください。


本レポートは、ASQ/Forbes Insightで発表された2014年に実施された調査に基づくものです。詳細はhttp://asq.org/culture-of-quality/にアクセスしてください。

[1] ASQ and Forbes Insights. “Culture of Quality: Accelerating Growth and Performance in the Enterprise.” http://asq.org/culture-of-quality/. Accessed December 31, 2015.


【その他の情報元】

CEB. “Building a Culture of Quality.”

HBR. “Creating a Culture of Quality.” https://hbr.org/2014/04/creating-a-culture-of-quality

LNS Research. “The Do’s and Don’ts of Changing a Quality Culture.”

LNS Research. “Quality Management Strategy: Building a Better Culture.”

ご自身の組織には品質重視の文化はありますか?皆様のコメントをお待ちしております。


著者のご紹介
Beth Pedersenは、マスターコントロールのマーケティングコミュニケーションスペシャリストで、Microsoft社やNovell社、NetIQ社、SUSE社、Attachmate社の企業向けソフトウェアに関する経験から、テクニカル分野及びマーケティングに関する執筆活動を行う。University of Wisconsin-Madisonでライフサイエンスコミュニケーション学士号、及びIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を取得。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年6月10日金曜日

医薬品製造業における「Change」とは

計画的/非計画的を問わず、”Change”は医薬品開発に不可欠な要素です
Peter Murray
独立系コンサルタント

1. “Change”の概念

医薬品の製造分野において、バリデーションや変更管理、逸脱、OOSなどは、個々の独立性が比較的高い業務であると考えられています。

また、このような業務は、計画的/非計画的を問わず、何らかの「Change」に関係しています。バリデーションや変更、OOSといった個別の用語を用いることによって、どのような「Change」が発生しているのかを容易に認識することができる一方で、各業務の独立性が強くなりすぎると、業務プロセス間で求められる連動性が失われ混乱や矛盾が生じる危険性があります。

まず、完全に独立した業務としての認識に対して、「変更」及び「逸脱」の言葉としての定義を下記に記載します。

  • 変更:決められた物事などを変えること、変え改めること
  • 逸脱:本筋や決められた範囲からそれること

どちらの定義でも、ある状態から別の状態に変化する動きを示しています。医薬品業界では、バリデーションされた状態から新たな状態へと変わる動きであり、どちらの定義も「Change」を意味します。違いは、医薬品業界で通常「変更」と呼ばれるものは新たにバリデーションされる状態への意図的な動きを意味するのに対し、逸脱はバリデーションされた状態からの意図しない変化を意味する点です。

バリデーションや変更管理、逸脱、OOSの関連性に対する概念モデルを下記の図1に示しています。



図1:変更/逸脱のタイプ


本投稿では、製薬業界で一般的に使用されている用語を用いながら、こうした関係性の詳細について、その一部を説明したいと思います。


2.  検証(バリデーション)された状態とは

この用語は通常、業務プロセス(試験や管理業務も含まれる)に対して使用されるもので、各業務プロセスに対する許容範囲が定義されており、原材料や運用、管理プロセスなどを通じて、安全性や有効性、品質などの要求事項を満たすアウトプット(製品またはデータ)が継続して供給できているかという点を示すものです。主な特色は以下の通りです。

  • 変動が意図的か否かを判断する基準値を定義
  • 通常は市場展開をする上で必須となる規制要件

3. 検証済の状況・状態に対する”Change”

医薬品業界における一般的な”Change”とは、既に試験または検証などが実施された状態が、適切な管理下において計画的に変更され、新規の検証または再検証・追加検証が実施され、検証結果が更新されるパターンであり、この場合の代表的な特長は下記の通りです。

  • 計画的であり、実施される作業は全て事前に計画されている。
  • 正式な変更管理プロセスに基づいて実施される(4項参照)。
  • 新規でも更新でも、必要な検証作業(バリデーション)が実施されている。
  • 当局への報告が必要な場合、製品が市場に展開される前の段階で、試験や検証結果が報告されている。
  • GMP文書の新規作成または改訂の場合、当該文書が適切に配布され、担当者への教育が実施されている。


本記事に関連するホワイトペーパー


4. 変更管理

変更管理とは、安全性や有効性、品質、または規制要件の観点から、実施する変更から否定的な影響が発生しないように、適切な管理下において発生する一連の業務のことを意味しています。ここでいう「管理」とは、第3項で触れたような計画的な”Change”に対する管理以外にも、第5項で説明する「逸脱」のように、発生後に問題を軽減または除外することが必要となる想定外の”Change”に対する管理業務があり、その特徴は下記の通りです。

  • 実施予定の変更や必要業務、想定される変更後の状態などが、計画として正式な文書に定義されている。
  • 実施前に定義した計画した業務が全て完了しており、また結果に対するレビュー結果も含めて文書化されている。
  • 市場に展開される前に、変更後の結果に対して必要な認可・認証が全て取得されている。
  • GMP文書の新規作成または改訂の場合、当該文書が適切に配布され、担当者への教育が実施されている。


5. 逸脱管理

一般的に逸脱とは、検証された結果に対して計画的ではない変更が発生することです。一方で、規格外(OOS)とは、逸脱の一種(6項参照)ですが、こちらは試験結果やデータが、事前に検証された数値から外れていることを意味しています。

一般的な定義では、逸脱が原因で発生する変更は非計画的なもので、発見にある程度の時間を要します。また、逸脱が確認された製品の他のバッチにも影響が出ている可能性があります。その為、逸脱の管理(検証済の状態に対する非意図的な変更)は、意図的に実施する変更に比べて、複雑性が高いことが多いです。このような変更で鍵となるステータスは下記の通りです。

  • 逸脱が確認された製品及び影響が生じている可能性の高い他のバッチに対する影響度調査
  • 問題に対する迅速な軽減措置や管理、必要に応じて、正式な変更管理プロセス
    (CAPAのCAとして)の適用
  • 根本原因の解明:追加の是正措置や予防措置に繋がる情報が発見できる場合もある



図2-逸脱管理プロセス


6. OOS

OOSとは、大項目としては逸脱に属する事象の一つであり、検証または試験された限界値から外れた場合の管理手法または試験結果を示しており、この特徴は下記の通りです。

  • OOSの管理プロセスの論理は、基本的には他の逸脱に関連するものと同じです。
  • OOSの処理において、製品の安全性や有効性、品質、規制に関連する判断は、潜在的に重要な影響を与える可能性がある為、ガイダンスなどの規制・規格要件では、OOSにおける調査業務の解釈及びそのプロセスの具体的な定義が定められています。

