2015年11月27日金曜日

ドナー心臓移植利用件数の減少

米国内におけるドナー心臓の利用件数が顕著に減少
していることが新たな研究で明らかになりました。
Sheila Yu
dailyRx News


心臓移植待ちの患者数が増えていく一方で、移植に利用可能な心臓が不足しているという事態が生じています。

スタンフォード大学医学部のKiran K. Khush氏を中心に実施された新たな研究によれば、米国内におけるドナーからの心臓の利用件数が顕著に減少していることが明らかになりました。



また、米国内におけるドナー心臓の利用件数は地域により若干の差があり、ドナー心臓の利用や受入に関するガイドラインのアップデートが必要であることが指摘されました。

Khush氏は、プレスリリースで以下のように述べています。

「移植に利用可能なドナー心臓はごく僅かである一方で、ドナー心臓の受入に関しては、 この15年から20年の間にますます保守的になっています。」

「しかし、ドナー心臓が不足している一方で、心臓移植を待つ重篤患者数が年々増加しているこの現状は、関係者にとって非常に苦しい状態であると言えます。」

臓器調達移植ネットワーク(OPTN;Organ Procurement and Transplantation Network)からのデータに基づき米国内の動向に関する調査を実施しました。1995年から2010年までの成人心臓ドナー候補者全員を対象としています。

本研究チームによると、ドナー心臓の受入は1995年の44%から2006年には29%と、大幅に減少しているにも関わらず、2010年には32%に回復していました。



本記事に関連するホワイトペーパー

臓器提供を希望する場合、まずはその個人が在住する州で臓器提供ドナー登録を行います。ドナー候補者の死亡時の医学的条件により、どの臓器の提供が可能であるかの判断が下されます。

しかし、すべての臓器(本件の場合、心臓)の移植が認められるというわけではありません。心臓が受け入れられないケースの理由には、提供者の年齢や性別、医学的条件などの要因が含まれます。候補となるドナーの心臓の多くは、高齢者や健康上の問題を抱えるドナーから提供されることが多いことが明らかになりました。これはアメリカのほとんどの地域で望ましくない条件とされるものです。望ましくない形質を有するドナー心臓の問題が、ドナー心臓受入の減少につながっているのです。

Khush氏のチームでは、ドナー心の件数に若干の地域差があることも認めています。これには、ドナー心臓の受入が標準化されていないという現状にも関連することです。標準的臨床ガイドラインの必要性を説くと当時に、ドナー心の利用件数の低い地域での受入及び利用件数の増加を目指す積極的な取り組みの強化を推奨しています。

この研究は、2月10日付の「American Journal of Transplantation」に掲載されました。国立心肺血液研究所 (NHLBI; National Heart, Lung, and Blood Institute)及び国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所 (NIDDK; National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases)による資金提供を受けて実施された研究です。資金調達または利害関係に関する開示情報はありません。

許可を得て転載(刊行元:www.dailyRx.com.)

Sheila Yu
University of Texas Health Science Center at Houston公衆衛生修士号(Master of Public Health)取得。dailyRx News Networkの健康関連ニュースのリポーターとして、主に健康促進及びその成果に注目した情報の発信に取り組んでいます。





本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年11月24日火曜日

米FDA、CDERのQMSソフトウェアでもマスターコントロールを採用

品質マネジメントシステム向けソフトウェアを提供しているマスターコントロールは、FDA(米国食品医薬品局)のCDER(医薬品評価研究センター)へのQMSソフトウェアとして採用されたことを発表しました。CDERへの導入は、ORA規制業務部)への導入と同様に、パートナー企業のi4DMと共同で実施されます。また、ORAへの導入と同様に、文書管理や教育管理、監査、CAPA、変更管理などの業務プロセスを中心に、QMS全体の電子化を予定しています。
        
     
マスターコントロールは、FDAで現在ご利用いただいているQMSソフトウェアをCDERでもご利用いただけることになり、大変嬉しく思っています。弊社の目的は、人々を救うことができる製品やサービスをより早く世界へ展開することであり、医薬品の提供においてキーとなるCDERも含めて、FDAのミッションとも共通していますので、良いシナジーが生まれることを確信しています。


Matt Lowe
Executive VP of Global Sales & Marketing
MasterControl Inc.


