「品質」に対する共通認識を持つことが、品質文化を育てる唯一の方法です |
Marketing Communications Specialist, MasterControl Inc.
まず、「品質」の意味に注目してみましょう。「品質」という言葉には数多くの定義がありますが、American Society for Quality(ASQ)における定義は以下の通りです。
個人またはセクターで独自の定義が存在する主観的な言葉。専門的な利用方法としては、次の2種類が挙げられる。
1. 明示または黙示のニーズを満たすような性能に関わる製品またはサービスの特徴
2. 欠陥や不備を伴わない製品またはサービス
Joseph Juran氏によれば、品質とは「使用する上での適合性」であり、また、Philip Crosby氏は「要求事項への適合性」としています。
欠陥や不備を伴わない高品質の製品及びサービスを届けるためには、組織的な努力を結集させる必要があります。しかし、品質という用語に「個人やセクター独自の定義がある」のであれば、どのようにして一貫した品質を確保できるでしょうか。ASQ 及び Forbes Insights*1の調査では、品質文化の必要性が指摘されており、品質について組織で共通の理解を深め、共通言語で表現し、全従業員が品質重視の行動を取るといった環境を備える必要性があります。
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企業文化を変えることは容易ではなく、一人で実現できるものでもないですが、品質文化へと大きく踏み出すためにできることを、いくつかご紹介します。
1. 品質について定義する
品質という言葉には、上述のものを含めて数多くの定義があります。一番重要なのは、社内でどのように定義するか、あるいは顧客が品質をどのように定義するかということです。品質の意味について他部門の責任者と意見を交わし、品質を定義してみてください。可能ならば、顧客ニーズや顧客にとっての品質とは何かについて、顧客とのコミュニケーションを図ってみてください。もし無理であれば、顧客情報を見直して顧客の立場に立ってみるとよいでしょう。既に組織における品質が定義されている場合には、従業員への周知を徹底し、職務ごとに品質が持つ意味とは何かを社員と話し合ってみてください。
品質の定義が定まったら、企業全体の目標や価値観が要約されている短文で覚えやすい理念を作成しましょう。頻繁にこの理念を復唱し、これを指針として業務にあたり、従業員にもこのやり方を推奨してください。理念の例をいくつか挙げてみましょう。「我が社における最優先事項は品質です。全社員が責任をもって実行します」や、「品質とは安全で効果的な製品を届けることであり、我々の原動力です。」品質の定義や理念は、単に標語にすればよいというのではなく、説得力があることが大切です。
2. 従業員の手本となる
従業員や組織に備わってほしいと思う品質を、まずはご自身が実践してください。自らの仕事やチームに誇りを持つことです。他者に一定レベルの品質を求めるのであれば、自身も同様の高い基準を保つ必要があります。周知の事かもしれませんが、従業員の手本となるということは、効果的なリーダーシップ術のひとつであり、驚くほどの変化をもたらします。従業員と同様、管理者も変革(品質への取り組み方の変更)に抵抗を感じることがありますが、それでも品質への取り組みの強化に挑戦してみてください。そしてチームにおける変革を決して軽視しないようご注意ください。もっと正確に言えば、変革に誠実に取り組み、それが個々の職責にどのような意味をもたらすのか、従業員との率直なコミュニケーションが欠かせないのです。
品質を取り締まるのではなく、生活の一部にするのです。各部門の取り組みは会社のために役立つことをなすためであるという確固たる信念を管理者が持つことで、社員は企業の品質の定義や目標を信じ、納得できるようになるのです。単に管理能力だけでなく、管理者の指導力というものが、社員が正しいことを正しく行うことへの後押しとなります。なじみのある古い格言に「有言実行」とありますが、まさにその通りなのです。
3.品質に対する動機づけや「ゲーム感覚」での取り組み
品質改善の取り組みへのアイデアを集めるために、小規模でも切磋琢磨する場を設けてみましょう。評価を行い、実行できる可能性が最も高いアイデアや事業への影響力が高いと思われる内容を提案した従業員あるいは部門を表彰するとよいでしょう。提案されたアイデアや評価結果は社内で発表します。こうすることにより、品質に関する意識を公に称賛できるだけでなく、他の社員のモチベーションを向上させることができるのです。別の言い方をすれば、各々の業務や仕事ぶりの品質が、企業の品質目標にどのように貢献できるかということを全社員に問いかけることになる訳です。こうしたやり方は、品質を維持するために作られた規則を押し付けるよりも社員の心を掴み、品質に対する自覚を持つために、非常に有効な手段となります。
品質に対する「動機づけ」の手段には、品質評価基準に関わる社内表彰や認証制度、優秀な業績を残した社員を社員自身が直接推薦する機会を設けたり、社員個人への報酬、ボーナスの支給や昇格など、他にもいろいろあります。