7. 根本原因分析

逸脱の原因を特定する上で、効果的な根本原因解析の実施は、問題の解決プロセスにおいて重大な要素です。根本原因が特定できないケースもありますが、潜在的により大きな問題となるのは、発生した逸脱には関連しているが異なるポイントに焦点が当てられ、結果、誤った関連性が真の根本原因であると限定してしまうことです。以下に例を示します。

  • バッチ計算の誤りに伴う逸脱が発生しました。
  • 誤ったバッチ計算を行ったオペレーターが特定されました。
  • そのオペレーターと発生した逸脱の内容から、根本原因は、オペレーターの能力不足となりました。
  • これが根本原因である可能性もありますが、バッチ処理の指示書内にある計算に関する説明が不十分で分かりにくい点や、オペレーターに対して実施された教育が非効果的であったことが根本原因である可能性もあります。
  • このような状態では、真の根本原因が特定できていない為、その後のCAPAの効果も損なわれてしまいます。

8. 是正措置及び予防措置(CAPA)

CAPAは、図2に示す通り、逸脱管理に関するGMPに要件において、重要な役割を担っています。

CA(つまりCAPAにおける是正措置)は、検出された逸脱の即時的な影響を管理する目的で講じられる措置(及びその記録)を示しており、以下の内容が含まれます。

  • プロセスを管理状態に戻すために必要な措置の実施及び評価、また、予防措置が完了するまでのトラッキング
  • 逸脱が認められたバッチよりも前のバッチで逸脱が未検出である可能性の評価、また、逸脱が確認されたバッチの中で、販売されている製品の安全性や有効性、品質に悪影響を及ぼす可能性が高い場合、関連する薬事当局への通知やリコールの処理
  • 関連する製品や業務プロセスの逸脱に対する評価、また、必要に応じて措置を実施※参照:8項「複数の業務プロセス、または複数の拠点に対するCAPA」

根本原因の調査に関する記録は、適切な予防措置(CAPAにおけるPA)の前提条件です。根本原因の特定は、将来的な逸脱を予防するために必要なプロセスや管理に対する変更を定義する為の論理的な根拠になります。根本原因について確実な根拠を限定することができない場合、逸脱を迅速に検出する管理を行う必要があります。

予防措置とは、根本原因解析によって特定された変更のタイムリーな実施及びその記録なのです。


9. 複数の業務プロセス、または複数の拠点に対するCAPA

逸脱が認められたバッチに対して措置を講じるというのが一般的であり、次のようなケースに対する配慮に欠けていたという点が逸脱の取り扱いにおいて過去にみられた一般的なエラーとしてあげられています。

  • 問題の発生した拠点において実施されている他の製造や試験の中で、同じ業務プロセスが適用されている他の製品や管理でも似たような問題が発生していると考えるべきです(複数の業務に対するCAPA)。
  • 企業に複数の拠点がある場合も同様で、同じ業務プロセスが適用されている他の製品や管理でも似たような問題が発生している可能性があります(複数の拠点に対するCAPA)。

GMPの論理では、複数の業務プロセス及び拠点に対しても、潜在的に問題が発生する可能性がある場合、その管理が要求されています。規制当局もこの考え方を支持する傾向にあり、以下のような告知及び指摘がされています。

  • GMP要件の解釈として、複数の業務プロセスまたは拠点にて問題が発生する可能性に対する調査も含めるべきと明示的に考えています。
  • ある企業において最初に逸脱が確認され、それ以降に同一企業の他の施設でも同様の逸脱が確認された場合、より深刻な指摘として扱われ、その内容は、確認された逸脱だけでなく、問題解決の為に必要となる合理的でタイムリーな措置を実施しなかった管理責任の欠如も問われる可能性があります。

【参照】
(1)大辞林 第三版の解説


著者のご紹介
Peter Murray(peter.x.murray@btinternet.com)は、現在、GSKのコンサルタントを担当しており、それ以前はQuality Directorとして医薬品製造管理に従事していました。その経験は45年に及び、主に品質保証とGMPコンプライアンスマネジメントに関する有効な戦略策定及び導入を中心とした経験を有しています。1990年以降は、GSKのCorporate Quality Oversight Groupの一員としてSpecialist External Supply Procurement Teamに所属し、そのQuality Directorとして特に委託製造業者管理の強化に注力していました。また、Qualified Personとして登録され、MC2 British Pharmacopoeiaの専門諮問委員会のメンバーでもあります。

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2016年5月18日水曜日

東京オフィス移転のお知らせ

マスターコントロール株式会社は、日本及びアジア地区における業務拡大及び業務効率の向上をはかることを目的に、東京オフィスを東京都港区赤坂に移転することを決定いたしましたので、お知らせいたします。

<アーク森ビル>

所在地:〒107-6022 東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル22階
最寄駅:東京メトロ南北線:六本木一丁目駅(徒歩2分)
電話:050-3823-0455
FAX:050-3730-2470



業務開始日 平成28年5月30日(月)




今後とも、変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
まずは書中をもってお知らせかたがたご挨拶申し上げます。

以上

2016年4月12日火曜日

HOYAサービス株式会社、MEDTEC JAPAN 2016に出展

4月20日(水)-22日(金)に東京ビッグサイトにて開催されます医療機器製造・設計に関するアジア最大の展示会「MEDTEC JAPAN 2016」にマスターコントロール株式会社と共同出展いたします。

医薬品・医療機器メーカー向け品質管理システム「MasterControl」を始め、ERPシステム「Microsoft Dynamics AX」の医療機器向けテンプレートやCRMシステム等、医療機器を扱うHOYAグループのシステム開発・運用を担い培ってきた独自のサービス・ソリューションをご紹介致します。この機会に是非、ご来場賜りますようお願い申し上げます。


名称   MEDTEC JAPAN 2016

日時   2016/4/20(水)-22(金)10:00~18:00(最終日22日は17:00まで)

会場   東京国際展示場「東京ビッグサイト」

ブースNo   4910 (メディカル RP・CAD/CAM エリア Medical RP・CAD/CAM Area)

入場料   無料(事前登録制)

公式サイト   http://www.medtecjapan.com/

2016年3月22日火曜日

品質監査:継続的改善への近道として


公衆安全衛生における唯一の方法、それは品質の確保です。
Beth Pedersen Marketing Communications Specialist, MasterControl Inc.