運用拠点の拡大

2009年、マスターコントロールはFDAのORAに採用され、これがFDAにおける初めての導入でした。ORAは、FDAの7つのセンターと連携し、規制対象の製品や製造業社に対する査察や取り締まりを専門的に行う行政機関です。米国に輸入される製品に対する監督責任もORAが担っています。


マスターコントロールについて

マスターコントロール は、規制環境下の企業が全体のコストの低減を図り、社内の業務効率を高めながら、自社の製品をいち早く市場に投入する上で役立つソフトウェアソリューションを提供し、製品のライフサイクル全体を通じて、企業の重要な情報の適切な管理を支援しています。また、弊社のソフトウェアは、導入からバリデーション、運用が容易であることで知られています。ソリューションの主な対象業務は、品質管理や文書管理、製品ライフサイクル管理、監査管理、教育管理、文書管理、部品表、サプライヤー管理、申請管理等です。業界のベストプラクティスに基づいた様々なサービスを通じて、企業全体におけるトータルな情報管理を実現します。

マスターコントロールの詳細は、http://www.mastercontrol.co.jp/にアクセスするか、03-5422-6662までお問い合わせください。

2015年11月16日月曜日

Masters Forum 2015 ご来場のお礼

Masters Forum 2015へご来場いただき、誠に有難うございました。

2016年も開催を予定していますので、またのご来場を心よりお待ちしております。

Masters Forum イベント事務局


2015年9月24日木曜日

Masters Forum 2015 開催のご案内




マスターコントロールをご利用いただいているお客様、またその導入をご検討中のお客様向けに、業界の最新動向や弊社製品の最新情報をお届けするイベント「Masters Forum 2015」を開催いたします。

Masters Forum 2015は、業界の専門家による講演やマスターコントロール製品の最新情報、運用事例等をご紹介するイベントです。業界の最新動向や様々な規制・規格に対応したソリューションを是非ともご覧ください。



開催場所・日時

日時:2015年11月6日(金)13時から19時30分まで
場所:UDX GALLERY(秋葉原UDX内4F)
〒101-0021 東京都千代田区外神田4-14-1
秋葉原駅下車徒歩すぐ



Masters Forum 2015 特設Webサイト
ご登録はこちらから:http://mastersforum.jp/

2015年8月7日金曜日

規制対応に関連する無料ツールやサービスのご紹介

規制対応等に関連する様々なサービスが
無料で提供されているのをご存じですか?
Polaris Compliance Consultants, Inc. Socical Media Manager
Laurie Meehan

インターネット上のコミュニケーションサービスを注意して利用していても、気がつけば無意味な会話に引き込まれてしまっていたという経験がある方も多いと思います。実際に、このようなサービスを利用しない多くの方が理由としてあげているのも、この内容です。しかし、少し我慢すれば、こうしたサービスを利用することにより、有益な情報を得られることも実感しており、次はその一例です。

LinkedIn ユーザーA: 「素晴らしい情報ですね。もっとカバーする国を増やしてくれたら良いですね。」
・・・興味をひかれるコメントですよね?何を意味しているのか、このあとも引き続きお読みください。

LinkedIn ユーザーB: 「利用可能なサービスがインターネット上に増えてきて心強いですね。」
・・・この楽観的な人物は誰でしょう?

LinkedIn ユーザーA: 「心強いですね。こうした新しいサービスの動向を全て把握する良い方法はご存じですか?こうしたツールをトラッキングしているウェブサイトはありますか?

実は、このLinkedIn ユーザーBは私です。最後の質問に手短に答えるとすると、答えは「いいえ」です。ただ、便利だと思う規制関連のウェブサイトやオンラインツールのリストを自分用に作成していたので、このブログを書くきっかけにもなりました。今回は、リストしているツールやサイトの一部をご紹介いたします(上記のLinkedInも私の一覧に含まれています)。




本記事に関連するホワイトペーパー
How to Use Risk-Based Monitoring and Clinical CAPA to Ensure Compliance


ClinRegs:NIH直轄の国立アレルギー・感染症研究所『(NIAID』
※National Institute of Allergy and Infectious Diseases)

