2017年7月26日水曜日

「改善」は気づかい

同僚のホゼとピーターが改善の道へと
第一歩を踏み出す。
Dan Markovitz
Markovitz Consulting

ピーターとホゼは、長年一緒に働いています。パンチプレス機のオペレーションを任されているピーターは63歳ですが、一日の終わりにはビルの間を抜け、75ヤード離れたゴミ捨て場まで50ポンドの廃棄物を引きずって運んでいます。

ホゼはピーターより20歳ほど若いため、ピーターが腰を痛めないように、できるだけゴミは自分が運ぶようにしていますが、仕事上、毎回という訳にもいきません。

現在、この会社の改善に取り組んでいるのですが、まずはシンプルに困っていることから改善していきましょうと提案しています。いくつもの座学を受ける、5S活動を実践するなど、ビジネスを「大きく変える」ことにチャレンジするのではありません。ただ、昨日こうであったことが必ずしも今日もそうでなければならない!という必要はないということに気付いてもらいたいのです。誰もが状況をより良く、よりシンプルに変化させることができるのだということを知ることが、改善への第一歩だと思います。

ピーターとホゼは無口な人間です。キックオフミーティングやトレーニングプログラムにおいても、彼らが何かを発言することはありませんでした。変化を拒んでいるのか、あるいは長年のクロックパンチングに従事するなかで、仕事に関する最小限の要求以外、何かを求める気力を失ってしまっているのかもしれません。





ですから、掲示板に張り出されたホゼの改善案カードを見て私は驚きました。加工現場のごみ箱にキャスターを付けたいというのです。ホゼにこの提案について尋ねると、「ピーターが心配です。彼は63歳です。ごみ収集箱までゴミを引きずって腰を痛めて欲しくないのです」とだけ答えました。

節約経営の指導者や(私のような)節約に関するコンサルタントをしている者は、大抵、コスト低減、増収、リードタイムの短縮、品質の向上などについてをお話します。しかし、これらは日常業務とはかけ離れており、改善がそこでなぜ重要なのかという理由を働く人の視点から語られていなかったのです。企業の利益を第一に考えるよりも、より働きやすく人の役に立つ改善を考えることの方が、重要で嬉しいことでしょう。新郷重夫氏は、4つの改善の最終目標は、優先度の順に「よりシンプルに、より良い品質で、より早く、より安く」と述べています。

ホゼがゴミ箱に取り付けたキャスターは、企業業績への影響はゼロです。しかし、改善への第一歩です。そして、それよりも重要なことは、これは、ホゼの気づかいが示されているということだと思います。

複写厳禁 The Lean Post掲載記事

改善の道へ第一歩を踏み出せましたか?下のコメント欄にご意見をお寄せください。


著者のご紹介
Dan Markovitzは、リーン式の新しいアプローチの指導及び実践により、より迅速、より堅牢な組織運営のためのアドバイスをしている。長年、リーン方式の考えを伝えるためのトレーニング講師を務め、lean journeysへのアプローチ方法を開発し、企業がリーン式の実践を再び活発に行うためのサポートを行っている。米国及び欧州で活躍。WL Gore社、Abbott Vascular社、NYU Medical Center、the New York City Department of Health, CamelBak社、Clif Bar社、Industrial Revolution、Goodyear Tire社を顧客に持つ。

He is a faculty member at the Lean Enterprise Institute and teaches at the Stanford University Graduate School of Business, the Stanford Continuing Studies Program, and the Ohio State University’s Fisher School of Business.

Lean Enterprise Instituteの講師であり、Stanford University Graduate School of Business、 Stanford Continuing Studies Program及び Ohio State University’s Fisher School of Businessで教壇に立つ。
Shingo Research 賞受賞のA Factory of One 及びBuilding the Fit Organizationの著者でもある。Lean UK SummitやReykjavikで開催されたLean Island Conference、LEI Transformation Summit、 Shingo International Conference、その他数多くのAME Conferencesにて発表の経験を有す。

Markovitz氏は日本に4年在住した経験があり、日本語が堪能。Wesleyan University にてBAを取得、及びStanford University Graduate School of BusinessのMBAを取得しています。連絡先;dan@markovitzconsulting.com.

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。