GxP規制対象の企業、またはISO認証を取得した企業であれば、監査の重要性は理解されていると思います。事業に関わる規制や基準は頻繁に変更される一方で、その変更点を常に理解し、順守する体制を整え、その状況を常に明示できるようにしておかなければなりません。

規制要件への対応や間近に迫った監査への準備に追われていると、監査組織が企業にもたらす価値を見失ってしまう可能性があります。そして、単純ですが、確認や評価を行わずにどうやって改善を実行することができるのかという、非常に重要な疑問にたどり着きます。

監査という言葉の響きは強力で、ポジティブなイメージが浮かびにくいものです。 監査とは、その性質上、問題点を洗い出す業務であり、問題点にはペナルティが課せられ、時には厳しい処分や費用を伴う場合もあります。監査の準備をする上で頭を悩ますのは、膨大な文書管理や証拠収集、署名や承認の入手、担当者の教育記録、関係部門の調整など、他にもまだまだあります。

監査がうまくいかなかった場合の影響などを考えると、監査のことを考えるだけでも恐ろしくなるのも当然です。Walt Murray氏は、マスターコントロールのQuality and Compliance Consulting (QCC) Services(業務コンサルティングの提供部門)のディレクターとして在籍し、25年以上にわたり442件の監査を実施し、監査における様々な状況を数多く経験してきました。


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その内のひとつの例を挙げましょう。監査対象のある企業は、既存の工場が新規OTC医薬品を製造する契約を締結済であり、製造開始前には、21 CFR Part 211に遵守した体制の確立が必要でした。監査の目的は、技術、製造、洗浄業務を評価すること(=新製品の生産)と関連していました。被監査企業がこうした業務活動の証拠や記録文書を提示できない時点で、Murrayはこの企業が監査基準をクリアすることができないことを悟っていました。

さらに事態を悪化させたのは、作業場が製造業務に適していないことでした。さらに、状況改善に向けた企業の対策を示す計画書が一切提示されなかったことも加わった為、Murrayは監査開始前に強制的に監査を中止しました。その結果、被監査企業と新規医薬品の製造委託契約を締結していた企業は契約解除を決め、数名の従業員が職を失いました。

ただ、信じられないかもしれませんが、Murray氏が関わった監査では、監査の始まりこそ前向きな状況ではなかった場合でも、最終的には圧倒的多数の企業で前向きな結果に繋がったとのことです。監査で指摘が見つかるということは、変更や改良、改善が義務付けられます。その為、監査に対する不安は、「監査」の特長の一つ程度に考えるべきです。

「大抵の人が監査を恐れる理由は、監査担当者が求めているポイントを理解していないことにあります」とMurray氏は述べています。「監査担当者は、常に、企業による規制の遵守及び適合能力のどこに不備があるかに意識を向けているのです。」


品質管理への道

1987年以降、国際標準化機構(ISO)がISO 9000基準を発令し、製造業者や他業種にとっても品質監査が最重要課題として位置付けられ、ISO、アメリカ食品医薬品局(FDA)、その他の規制当局において監査の重要性は高まり続けています。現在、ISO 9001、ISO 14001、ISO 13485、21 CFR Part 820、21 CFR Parts 210-211、21 CFR Part 606、OECD Principles of Good Laboratory Practice、ICH Q7 Good Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredientsなど(これらはごく一部ですが)、数多くの基準や規制が存在し、監査はその規制の下で品質評価や改善を実現するメカニズムとして機能しています。

確認や評価を実施し、最終的に判定を下すといった体系的取り組みの中隔が監査です。監査では、製品、サービス、試験、プロセスやシステムに主眼がおかれます。GxP規制対象企業やISO認証取得企業に特に関係する監査としては、特定の規制・規格などに対する適合性の監査と業務に対する監査の2種類が存在します。特定の規制・規格などに対する適合性の監査では、活動やプロセス、システムが特定の要求事項を満たしているかどうかを評価し、その結果はコンプライアンスや認証取得に直結します。 業務監査の着眼点は、組織が一連の規則を遵守しているかであり、規則の有効性、及び組織の目標達成における規則の適合性に注目しています。

監査の最終的な結果は、監査対象製品やサービス、アクティビティやプロセスに関連するシステムに関する所見、指摘事項、及び結論を含む報告書です。この報告書は、規制対応が確立されているか、あるいは改善を行うべきかが示されています。つまり、問題点を克服するチャンスとなるのが監査なのです。

後手の対応と分類される不適合報告や品質管理試験、顧客苦情処理、逸脱処理のような他の品質管理手法と比べ、監査は問題発生前に処理することができますし、さらに詳細な情報に基づいた判断をすることも可能です。監査にはこのような性質がありますので、恐怖の種以外のなにものでもないと捉えず、むしろ監査こそが継続的改善のチャンスであると認識すべきでしょう。

監査を通じて評価を行い、要件でなくても企業にとって有益なプロセスを理解することにより、現行プロセスの改善が可能となり、より適切なマネジメントや規制遵守にも繋がるので、監査は重要な管理ツールとなるのです。GxP規制対象企業やISO認証取得企業として、特定の規制・規格などに対する適合性の監査や業務に対する監査の結果が「適正」と判断されることが最重要であることは確かですが、「品質監査」を単に行政処分やFDAの監視リスト掲載を回避する方法と捉えるのではなく、企業が業務改善を行う上で、効果的な手段は監査の他にないと認識していただきたいです。


著者のご紹介
Beth Pedersenは、マスターコントロール米国本社のマーケティングコミュニケーション部門のスペシャリストです。マイクロソフトやノベル、NetIQ、SUSE、Attachmateといった企業のWebサイトで、技術やマーケティングに関する執筆活動を行っています。University of Wisconsin, Madisonでライフサイエンスコミュニケーションの学士号を取得し、IIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を修得しています。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年3月9日水曜日

ISO 9001:2015:経営手法に対する特効薬として

管理業務の悩みで寝不足になってませんか?
ISO 9001:2015が助けになるかもしれません!?
Matt Leiphart
Cavendish Scott, Inc.