各国の臨床研究の研究者をサポートすることを目的としてNIAIDが開始したサービスです。オンラインデータベースには14カ国の臨床研究規制情報が収録されており、比較も簡単に行うことができます。ブラジルとペルーのインフォームドコンセントに関する要求事項を比較する場合の操作は、マウスを4回クリックするのみでした。ウェブサイトに収録されるその他の12か国は、中国、インド、ケニヤ、リベリア、マラウイ、シエラレオネ、南アフリカ、タンザニア、タイ、ウガンダ、英国及びアメリカです。NIAIDによれば、将来的な追加が予定される国には、マリ、メキシコ、ハイチ、及びベトナムが含まれています。




ResearchAE.com (Social Health Insights)
http://www.researchae.com/

6月、我々のニュースレター購読者が次の熱意ある発表を発見しています。

『薬局で医薬品を探している時、または処方箋について医師に尋ねている際に、その医薬品に関連する有害事象、またはそれを経験した人に関する情報、用途を知りたいと感じたことはありますか?今日からはそれが可能です。』

ResearchAE.comを利用すると、とても簡単に医薬品や医療機器の有害事象、食品や医療機器のリコールなどを検索したり分析したりすることができます。例えば、openFDA(FDAが提供するAPIやデータセットへのアクセスを提供するウェブサイト)で利用可能な800万件以上の有害事象の記録から、筋痙攣により昨年シクロベンザプリンを摂取し入院した私と同年齢の女性に関連する有害事象をほんの数秒で見つけることができました。見つかったのは1例でした。情報公開法の関係で、従来は同じ情報を得る場合に数週間かかることを考えると大きな改善です。




Data Dashboard (FDA)
  • 過去5年にイタリアで実施された査察は何件か?
  • CDER査察のうち2012年のVAI(Voluntary Action Indicated:自主的な是正を望む)及びOAI(Official Action Indicated:規制措置対象)の比率は?
  • 昨年、CDRHから発行されたWarning Letter(警告書)数は?
  • 2010年に発生したクラスI食品のリコール件数は?
こうした質問の答えを探す場合には、FDA Data Dashboardが便利です。査察、Warning Letter(警告書)、差押え、禁止命令や回収に関するハイレベルなデータがグラフィカルに表示されます。データ展開して下位レベルの詳細を表形式で表示したり、列でデータを並び替えたりすることもできます。また、更に独自の分析が必要となる場合には、チャートや表をエクスポートすることも可能です。




ClinicalTrials.gov(NIH)のトレンド、チャート、及びマップ

以前のサイトと比べるとインタラクティブな要素が半減してしまっていますが、このページは非常に優れていると思います。治験に関する興味深いデータの概要が、一目でわかりやすく提供されています。タイプ別、実施年別に登録されたスタディの総数がチャートや図表で表示されます。マップ機能は実施サイトのロケーションを表示する唯一のインタラクティブな機能です。使い方はいたって簡単で、国をマウスでクリックすると、登録されるすべてのスタディが表示されます。
ClincalTrials.govから直接、XMLフォーマットの生データをダウンロードすることもできます。これにより、必要なトレンド分析を構築することも可能となりました。個人的には、クリントン政権の時からコードを記述していないため、インタラクティブなマップ機能を今後も愛用する予定です。




Worth Watching

FDAは、当局により発行されるすべてのガイダンス文書を検索することが可能なデータベースを提供しています。以前は、ガイダンス文書のリストがFDAウェブサイトに散在しており、統一性に欠けていました。こうしたリストから検索するのは不可能に近いと常に感じていたのです(ただ同僚が私よりも使いこなしていた点は認めます)。データベースからもれているガイダンス文書がたくさん特定されていることがツイッターに投稿されているのを見つけ、意気揚々と声を上げた私を想像していただけると思います。FDAではまだ追加作業を行っている可能性がありますので、データベースは実用性の点で今後も改善されるのではないでしょうか。その進捗状況を定期的に確認したいと思っています。





【最後に】

ClinRegs、ResearchAEとFDA Data Dashboardはすべて、ベータ版あるいは初期リリースです。こうしたツールの開発者はフィードバックを歓迎しているようですので、みなさまからのフィードバックによりツールの有用性や内容が改善されることにつながるかもしれません。
フィードバックに関して言えば、おすすめのツールがありましたら、下記の方法で私にも是非、情報をお寄せください。

