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EU地域も対象に含めた国際臨床試験に関する法規制の改定が審議されています。 業務への影響とその時期は? |
国際臨床試験のGCP規則について、審議中の改定点とは?
改正の内容は?
改正の主なポイントは2つ挙げられます。
2015年の年初に、 ICH E6(R2)「医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインの補遺(案)」がICH*で発表され、20年ぶりの国際的ガイドラインの大幅な改定と言われています。当該ガイドラインの実施とおおよそ同時期に、新しいClinical Trial Regulation (CTR) 563/2014が、制定から久しい現行のEU Directive 2001/20に代わって適用されることになります。
資料ダウンロード:
経緯:
ICH E6ではそもそも、治験依頼者による技術革新に高い柔軟性をもたらすことが意図されていましたが、時に誤った解釈をされ、革新の支障となってしまうことがあると、ICHのビジネスプランで述べられています。新しい補案ではこうした点が修正され、「臨床試験のデザイン、実施、監督、記録、報告アプローチの改善と効率化」が図られます。
RQA (旧 BARQA)のDr. Colin Wilsherが補遺(案)に関する詳しい分析を執筆しており、ガイダンスにおける変更点と臨床試験において所見の多くを占めている「最新の話題」との関連付けを行っています。
補遺(案)の内容
ICH E6(R2) の内容は次のとおりです。
- 原資料に関する要件 – ALCOAの綴りはCがひとつか2つか(Wilsherの分析参照)。ICH E6でALCOAが取り上げられるのは初めてのことです。
- 効果的なプロトコルデザイン及び重要な情報のみの収集を含む品質管理の定義
- リスクに基づく臨床試験管理のガイダンス(リスクに基づくモニタリング(RBM:Risk-Based Monitoring)を含む)
- 臨床試験のコンピュータ化が進む現状に則した「コンピュータシステムバリデーション“CSV”」を重視
- 電子記録及び必須文書に関する基準
- PIによる監督業務責任の追加
ICH E6(R2)の今後
ICHでは、欧州、米国、日本、カナダ、スイスを対象に規制当局への意見・情報を募集しています。最終合意ガイドラインの公表は2016年11月に予定されています。
EU Clinical Trial Regulation 536/2014
経緯:
欧州連合加盟国の臨床試験許可制度は大幅に遅れをとっていると言われています。新しい指令では、被験者の安全性に対して高い基準を維持しつつ、臨床試験実施地域として欧州連合国が魅力的なものとなるように設計され、効率化が図られています。
新規則の内容:
Dr. Martine Dehlinger-Kremer (SynteractHCR社メディカル及び薬事部門グローバルVP) による60分間のウェブセミナーでは、EUにおける新しい規則全般の概要が取り上げられています。
規制調和:Dr. Dehlinger-Kremerによると、現行の「指令(2001/20/EC)」の解釈は、細部では28加盟各国の裁量に委ねられており、国内で独自に異なった解釈で法化されていました。承認申請要件や、タイムスケジュール、安全性情報の取り扱いが異なっていることで、治験依頼者にとっては欧州諸国での臨床試験の計画は困難を極め、莫大な費用に繋がっています。(RQA GCP Committee は “gold-plating”と称される追加要件の義務化が各加盟国で取り決められていることについて言及しています)。新しい規則では、国別の解釈は不要となります。
新しいプロセスでは、単一の臨床試験許可申請の提出により試験に関連するEU全加盟国を網羅する一括申請が可能となります。審査はすべての関係加盟国(CMS:Concerned Member State)が行いますが、任命された参照加盟国(RMS:Reference Member State)が各国での審査を調整しますので、治験依頼者へは1つの成果文書が提示され、単一の審査報告書が作成され、全CMSに対し有効となります。新しい規則では、CMSから許可が下りないケースや治験施設独自の文書作成やプロセスなどの手順に関して限定的な条項はあるものの、EUポータルへの一括申請が可能になれば、これまでの各加盟国に対する申請手続きに係る作業量が劇的に軽減されることになります。
臨床試験許可申請と同様、安全性報告に関しても、欧州連合加盟国間で調整される予定です。
申請のタイムスケジュール:許可申請の審査までのタイムスケジュールは決められた日程で進むため、治験依頼者は確実なスケジュールに基づいて計画を進めることができます。しかしながら、タイムスケジュールがタイトな場合には、治験依頼者にとっては計画こそが重要になってきます。申請審査のプロセスとなる60日間には、申請者が詳細な回答を求められるタイミングが2回あります。回答は30日以内と決められているので、正確な情報を準備しておく必要があります。
透明性:新しい規則では、臨床試験結果の報告制度についての記述があり、研究に関する透明性の確保と知見の共有化といった業界の動向が反映されています。申請の取り下げや最終的に承認に至らないといった場合も、治験依頼者は「医療関係者以外の一般の人々にも分かりやすい」概要書を準備し、販売承認申請書と併せて治験の総括報告書(Clinical Study Report: CSR)の提出することが求められています。こうしたデータはEUの新しいデータベースに蓄積され公開される予定です。
柔軟性:新しい規則では、治験マスターファイル(TMF)の内容やモニタリング業務(RBMを考慮)の柔軟性を支持する条項が含まれています。
FDAとの重要な相違点:EUにおける新しい規則の下では、開始前のEUデータベースへの登録が義務付けられています。米国では治験者登録開始後 21 日以内と規定があります。さらに、EUでは第1相試験のEUデータベースへの登録が必要ですが、米国では第1相試験はClinicalTrials.gov(米国の臨床試験登録システム)への登録が規定されていません。治験依頼者がEUでの販売承認の裏付けに、米国での臨床試験で収集されたデータを使用したい場合には、米国で実施される試験もEUにおける新しい規則の登録要件を遵守しなければなりません。
CTR 536/2014の今後
当該規則は早ければ2016年5月に発効される可能性があります。実現的には、臨床試験の透明性の確保を目的とした管理データベース及び臨床試験許可制度のためのポータルサイトをともに6か月で実用化することが前提条件であり、これを満たす必要があります。
最後に、現行版への改定内容を統合し新しい内容を判り易いようにご配慮いただきましたことに関し、ICH エキスパートワーキンググループ (EWG)の皆様に深い感謝を述べさせていただきます。
新ICHガイドライン及びEU規則及び企業への影響を詳しく知りたい方、ご連絡お待ちしております。
*ICH = International Conference on Harmonization日米EU医薬品規制調和国際会議
著者の紹介
Laurie Meehan
Polaris Compliance Consultants, Incでソーシャルメディアマネージャーを務める。同社のブログやeNewsletterを執筆。ソーシャルメディアプラットフォーム上での顧客や働く仲間とコミュニケーションを図り、企業のSOPやトレーニングの管理などを行う。2008年Polaris入社前は、テレコミュニケーションR&Dの大手企業にて、テレコミュニケーションサービスにおけるコンサルティングやトレーニング業務に従事。La Salle Universityでコンピュータサイエンス学士及びDrexel Universityでコンピュータサイエンス学士取得。
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