ISO 9001:2015は、管理職の方々の日々の悩みへの解決策になるかもしれません。新しいISO 9001の最大の変更点は、経営陣に対して、問題を未然に防ぐための取り組みを求めています。問題を回避するシステムが備わっていれば、経営者には安心感が生まれ、細かな配慮を行き届かせてシステムを育成することができますので、安心して眠ることもできるのです。

私も長年、管理職を務めた経験があり、組織の責任者というのは、常に次に挙げるような内容を考えているかと思います。

  • 目標達成
  • 大切なお客様の満足度の維持
  • 進捗状況の監視
  • 効果的な業務管理

目標を達成するということは、想定される結果を考慮しながら組織全体の方向性を定め、障害となりうる課題への対応を行うことです。ISO 9001:2015の第4.1項では、組織の目標、戦略的方向性や意図する結果を考慮し、目標達成に関連する組織内外の問題を特定することが述べられており、これを「組織目標(Organizational Context)」と呼んでいます。この分野において、不明な点が多かったり、発生している問題が不明確または対応中である場合は、経営者に不安を与える要因ともなります。

また、製品やサービスに影響を及ぼす顧客以外の利害関係者を特定し、彼らの要求事項を把握する必要もあります。経営面から考慮すると、こうした利害関係者は成功に欠かせない存在と認識されており、ISO 9001:2015第4.2項では、利害関係者の要求について記載されています。ISO 9001:2015は、経営者に対し、こうした利害関係者のニーズを満たす取り組みを支援する内容となっているため、経営者も安心して取り組むことができるでしょう。



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成功の鍵は、リスクベースの考え方にあります。組織目標や利害関係者の要求事項を理解するということは重要ですが、新しい規格の内容はそれだけに留まりません。組織固有の問題や要求事項、リスクやチャンスに対し、マネジメントシステムを整備していくことにあるのです。重要度に基づき取るべき行動を決定し、頑強な評価プロセスによって定期的なモニタリングを実施します。別のアプローチが必要となれば、そこで修正をします。第4項の評価については、第6.1項及び6.2項にも述べられていて、リスクとチャンスを明確にして目標を設定するとしています。現行のISO 9001が航海に必要な船舵のように方針が規定されているとするならば、ISO 9001:2015には、風向計やコンパス、地図、スピーカーが加えられ、より具体化された方法が規定されているということです。

次に、モニタリングの変更点についてお話しします。ISO 9001では常に、測定及びデータ分析に関する内容が用いられていましたが、新規格では全く新しい基準の概念が取り入れられています。モニタリングや測定、分析、評価における要求事項は、規格全体にわたって記載されています。2008年版と同様、要求事項が直接的に記載されている項目は第9.1項の1つのみです。2008年版とは異なるのは、2015年度版ではモニタリングや測定、分析、評価を行わなければならない対象について、別の項目でも規定している点です。第9.1項以外の要求事項は、25箇所以上ありました。以前は、「重要と判断する箇所をモニタリングし、測定を行う」としていた記載が、現行の要求事項ではより規範的であり、包括的かつ全般的な内容となっています。

運用管理に関しては、新ISO 9001で大幅に変更された点はなく、運用管理に関する細かな表現などが変わり、経営者をより支援する内容となっています。計画的、非計画的、いずれの変更もその管理に関する新しい要求事項があります。ISO9001:2015では、「知識(Knowledge)」を特定し、利用できるようにしておかなければならないこととしています。

「力量(Competence)」とは、今までトレーニングの考慮の際に注目されていたテーマです。コミュニケーションプロセスについては、より明確に要求事項が定義されています。アウトソーシングやコンサルティング、委託などの外部ソースからのサービス提供に対する管理についても、今回詳細に規定されています。不適合の管理については、不適合製品だけにとどまらず、「不適合の過程出力(nonconforming process outputs)」が含まれています。こうして強化された内容は、いずれも経営者にとって根本的な変更を求めるものでなく、2008版の盲点に着目した結果、現行の改定に至ったものとなります。それではここで、経営者の皆様の為のまとめ項目です。

  • 一歩引いて、全体像を眺めてみてください。そして、組織内外の課題のうち、意図した結果や目標、戦略的意図を実現する上で組織にとって役立つ、あるいは妨げるとなる可能性のある課題を特定します・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • 組織が影響を及ぼす(または影響を及ぼす可能性のある)関係者を特定してください。このような利害関係者の要求事項を定義し、その利害関係者や要求事項がマネジメントシステムに関係するのか、意識的に判断して行く必要があります・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • リスクやチャンスのうち、全体的な状況に影響を及ぼすものや、組織内外の問題、利害関係者の要求事項に関係するものを特定してください。 計画的にリスクに対し安全対策を講じ、チャンスを最適化した後に、リスクとチャンスに関するモニタリングの方法を決定します・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • 作業方法は指定された手順に準拠し、関係周辺の管理を行ってください。やらなければいけないことを1つずつ着実になしていくだけです。予測できる変更と予測できないない変更をプロセスに組み入れておけば、逸脱があった場合も、要求事項で求められる水準を維持しつつ結果を得ることが可能です。・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

結果に焦点を当てたマネジメントシステムでは、組織の重要度の高い利害関係者に着目し、運用管理やモニタリング方法も組み入れて追跡可能な状態となる(必要に応じて迅速に追跡を実施する)ことができるのです。あなたの最高責任者に是非お伝えください。快眠のために枕をオーダーする代わりに、ISO 9001:2015を是非お読みくださいと。


著者のご紹介
Matt Leiphartは、1992年以降、ISO 9001等、マネジメントシステム規格にかかわる業務に従事。 13年間、コンサルティング会社の代表を務め、マネジメントシステムの評価ではスコアリング方式を採用。第三者組織の監査役であり、審査機関のリーダーとしての管理理システムの監査技術のトレーニングプログラムをこれまでに数多くの人々に提供した実績を誇る。様々な経験を踏まえ、継続的な改善やビジネス目標達成のためのツールとして、マネジメントシステム規格を最大限に活用するといったユニークな視点に基づいたアイデアを提供。現在は、Cavendish Scott, Inc.で、附属書SL及びISO 9001:2015への対応に向けた新たなトレーニングプログラムを開発し、コンサルティングを行っている。

Cavendish Scott, Inc.は、30年以上にわたり、ISO 9001に関する規格のコンサルティング、トレーニングプログラム、監査に取り組んでまいりました。長期にわたり、規格が進化していくのを見ていると、検討中の規格がどのような方針で最終化されるのか、非常に楽しみです。弊社では、トレーニングプログラムやコンサルティングソリューション、監査、ギャップ分析、プロジェクトプランニングパッケージなど、クライアントの皆様をサポートするサービスを提供いたしております。経営者に向けたリスクベースの思考のメリットについての講習会も開催しております。
Cavendish Scott, Inc.は常に、正確で専門性の高い、効果的なマネジメントシステムソリューションの創造に励んでおります。杓子定規に処理するのではなく、皆様の企業が付加価値のある認証を獲得できることを弊社が保証します。詳しい情報はこちらから。

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2016年2月23日火曜日

プロジェクト完了後のシステム運用における4つの秘訣

ユーザーがソフトウェアを使い始めると様々な疑問が湧いてきます。
こうした疑問をすべて解決できますか?
Stephanie Jones
Senior Professional Services Consultant, MasterControl Inc.