Laurie Meehan
現在、Polaris Compliance Consultants, Inc.のSocial Media Managerを務めるMeehan氏は、PolarisのブログとeNewsletterを執筆しており、企業ウェブサイトの管理、ソーシャルメディアプラットフォーム上での顧客や社員との交流、企業のSOPや社内トレーニングの管理に携わっています。2008年にPolarisに入社する以前は、データ通信に関する研究開発を行う主要企業に在籍し、情報通信サービスに関するコンサルティングやトレーニング業務に従事し、数多くの業界フォーラムでの講演等の経験を有しています。La Salle UniversityでコンピューターサイエンスのBA取得後、Drexel UniversityでコンピューターサイエンスのMSを取得しています。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年8月5日水曜日

セミナー開催のご案内:医療機器メーカーにおけるグローバルQMS構築のポイント



医療機器メーカー様必見!医療機器メーカーにおけるグローバルQMS 構築のポイント
~ 海外拠点のQMS統合を検討・推進している医療機器メーカー様向け ~

主催:HOYAサービス株式会社
協賛:マスターコントロール株式会社
日時:2015年9月2日(水) 14時~17時
場所:HOYAサービス株式会社 本社セミナールーム

グローバルなビジネスの展開と成功は今や業種業界を問わず日本企業の共通の課題ですが、なかでも医療機器メーカー各社は、先進国における医療費抑制の動きと新興国市場の急激な拡大を背景に、一層苛烈な国際競争の荒波に直面しています。我々HOYAグループも、当事者として日々その激しさに洗われているのが現状です。

こうした中、医療機器等の規制環境下にある業界にとって「国や地域で異なる規制や要求事項に自社のQMSを如何に効率的に適合させていくか」は、最重要課題の1つとなっています。本セミナーでは、医療機器メーカーの海外戦略を後方から支えるグローバルQMSの構築について、経験や知見を皆様と交換しながらそのポイントを探ります。


※内容は予告なく変更される可能性がございます。予めご了承ください。
※IT関連ならびにコンサルティング企業のご来場は、事前許可を得ている例外を除き、ご遠慮いた
  だいておりますので、ご了承ください。


2015年7月14日火曜日

Why Do You Do What You Do? ~その仕事の目的とは?~


マスターコントロールの多くのお客様は、厳しい規制環境の中で、
重要な製品やサービスを世界中に提供しています。
Jon Beckstrand
CEO, MasterControl Inc. 

これまでに「何のためにその仕事をしているのか?」という質問を自分自身に問いかけたことはありますか?また、品質管理業務の手順やSOPに没頭している状況や、進行中のCAPAタスクに関する白熱した社内会議の中で、自らの業務の目的に疑問を抱いたことはありますか?

弊社がまだ従業員50名程度だった頃、自分自身にこのような質問を投げかけることはありませんでした。しかし、当時と比べ会社も大きくなり、世界中で事業を展開するようになった今、この質問の重要性が増しているように感じています。

また、TED(カンファレンス)で発表されたSimon O. Sinek氏の「ゴールデンサークル」に関するコンセプトを聞き、改めて、自分が取る行動の背景にある目的について考える機会にもなりました。Sinek氏は、人々は「何を(What)」ではなく、「なぜ(Why)」を重要視していると理論づけています(1)。

自社の企業目的は当然、常に認識していますが、「ゴールデンサークル」の影響もあり、近年では「目的やビジョン」の確立を特に意識して、取り組んでまいりました。2014年のMasters Summitにて、弊社の目的についてお話した際にも、お客様に上記の質問を投げかけ、私自身の考えを発表させていただきました(2)。

QMS分野におけるリーディングソリューションをお客様に提供することに、私たちがなぜ懸命に取り組んでいるのか?それは、お客様の素晴らしい製品の早期市場展開及び低コスト化実現に貢献し、こうした製品からの恩恵を一人でも多くの人々に受けていただきたいとの願いがあるからです。



本記事に関連する動画:『マスターコントロールとは?