4. 品質向上を目的とする要員の確保
Quality Managerの数多くの業務の中でも、雇用は重要なものだと考えられます。雇用という非常に大切な場面で、自社で成長を見守りたいような品質への価値観を既に身に着けた人材を選ぶ権限があるわけです。面接の際には、新卒であれば、品質を理解しているか、また経験者の場合には、前職における具体的な例を挙げてもらうなど、品質に関連する質問をいくつか訊ねてみてください。
入社時の会社説明では、品質に関する企業の方向性、価値観や目標を説明してください。企業にとっての品質の重要性や社内での品質の話題を中心に話すとよいでしょう。可能であれば新入社員教育の場に上級管理者も加わると、社内の様々な立場からみた品質の重要性が伝わると思います。
5. 「品質の共有化“Quality Share”」ミーティングの開催
一日、一週間、あるいは月に1度(スケジュール次第)、部門内の人員が集まり、出席者が順番に、品質に関する事象や部門にとって有益な経験談を報告する場を設けるとよいでしょう。例えば、業務関連、あるいは業務とは無関係なことでもかまいません。これは、品質に関連する事象を特定する訓練になり、品質の視点からの発想が身に付きます。業務と関係する品質の事象が共有できることで、費用負担を生むミスの繰り返しを回避することができるのです。部門内の人にとっては事象を聞く良い機会になるだけでなく、互いに学び合い、部門内で共有の土壌が認識できますし、認識の相違が見つかれば足並みをそろえる良い機会となります。時々、数分程度の会議を開催するだけでも、オープンで前向きな話し合いができ、他の重要な議題に発展する可能性もあるのです。
6. Lean Six Sigma認定
品質を考える際には、ビジネス運営を改革するための方法論で広く知られるツールを使うことも良いアイデアだと思います。リーン式哲学では、運営や文化、指導力について、無駄を排除し、顧客にとって価値あるものを強化する必要性を述べています。Six Sigmaでは、経営における管理能力や品質改善への取り組みに注目しています。いずれか一方あるいは両方の認定を受ければ、部門や組織全体に対して効果的な働きかけができるでしょう。
品質管理部門の管理者は、日々、品質(またはその欠如)に取り組んでいらっしゃるわけですから、品質の重要性はすでに気づいているはずです。企業では、品質プロセスへの取り組みや品質関連の規則や基準へ適合させるべく熱心に取り組んでいると思いますが、義務とされることを文化へ変更することで本物の利益が生まれるのです。品質の在り方を組織の一部とするために何ができるのか社内で考えてみてください。方針を僅かに変える、つまり、Quality Managerは品質を監視するものといった考え方から、管理者は積極的に品質を育てるものと考えを変えることで、品質管理の価値観の改変にどう役立つのか、実際に体験してみてください。
本レポートは、ASQ/Forbes Insightで発表された2014年に実施された調査に基づくものです。詳細はhttp://asq.org/culture-of-quality/にアクセスしてください。
[1] ASQ and Forbes Insights. “Culture of Quality: Accelerating Growth and Performance in the Enterprise.” http://asq.org/culture-of-quality/. Accessed December 31, 2015.
【その他の情報元】
CEB. “Building a Culture of Quality.”
HBR. “Creating a Culture of Quality.” https://hbr.org/2014/04/creating-a-culture-of-quality
LNS Research. “The Do’s and Don’ts of Changing a Quality Culture.”
LNS Research. “Quality Management Strategy: Building a Better Culture.”
ご自身の組織には品質重視の文化はありますか?皆様のコメントをお待ちしております。
著者のご紹介
Beth Pedersenは、マスターコントロールのマーケティングコミュニケーションスペシャリストで、Microsoft社やNovell社、NetIQ社、SUSE社、Attachmate社の企業向けソフトウェアに関する経験から、テクニカル分野及びマーケティングに関する執筆活動を行う。University of Wisconsin-Madisonでライフサイエンスコミュニケーション学士号、及びIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を取得。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
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