2015年4月9日の記事では、スムーズなシステム導入を実現する上での8つのポイントについて、ご紹介させていただきました。今回は、導入を行った企業の担当者が去った後、システムを運用していく上でのポイントをご紹介したいと思います。

ユーザー、また導入サービスを提供する企業側の担当者として、何百件ものソフトウェア導入に携わってきた経験上、問題になりがちな課題が一つあります。それは、効果的なシステムとして作り上げるには、システムの導入だけでなく、システム運用にも注力し続けなければいけないという点です。


例えば、エンドユーザーが新しいシステムの利用を開始すると、システム管理者に対して質問が殺到することになります。システム管理者とはいえ、システム管理者向け教育は数か月前であり、またそのトレーニングでは想像を超える情報量を習得しなくてはならず、一生懸命理解しようとしてもほんの一部しか理解できず圧倒された経験がある方も少なくないと思います。ここでは、導入後最初の問題を冷静に対処できるよう、いくつかの提案をしたいと思います。

解決策①:問題を記録しカテゴリー別に分類
トリアージプロセス(緊急時に最善の作業をするため、緊急度に応じて優先順位を決める過程)を通じて、報告された全ての要求や問題を記録・分類します。分類はカテゴリー別に行いますが、関心の高いもの「HOT」か、そうではない「NOT」といった具合にシンプルにすべきです。「HOT」とは、事業を停止させるような内容であり、これ以外の場合は「NOT」に分類します。また、以下のようなサブカテゴリーを追加することで、より具体的に分類することも可能です。

1. 既知の問題(=解決策を既に知っている)
2. ユーザートレーニング関連
3. SOP関連
4. 未知の問題(=解決策を知らない)

 最初の3つのサブカテゴリについては何をするべきかご存知だと思いますので、関心の高いもの「HOT」のカテゴリーから対応を行い、時間があれば「NOT」の問題を対応していきましょう。



本記事に関連するホワイトペーパー


解決策②:電話会議を活用
導入終了後の最初の2週間は、導入を行った企業の担当者やテクニカルサポートと、前述の「未知の問題」への対処方法について、電話会議をリクエストすることをお勧めします。このようなサポートを契約時の要件として含めることで、障害修正のスピードまで確約は取れないにしても、より密接なサポート体制を構築することが可能となります。また、時間の節約にも繋がりますので、フラストレーションが軽減できるかもしれません。

解決策③:導入担当者の出張サービスまたはリモートでのフォローアップ
落ち着きを取り戻し、ユーザーが新しいシステムに慣れてきたあたりで、導入担当者とのフォローアップを予定することをお勧めします。このフォローアップは、ユーザートレーニングであがった質問への回答、導入目的の再確認、未解決の「NOT」に該当する課題などへのサポートが目的です。この打ち合わせは、内容次第ではリモートまたは出張してもらう形が選択できると思いますが、少なくとも一日は必要です。

解決策④:自分自身で解決
マスターコントロールでは、お客様Webサイトなどを通して、ツールや教育資料、FAQ、お客様同士での意見交換フォーラムなどを提供しています。このようなサービスは他のベンダーでも用意されていると思いますので、導入プロジェクトの期間に限らず、活用をお勧めします。

今回、ご紹介したポイントは、ユーザーからの質問やリクエストの管理といった日々の業務に活用していただけたら幸いです。また、システム導入・運用に関連する進捗を経営陣にタイムリーに報告する上でも助けになると思いますので、全体として業務をスムーズにまわすことに繋がればと考えています。


著者のご紹介
Stephanie Jonesは、2011年にマスターコントロールに入社以来、導入コンサルタントとして業務に従事しています。企業システムに関する経験は30年以上にも及び、プロジェクト管理や業務プロセス分析、ソフトウェア導入、データ変換、コンピュータシステム・バリデーション、規制・規格対応など、多彩なスキルを有しています。実体験から得た彼女の専門知識は、特に製薬及び食品製造業で秀でており、非常に優れた問題解決力及び対人スキルは彼女の強みであり、企業規模の大小を問わず何百もの導入成功を実現しました。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年2月9日火曜日

FDA査察における3つのポイント『準備、管理、フォローアップ』

適切な準備を査察に対して行うことで、実際の査察も
スムーズに受けることができます。
模擬査察を活用して適切な準備を行いましょう。
Kelly Thomas
Atlantic Validation

FDAの査察を無事に終えることは、cGMPへの順守及び事業の成功において極めて重大です。堅牢な品質システムを運用・維持することは、FDA査察を突破する上で欠かせないポイントの1つですが、それが全てではありません。査察に対する準備及びマネジメントも同様に重要です。適切なマネジネント戦略があれば、コンプライアンス違反に対する指摘を受けるリスクを軽減することもできます。ここでは、査察官に対する知識、実際の査察準備及び管理方法、査察の終了時に必要なフォローアップ、ならびに、実際の現場から得た教訓についてお話したいと思います。



査察官に対する知識
査察官の一番の懸念は患者の安全性であるため、その点に関しては十分な根拠とデータをもって説明する必要があります。労力のかかる作業ですが、決定意思を得るためには多くのデータを用意しておくことが重要となります。2011年のプロセスバリデーションガイダンス(Process Validation Guidance)及びICH Q9に従って、より科学的な裏付けが重要視され、査察官は科学的意義の追及によりオープンな姿勢を示すようになりました。ただし、査察官は決して悪意があるわけではなく、彼らはプロの懐疑論者であり、事業場においてあらゆる危険性や有害性の特定を含む全てのチェック項目が、データに基づいた強い根拠によって裏付けされ、それが支持されることを期待しています。

正しい決定が下されているとの結論に査察官が至るよう説得力のある方法でデータを提示することが、品質保証管理者及び内容領域専門家(SME, subject matter expert)の責務となります。査察官に対し反対の意見を述べることが可能である点にも注意することが重要です。もちろん、常に礼儀正しく接し、好戦的な態度は回避すべきです。基本的には、製造プロセスが十分に理解されていること、また品質管理システムがどうのように設計されているか、そしてこの2つがどのように連携してコンプライアントシステムを構築しているかについての説得が必要となります。