厳しい規制環境下の企業

弊社製品をご利用いただいているお客様の多くは、厳しい規制環境の中で、重要な製品やサービスを世界中の人々に提供しています。その中で、Oil States Industries社やSynCardia Systems社、国際エイズワクチン推進構想(IAVI:International AIDS Vaccine Initiative)をご紹介いたします。

Oil States Industries社は、石油ガス産業の素材や掘削機器などの製造メーカーで、2010年に発生したBP社のメキシコ湾原油流出事故発生時に、海上の原油回収に使用された機器がOil States Industries社の製品です。

SynCardia Systems社は、人工心臓を開発している医療機器メーカーで、重症心不全に対して心臓移植までの生命を維持するために用いられる(完)全置換型人工心臓を製造しています。

国際エイズワクチン推進構想(IAVI)は、安全で効果的なエイズワクチンを世界中に普及することを目的に、リサーチャーとのパートナーシップによる臨床試験を実施する非営利団体です。

優れた製品を「より速く、より多くの人々に、より高い品質で」提供するという各企業の目的は、私たちの目的でもあります。このような重要な目的を達成する為、私たちの業務も、ソフトウェア開発や障害修正から、もっと大きなものへと発展することができます。


影響の大きさを認識

弊社のお客様が生産する製品を合計すると、推定で約280,000点に達します。こうした製品一つ一つのコスト引き下げ及び生産のスピードアップは、市場に大きな影響を与えます。医療機器メーカーのお客様で、変更管理プロセスを46日から6日に短縮した事例がありました。このお客様の製品は、毎日100名以上の新規の患者さんに使用されていたので、40日の変更管理プロセスの改善は、変更によって不具合や問題点が改良された製品が4,000名の患者さんに使用される問題を防ぐことに繋がりました。これは一例ですが、お客様と弊社の共同作業によって、世界中の多くの人々の生活に影響を与えることができます。

皆さんも、「なぜその仕事に携わっているのか」と自分自身に問いかけてみてください。ドイツの哲学者であるFriedrich Nietzscheの「He who has a why to live for can bear almost any how(生きることの理由を持つ者は、ほとんど、どのような類の「生き方」でも耐えることができる)」という言葉があります。自分自身の中で、業務の目的が明確になると、机上に山積みとなっている監査の指摘事項や、現在担当しているバリデーションプロジェクトに気力を失うようなことも軽減されるのではないでしょうか。


Jonathan Beckstrand
Jonathan Beckstrandは、University of Utahにて会計学修士課程、Brigham Young Universityにて法学部を卒業後、信用組合のソフトウェアシステム開発部門の法務部門としてキャリアをスタートし、その後、米国シカゴエリアのソフトウェア・ストラテジー・コンサルティング会社において、シニア・コンサルタントとして従事。その後、シリコンバレーに移り、KPMG社のM&A(企業合併買収)部門にてデューデリジェンスを担当(30社を超えるインターネットやテレコミュニケーション、ソフトウェア企業への買収、投資など)。Jonathan Beckstrandは、現在、米国ユタ州ITサービス組織の取締役会、ユタ州弁護士団にも所属しています。

2002年に社長兼CEO(最高経営責任者)に就任してから、マスターコントロールの成長力は勢いを増し、様々な新しいソリューションをリリース、社内外問わない革新を推進し、規制対象企業への品質マネジメントシステム(QMS)向けソフトウェアとサービスのリーディング・プロバイダーとしての地位を築きました。


2014年Masters Summitにおけるプレゼンテーションはこちら


参照

(1) Simon Sinek is the best-selling author of “Start with Why: How Great Leaders Inspire Everyone to Action.”

(2) The Masters Summit is MasterControl’s premier educational conference for customers. Nearly 400 people attended the seventh Masters Summit, held on Oct. 8-9, 2014, at the Snowbird Resort in Utah.

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年6月9日火曜日

ISO 9001:2015 改訂版に向けた5つの取り組み


ISO 9001:2015への対応が必要となる企業のみなさま、
移行計画は万全ですか?

Terrance Holbrook
MasterControl Inc.


品質マネジメントシステム(QMS)規格であるISO 9001:2008は、今年後半に予定される改訂版ISO 9001:2015の発行に伴い、大きく変更されることが発表されています。この改訂では、構成及び基本要件の変更も予定している為、既にISO 9001を認証済みの企業に限らず、新規認証を計画している企業にとっても重要です。


改訂版の要求事項にスムーズに対応する準備は万全ですか?
また、これらの要求事項を積極的に捉え、変更という課題をチャンスに変える自信はありますか?