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信頼を査察官に植え付けることが、良好な関係や流れを築くうえでの第一段階となります。そして信頼を植え付けるには、文書管理(GDP, good documentation practices )を一貫して遵守するドキュメント(データファイル)とともに情報パケットを事前に整えておくことしかないのです。GDPは、強力な品質システムの基礎となるものです。GDPを遵守することで、監査担当者はパケットに含まれるデータに信頼感を抱くものです。さらに、データパケットに明確なラベルをつけておくこと(バリデーション、サマリーレポート、変更管理、逸脱など)で、正確な情報が提供されているという好印象を与えます。それだけ、きれいに整理されたデータには価値があるというものです。

さらに、進行中の品質システムの改善策を示すことも、cGMPコンプライアンスの維持に取り組んでいることを印象付けることができるでしょう。品質システムの改善の例としては、定期的な品質マネジメントレビュー(QMR)、CAPAの記録や継続的改善プロジェクトを通じて示すことができるのではないでしょうか。
査察官は、限られた時間の中で査察を完了しなければなりません。査察官が無駄な時間を費やすことはかえって悪印象です。
最低限の時間で限りなく査察を進めやすいよう努めましょう。

査察準備
査察準備は、企業の財源に匹敵する価値があります。査察を受ける際の準備を事前に行っておくことで、安心して査察当日を迎えられることができるでしょう。最初に行うべきことは、「査察の管理」SOPの作成です。SOPには、FDAの施設訪問時の対応担当者を明記します。まず、施設の品質部門長、業務責任者及びその代理に通知します。ここで、査察官が施設を訪問する旨を、関係従業員全体に知らせる方法についても説明します。SOPに対するトレーニングは全従業員を対象に行い、トレーニング実施に関する記録を文書で残します。尚、受付係や警備員なども、査察官と最初に接することからトレーニングの対象と考えられます。SOPでは、以下のトピックを取り上げてください。
  • 情報に対するFDAのリクエストした記録方法についての説明
  • 査察官から写真やビデオの提示がリクエストされた場合の対処方法
    • SOPで写真やビデオ撮影の禁止が規定されている場合でも、FDAの査察官には撮影の権利があります。
    • Operations2014年のInvestigations Operations Manual(IOM;査察実施マニュアル)のセクション5.3参照
  • 企業の品質管理手順に反するFDAリクエストへの対応方法についての説明
  • 作業中のクリーンルームへの入場が制限されている場合などでも、査察官を案内する必要があること
  • 就業時間に関する記載。
査察準備チーム(IRT)発足の目的は、すべての準備活動を洗い出し、完了することです。査察時に査察のサポートをすることが、IRTの責務となります。品質関連組織以外のグループからもメンバーを集めたチーム(クロスファンクショナルチーム)を構成するとさらに良いでしょう。

十分な計画を立てることが重要であり、これにより査察の管理における労力が軽減します。
そのためには、どの会議室を査察官に割り当て、どの会議室を監査のサポートルーム(別名「War room(戦略的な決定をする部屋)」)として使用するかを事前に決定しておくことも重要です。これらの2つの部屋は近すぎてもいけません。War roomは使用中、特にSMEが査察官のリクエストに対する戦略を練っている場合には、雑踏と喧騒の渦中に置かれます。従って、査察官の控室として使用する会議室は、人の行き来の多いエリアから離れた場所が適しています。また、できれば製造現場やQC臨床検査にも近すぎない場所が望ましいです。            

計画過程の一部として、誰がSMEを務めるのか、また治験実験計画書や逸脱の提示に関する担当者は誰なのかをあらかじめ決定しておきます。SOP(標準作業手続き)、逸脱、トレンド報告やバリデーション(検証)の正当性を主張する練習の機会を設けることで、誰が査察官訪問時の対応に適しているかを判断する良い機会となります。さらに重要なこととして、模擬査察を実施することで、品質管理責任者が査察時対応すべきではない人物を認識できる機会でもあります。規制当局からの査察官への資料の提示には、ある意味スキルを要します。誰でも、このスキルがあるというわけではありません。人によっては神経質になり過ぎたり、問題について語り過ぎる場合があります。そのためSMEとのテストを実施することは、査察を無事完了する目的において重要な要素となるのです。

資料を提示する者が、資料の内容について知識と自信を持っていることだけでなく、建物の内部も外部も査察の準備が整っていることが大切です。
不動産用語の「curb appeal(外見上の魅力)」という言葉を思い浮かべてください。施設の屋外にメンテナンスが行き届いている様子が窺える場合、その中で行われている作業も同様に良好な状態であるということを裏付けてくれるものです。

施設の外見上の魅力と共通のコンセプトに、文書の系統化や視覚的表現があります。これは、cGMPの文書管理が実施され、遵守されているという良いイメージを査察官に植え付けるうえでとても重要です。プロトコール(治験実施計画書)及びレポートの系統化に、目次やビジネスプランの要点をまとめた事業計画書(エクゼクティブサマリ)を用いるのも良好な方法です。これらの文書は非常に厚い場合がありますが、査察官は限られた時間で多くの資料をチェックしなければならないため、サマリがよく検討され、まとまっている場合にはそれだけがレビューの対象となる場合があります。裏付け文書をすべて揃えたパッケージを準備しておくと、フォローアップの際に裏付け文書の提示を求められることを避けることができます。レポートで逸脱やCAPAといった文書が参照される場合、そのような記録のレビューも可能なように準備しておきます。査察における精密な調査に耐え得る補足文書パッケージの例を下記に示します。
  • サマリーレポート
  • 署名済みのプロトコール
  • 逸脱及び不一致に関する記録
  • 裏付け付属書類
品質マネージャは、「注目すべきトピック」のリストを作成します。こうしたトピックとは、正当性を示すのがより困難なデータパッケージとなります。妥当性が確固たるものではなくなってしまった逸脱や、バリデーションプロトコール(科学的根拠のある治験実施計画書)/レポートにさまざまな逸脱があるといった状況は、どんなcGMP組織においてもある、といっても過言ではありません。査察時のリスク低減の鍵となるのは、より難しい会話を想定し、決定意思を示しその正当性を示す戦略を練っておくことです。模擬査察の際にこの演習を行って、データと結論について明確な話ができるよう経験しておくのが良いでしょう。

これを瞬時にこなすことは非常に難しいことですが、演習により、よりスムーズにこなせるようになります。

実際の査察の管理
まず、査察官に証明書の提示を要求し、実施される査察内容を確認します。施設の品質部門長、業務責任者及びその代役に、査察官の訪問を直ちに通知します。

監査開始会議(オープニングミーティング)では、実施される査察の種類に関する情報を得ることが重要です。原因を追求するための追加査察(for-cause inspection)ではルーティンに実施されるサーベイランス査察とはアプローチが異なるため、どのタイプの査察が実施されるのかを把握することが重要となります。証明書が提示されたら、所定の会議室に査察官を案内します。査察が進行中である旨を施設全体に通知します。査察準備チームは、所定の待機室準備計画を自動的に実行します。プリンタ、コンピュータ、電話、査察リクエストログ、幹事役及び書記が、査察のサポートには必要となります。

最初のプレゼンテーションを行うことも可能ですが、簡単に済ませます。組織図、人数、就業時間と施設のレイアウト図を見せ、施設見学にも案内します。通常1日目までにここまでを行います。清掃が見学に先立ってきちんと実施されていることを確認してください。開いているダンボール箱や通常のゴミやほこりを取り除いておくことで、清掃手順についての質問は回避できるでしょう。見学の前に、査察官に施設案内図のコピーを渡しておきます。人と設備の流れについて明確に示しておきます。
見学の際に、査察官は設備の番号と人員の名前に注目します。見学が完了すると、この情報をもとにメンテナンス、較正及びトレーニングの記録がリクエストされます。資料提示に関するリクエストはすべて記録し、監査サポートルームに伝えます。査察官にはリクエストされた資料の送付に関し現実的なタイムフレーム(物事を行うための必要な時間)を伝えてください。

監査フォローアップ
資料の提示を繰り返し求めなくてはならないような場合には、査察官も気分の良いものではありません。非常に合理的な所要時間の提示が想定される為、各リクエストの内容をきちんと理解していることを確認してください。質問または資料提示に関するリクエストの内容についての不明点は、査察官に遠慮なく質問してみてください。査察テクニックの1つとして、どんな情報が提供されるかを確認するために、故意に漠然とさせることがあります。質問には常に誠実に回答してください。誤った説示または不正行為は、意図的かにかかわらず、確実に悪影響を及ぼすものです。明るみになった場合の査察官の反応を考慮してみてください。

一日一日終了時に、その日のオブザベーション(指摘)についての簡単な報告を査察官に求めてみてください。また、この時間から翌日の査察の方向性を知ることができます。それによってスタッフは就業時間後に翌日必要となる資料を準備することができます。文書が準備され、いつでも提示できる状態にあることで、査察はよりスムーズになります。

査察官の技術
査察中、追加情報を得るため査察官が用いるテクニックがいくつかにあります。1つには先に述べた、意図的な曖昧さを用いるテクニックがあります。この場合、リクエストの内容を明確化するための質問をし、正確に理解できているか確認します。
もう一つの査察テクニックは、長時間にわたる沈黙です。人は、沈黙を埋めるために発言が増える傾向があります。質問への回答が終了したら、次の質問が尋ねられるまで、安心して静かに座っていて大丈夫です。査察官が妥当性を審理するためにデータまたは結論についての質問が尋ねられる可能性がある点に注意することが重要です。この一連の質問は、そのままアプローチに対する異論を意味するものでも、裏付けデータに基づいてなされた決定事項を擁護するものでもありません。
短時間にかなりの情報量がリクエストされるという事態も起こりうるのです。このテクニックの目的は、資料がどれくらい簡単に検索可能かについて確認することであり、実際にすべての文書業務をチェックすることではありません。合理的な所用時間も提示します。

監査のフォローアップ
品質管理責任者の目的は、査察からのオブザベーション(指摘)をゼロにすることです。そして、もしオブザベーションが発見された場合には、指摘事項(finding)すべてに回答することです。コミットメントはすべて徹底的に検討し、タイムリーに実施可能かを確認します。規制当局に提出されたコミットメントに対する逸脱は、タイムリーにその正当性を示し、伝達する必要があります。計画に変更がつきものであることは規制当局側も理解していますので、必ず計画を伝達するようにしましょう。

最後に
有効な査察の準備計画を策定し、実行することは、より良好な結果を導くとともに、査察における労力も軽減します。事前に計画することによって、文書の提出期間を短縮することができ、SMEのプレゼンテーションスキルも向上し、査察官が抱く品質システムに対する信頼感も増します。


著者のご紹介
Kelly Thomasは、医薬、生物工学及び医療機器業界に18年の経験を有し、cGMP事業に影響を及ぼすすべての品質保証活動及び品質管理活動の策定、実行、管理を専門領域としています。コンプライアンスストラテジー(法令遵守計画)が企業の戦略的ミッション、顧客満足度及び規制要求事項と整合する品質システムの開発及び実施もその一部に含まれます。
Thomas氏は、East Carolina Universityで生物学を専攻し修士号を取得、その後Meredith CollegeのMBAを取得しています。またAmerican Society for Quality (ASQ-米国品質協会)から複数の認定資格も取得しています。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年1月20日水曜日

MasterControl Customer Websiteのリニューアルについて

マスターコントロールでは、お客様向けの情報サイト「MasterControl Customer Website」のリニューアルを現在、行っております。今回のリニューアルには、コンテンツの日本語提供も含まれ、今後は様々なサービスやコンテンツが日本語でアクセス可能となります。尚、リニューアル作業期間中は、本サイトが一時的に利用不可となりますので、ご不便をおかけしますが、ご理解ご協力の程、宜しくお願い致します。

2016年1月19日火曜日

食品業界向け:報告書デザインの秘密に迫る ~優れた報告書とは?~


食品安全マネジメントプロセスの導入を単純にする方法とは、
報告書の使いやすさを向上させることです。
Nye Joell Hardy
Food Safety Technical and Regulatory Writer


方針が確立し、計画も万全、SOPも完成しました。さあ、準備完了です。後は、実行に移すだけです!

しかし時には、こうしたペーパーワークが実際の食品安全や品質保証といった業務へと変える段階こそ、最も難関になることもあるのです。

食品安全マネジメントプロセスの導入を単純にするシンプルな方法とは、報告書の使いやすさを向上させることです。以下に、具体的な方法をご紹介します。


  • 方針やSOPの作成と同じタイミングで報告書を作成しましょう。こうすることで、文書化が義務づけられる要件を網羅することができますので、何が必要かを不明瞭のままにすることはなくなります。
  • 報告書が正当であることを確認する意味で、第三者機関による監査の際に、報告書がすべての要件を満たしているか否かについて確認してみましょう。
  • ファイリングのしやすさを考慮し、保存場所を示す識別子を一番上の定位置に表示しましょう。ファイリングしなければいけない書類は沢山あります。ご自身でより適したファイリング方法を見出してください。
  • 要件は、計画や監査におけるリスト順でまとめるのではなく、実際の作業の順番に沿って整理しましょう。このような工夫により報告書がより使いやすくなり、正しく使用されるようになります。
  • チェックボックスを活用しましょう。読みやすい文字を書くことができる人は決して多くはありません。あなたの従業員の中には読みやすい文字を書く人がいないということもあり得るのです。
  • 要件が多くない場合には、既存の報告書に追加することで全体的なペーパーワークを軽減させることを考慮してみてください。私は、過去にリスクの評価報告書に含まれていた7ページにわたる評価項目を1ページに変更したこともあります。
  • チェックする項目数が多い場合には、入力項目を省略可能な報告書の作成を検討しましょう。 報告書の特定範囲の回答がすべて「はい」の場合、チェックボックスのみチェックすれば良いという仕組みです。「いいえ」に該当する場合には、「いいえ」をチェックし、説明欄に詳細を記載し、是正措置を講じることが求められます。