ISO 9001:2015のDIS版(国際規格案)によると、他のISOマネジメントシステム規格との整合性を高める為に、新たな上位構成が使用されています。また、マネジメントシステムの基礎として、リスクベース思考がさらに強調されている点、企業及び顧客の成果達成が重視されている点、文書化に関する要求事項が緩和されている点、ならびにトップマネジメントのコミットメントや関与に関する要求事項が強化されている点が主な変更点となります。

多くの規制関連の専門家やアナリストの間では、上記及び他の変更点による相乗効果によって、2008年のアップデートよりも一層重要な意味を有し、ISO 9001:2000と同様のインパクトをもたらすであろうと評価されています。






もちろん、変更が脅威となることも想定できますし、その管理が困難な場合もあります。しかし品質管理の担当者が変更点を効果的に管理することによって、苦痛が軽減され、変更を受け入れやすい雰囲気がつくり出されますので、効率よく新たな「通常業務」状態に移行することが可能となるのです。

改訂版への移行が必要な企業は、変更への対応規模がQMSの成熟度や組織体制の効果・効率など、さまざまな要因により影響を受ける可能性があります。しかし、変更の管理が重要な鍵となることは、すべての企業に共通しているのです。

変更管理とは、変更に対処する組織的な活動であり、ISO/DIS 9001の要求事項の1つです。QMSの変更が必要な場合、計画的かつ体系的方法で、変更を実施することが定められています。

全ての業種や企業で採用できる方法は例にないですが、導入後にカスタマイズすることで、その管理能力を高め、好機を見出すことは充分可能ですので、その方法をご紹介いたします。

【1】変更点の反映
改訂版への移行を障害として捉えるよりも、既存QMSのシステムを強化できるチャンスと考えてみましょう。これはリスクベース思考がISO/DIS 9001でより重視されていることからも、ヒントを得ることができます。リスクは一般的にネガティブなものとして理解されがちですが、リスクベース思考では、チャンスとして捉えることができます。すでに成功を収めている企業では、直観的にリスクベースアプローチを採用していることが多いのです。これは予防という観点からの事前対策や継続的な改善といったメリットに着眼したものとなります。品質管理の担当者である皆様も、改訂版の要求事項への対応は、業務の最適化及び優れた結果を生み出す過程であると考えましょう。

【2】変更点の共有
一般的に、変更管理を効果的に運用している企業では、早い段階から明確かつ頻繁に、今後の変更管理に対する取り組みの予定や目標、目的が社内で共有されています。各自が業務及び自分自身が受ける影響を把握し、可能な限り移行を合理的に進められるように、移行計画の当初からその手順を認識していることが重要です。もちろん、良好なコミュニケーションとは単に伝えるということではなく、コミュニケーションが双方向であること、関連するすべてのフィードバックに耳を傾けていることが重要となります。こうすることで、変更によるスタッフへの影響に注意を払うことが大切なのです。

【3】従業員の協力
従業員が非協力的な場合、通常でも困難とされる変更管理に対する取り組みが、より一層、難しくなりがちです。しかし、従業員が積極的に取り組むことによって、よりスムーズな移行が実現できます。様々な部門からの声に耳を傾け、早い段階で従業員の専門知識を活用することによって、企業により多くのメリットをもたらすことができます。従業員及び中間管理職は、技術面からの業務知識、潜在的障害及び顧客ニーズに関する知識を備えた重要なリソースです。ISO/DIS 9001では、QMS運用に対するトップマネジメントの積極的な関与が要求事項として増加しており、従業員の協力は特に適切だと考えます。

【4】適切な教育訓練
変更に適応する為には、新しいプロセスに精通することやスキルの熟達が求められます。その点で従業員の教育訓練は効果的な方法であり、変更点や必要なコンピテンシー(能力)についての知識を構築することができます。効果的な教育訓練を提供することにより、変更に対する従業員の不安が緩和され、トップマネジメントとしても、変更を通じて従業員の統率をことに加え、新たなプロセスや役割、そして新しい発想へ、シームレスな移行が可能となります。

【5】段階的な変更  
本年後半に予定される発行から3年間を移行期間とし、既存のISO 9001認証をもつ企業は、2018年後半までにISO 9001:2015の認証を受ける必要があります。変更管理は業務プロセスの一つですので、いくつかの段階を経て実施することもあるのです。改訂されたすべての要求事項を一度に満たす対応より、新しいプロセスや手順、責務を徐々に導入することによって、大きな改訂に対するショックを和らげることができます。つまり変更管理の取り組みの行き詰まりや失敗を経験するよりも、影響を最小限にとどめ、効果的に変更管理を行うことが可能となるのです。