本記事に関連するホワイトペーパー


  • 報告書は1ページに収めましょう。
  • 担当者の母国語で読むことが可能であれば、報告書のパフォーマンスはさらに向上するでしょう。
  • 業界用語は使用せず、シンプルな文章で作成し、他言語への翻訳がしやすいものが良い報告書といえます。
    • 中止形(don't)などの使用はできる限り回避しましょう。
    • 「汚染の証拠はなかったことを確認しましたか?」など、肯定の回答を求める否定疑問文は避けて作成します。このような文章は混乱を招く原因となります。
  • SOPを作成するタイミングで報告書のデザインを決めることが可能であるように、食品安全問題が浮上した際に、必要とされる是正措置を報告書に追加することも可能です。使いやすさを追求し、他者の手を借りることなく誰もが適切な業務をこなせるような報告書を目指します。
  • 報告書の目的及び理由を冒頭に記載してみてください。今日の業務では、取り扱う報告書は多種多様です。一目でわかるラベルが冒頭にあれば、業務が少しでも楽になります。
  • 報告書では、従業員へのトレーニングが実施しやすいという点にも着目しましょう。説明しずらかったり、従業員が適切に使用できなかったりした場合には、アップデートが必要かもしれません。
  • 報告書のアップデート及び配布に関する合理的な計画をもとに運用してください。使用される報告書が統一されていないなどという事態は避けたいものです。
  • 報告書は我々の良きパートナーとなりえます。どのような情報が必要か、またどのように利用するのかが理解できていれば、報告書は必ずよりスムーズな業務を可能にする技術的ツールとなるでしょう。

I promise.(私がお約束します。)


著者のご紹介
Nye Joell Hardy
前職ではDole Fresh Vegetables社の食品安全性部門責任者を務めた経験を有します。現在は独立し、食品安全に関するテクニカルな問題や薬事的視点から執筆活動を行い、トレーニングや食品安全性計画、 報告書などを専門に活躍中。生産農業における経験は22年。大学では生物学を修め、食品安全性分野では修士号を取得。質問またはコメントがありましたら、badwolf@redshift.comまでご連絡ください。


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2016年1月18日月曜日

MFG DAY 2015: 米国製造業の動向に注目

David R. Butcher
Marketing Communications
MasterControl Inc.

近年、米国の製造業に対する国民の認識は変化し、製造環境は近代的になってきている一方で、知能、技術、能力が熟練していない労働者向けに設計された暗く、危険で、時代遅れの施設といった誤ったイメージが広く定着しています。

2015年10月2日に開催されたManufacturing Day (MFG DAY) 2015は、一般にも開放されたイベントで、製造業者を全米から集い、前述のような世間一般の製造に対するイメージを払拭するため、連携した取り組みの推進を目的としています。製造業の現状として、高性能な自動化技術や産業ロボット、3Dプリンターなどの高度な技術力や製造業で働く卓越した専門スキルをもつ技能者などを紹介し、広く世間に発信しています。

MFG DAYは年に一度開催され、国内製造業者によって会社訪問や工場見学、職業ワークショップなどのイベントが行われます。毎年10月の第一金曜日は、アメリカ、カナダ、メキシコ全土から製造者が集まり、地域住民や工業系大学とタイアップして、充実した需要の高い製造業キャリアの選択につながるべく、企業施設を公開したりワークショップなどイベントを開催したりしています。昨年、MFG DAY に開催された1,675件以上のイベントには約40万人の参加者が集いました。

MFG DAY の目的は、現代の製造業の可能性を広く世間に示すことであり、製造業に従事することへの関心度を高めることにあります。



本記事に関連するホワイトペーパー
製造業は、米国経済にかかせない産業の一つです。米国では、製造業が年間2兆1000億ドルを生み出しており、これはGDP構成比で12.5%、1200万人以上の直接雇用者が雇用総数の8.8%を占めています。また、製造業に$1投資する毎に経済における付加価値は$1.37とのデータもあり、このような高い相乗効果を生み出すセクターは他にはありません。

強力な製造業が米国経済や雇用者数向上の土台となっているにもかかわらず、製造業への入職に関しては、概して他の産業より人気が低い状況が続いています。

Manufacturing Institute(MI)とDeloitte社が実施した6年間にわたる一連の調査では、「強い経済の維持に最も重要な国内産業は製造業である」と米国民は認識している一方、就きたい職業ランキングでは人気がないことが継続的に示されています。MIとDeloitte社による最近の調査(2015年)の結果でも、回答者のわずか37%しか子供を製造業に就かせたいと考えていないことがわかりました。

一方、業界に親しみをもつことが良い印象へと繋がることも、この調査結果で示されています。工業界をよく知る人は、製造業に対して好意的な見方をする傾向があり、製造業に子供を就職させたいと思う人の数は、製造業を知らない人に比べて2倍となっています。




MFG DAY運営組織委員会: Fabricators & Manufacturers Association (FMA)、National Association of Manufacturers (NAM)、Manufacturing Institute (MI) 及びNational Institute of Standards & Technology's (NIST) Manufacturing Extension Partnership (MEP)


【参照】

1) MFGDAY.com

2) Economic Policy Institute

3) U.S. Department of Labor

4) National Association of Manufacturers

5) The Manufacturing Institute and Deloitte

6) National Institute of Standards & Technology, Manufacturing Extension Partnership



著者のご紹介
David Butcherは、10年以上にわたり工業界のB2Bサイトでビジネスやテクノロジーに関する動向に関する執筆活動を行っている。現在は、MasterControl社にてマーケティング・コミュニケーション部門スペシャリストとして活躍。これまでに、ThomasNet News' Industry Market Trends 社で編集者やTechnology Marketing Corp.'s Customer Interaction Solutions社で編集アシスタントとしての経歴をもつ。ニューヨーク州立大学でジャーナリズムの学士号を取得


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