【結論】
ISO 9001の改訂案に伴う主な変更点を適用する時期としては、まだ早いといえますが、改訂プロセスをモニタリングし、提案されている主な変更点の熟知に努め、変更管理プロセスの策定に取り組むことが推奨されます。

BM TRADA(独立品質保証サービス提供機関)が技術情報誌に掲載した内容では、「改訂版への移行プロセスを開始するのは今」であると記されています。「社内の計画策定及びその伝達・連絡は現時点で開始すべきであり、必要に応じて既存の品質マネジメントシステムの修正に必要となる準備を開始します。トップマネジメントは新たな責務を把握し、社内の監査担当者は、改訂版に対する評価を実施する為の準備を整える意味で、教育訓練を受けることが必要となります。」

内容が確定し、改訂版が発行された後、企業では認証取得に向けて、QMSに必要な調整を加えていくことになります。つまりプロセス及びシステム関連文書の改訂を行い、改訂版の要求事項を満たすように対応を進めていきます。まずは実施計画を策定し、上述の手順を考慮することから始めてみてはいかがでしょうか。



Terrance Holbrook
マスターコントロールの医療機器業界向けSenior Product Managerであり、製品の設計、開発及び製品の特徴や機能に関するマーケットリサーチを担当しています。2014年にマスターコントロールに入社する以前は、包装やラベル関係の製造業者の事業運営担当の副理事長を務めていました。製造業における経験は18年以上、医療機器の商品開発においては6年の経験を有しています。Certified Six Sigma Black Belt及びISO 9001:2008 Lead Auditorに加え、リーン生産方式(Lean Manufacturing)及びTQM(総合的品質管理)の資格も保有。Project Management Institute (PMI)のメンバーです。Kaplan Universityでは経営管理学の学士号を修得、Westminster College Gore School of BusinessではMBAを修得しています。


【参照】

(1) "ISO 9001 Quality Management Systems Revision," International Organization for Standardization. http://www.iso.org/iso/iso9001_revisionhttp://www.iso.org/iso/iso9001_revision

(2) "Technical Bulletin: ISO 9001:2015 – Introducing the Changes," BM TRADA, November 2014. http://www.bmtrada.com/getmedia/0e0d4c99-558a-47b0-96c1-1d7de3b2f5ba/ISO9001-2015-Introducing-the-changes.aspxhttp://www.bmtrada.com/getmedia/0e0d4c99-558a-47b0-96c1-1d7de3b2f5ba/ISO9001-2015-Introducing-the-changes.aspx

(3) "Transition Planning Guidance for ISO 9001:2015," International Accreditation Forum, January 2015. http://www.iaf.nu/upFiles/IAFID9Transition9001PublicationVersion.pdfhttp://www.iaf.nu/upFiles/IAFID9Transition9001PublicationVersion.pdf



本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年5月26日火曜日

第6回 医療機器 開発・製造展 MEDIXへ出展


マスターコントロール株式会社( 本社:東京都品川区、代表者:代表取締役 チャド・フォックス、以下マスターコントロール) は、2015年6月24日から3日間、東京ビッグサイトで開催される第6回 医療機器 開発・製造展 MEDIX(メディックス)に出展いたします。本年のMEDIXでは、マスターコントロールのパートナー企業であるアズビル株式会社、富士通株式会社と共同出展の予定です。

第5回 医療機器 開発・製造展 MEDIX(メディックス)
主催:リード エグジビション ジャパン株式会社
展示会Webサイト:http://www.medix-tokyo.jp/ja/

iPhoneやiPad、他アンドロイド端末でMasterControlのシステムが利用できる新製品「MasterControl Mobile™」を始め、様々な製品紹介を予定しています。また、マスターコントロールのブースでは、海外からのご来場者様のために、英語での製品紹介にも対応しています。


【ご紹介予定の製品】

  • MasterControl All Access™ :MasterControlの全9製品がパッケージされたソリューション
  • MasterControl Audit™ :世界の製薬会社トップ20社の半数以上が採用した監査業務管理ソフトウェア
  • MasterControl Documents™ :Part11対応、品質管理を中心に様々な文書を管理
  • MasterControl Process™ :苦情管理やCAPA、有害事象報告などのプロセス管理
  • MasterControl Training™ :医薬品や医療機器、ISO規制環境に特化した教育管理ソフトウェア
  • アドオンなど


【出展の見どころ】

信頼性保証業務の管理をウェブアプリケーションで実現したMasterControl Audit、タブレット端末を使用した最先端の電子化品質マネジメントシステムのデモ、またFDAのQMSソフトウェアとして採用されたマスターコントロールの様々な機能の紹介・デモを行っています。


【製品展示ブース】







プレゼンエリアでは、製品紹介の他、規制・規格に関わるガイダンスも予定していますので、ご来場の際はぜひマスターコントロールブースへお立ち寄りください。


マスターコントロール株式会社について

MasterControl Inc.(マスターコントロール米国法人)は、日本をはじめとする諸外国企業の競争に対応し、アメリカの製造業界において「品質マネジメントの標準化」採用の動きが広がった、1993年に設立されました。

設立当初は、社名をDocument Control Systems(DCS)とし、その名は品質マネジメントシステム関連の国際規格ISO 9000シリーズ(第一版1987年制定)の規格要求事項に対応するソリューションであるDocument Control Systemsが由来となっています。

マスターコントロールのソリューションは、製造業に限らず、コンプライアンス業界全般に対応しており、米国食品医薬局(FDA)など500社以上のお客様に組織全体の品質管理・保証を支援するソリューションとして採用されています。また、世界の製薬会社トップ20社の半数以上に、文書管理(MasterControl Documents™)や教育管理(MasterControl Training™)、品質イベント管理(MasterControl Process™)、品質保証向けソフトウェアであるMasterControl QAAD™等、計9種類のソフトウェアを提供しています。

現在のマスターコントロールは、アメリカ本社をはじめ、イギリス、ドイツ、そして日本の4拠点から世界中の様々な企業へソリューションを提供しており、グローバル展開に不可欠な国境を越えたソリューションとして、またQA(品質保証)をはじめ、組織全体をサポートする品質管理システムとして、多くのお客様からご利用いただいています。

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2015年4月27日月曜日

教育管理で発生しがちな5つの問題点

Cindy Fazzi
MasterControl Inc.


多くの企業では、品質の概念は電子的な方法ではなく、主に紙媒体で明示されていると思います。あなたならどちらの方法を使用しますか?

規制対象企業である場合、品質基準を書面で掲げているだけでは不十分だということはご存知だと思います。実際に実施し、日々の業務への統合が必要であり、また、監査機関に対して基準や方針が正しく機能していることを証明しなければなりません。

製品管理ディレクターであるMasterControl(1)のDave Hunter氏の言葉を借りれば、「教育とは、品質を理論から現実へと転換させる一助となるものなのです」。
「効果的な教育は企業の品質管理戦略上の基礎部分となるもので、多くの品質問題の発生を防止するものとなるでしょう」。

それでも、大部分の規制対象企業において、品質は教育にではなく、紙を基本とした方針、SOP、作業手順書、マニュアルやその他に表現されています。

規制対象企業と長らく仕事をした経験から、Hunter氏は教育管理における5つの問題点を挙げています。これらの問題点は、自動化されたシステムを採用していない企業で拡大されてしまいます。



                                              
本記事に関連するホワイトペーパー
How Effective Training Management Can Help You Prevent Quality Issues. 


【1】規模と複雑さのマイナス影響

企業には、通常、その事業のさまざまな領域のSOPが定められています。例えば、企業に100人の従業員に適用される12のSOPが定められている場合、このグループの従業員だけで合計1,200もの教育タスクがあることを意味します。更に企業が紙ベースまたは複合型(一部紙媒体及び一部電子媒体)または自社製システムを使用する場合には、この労力は二倍となります。電子メールによる教育資料及びタスクの送信、スプレッドシートによる出欠及びタスク完成の追跡、対面やオンラインによる教育や試験の実施といった作業が伴います。

2】教育に繋がっていない文書改訂

通常、文書やプロセスが変更されると、更新したプロセスに対する再教育が必要となります。文書改訂手順が教育管理に繋がっていない場合、問題を見逃しやすくなり、従業員が旧SOP、マニュアルやその他文書の理解に基づいて職務を遂行してしまう可能性があります。この問題は、文書改訂と教育管理に紙ベースのプロセスまたは異種のシステムを使用する企業で一般に起こりがちです。

【3】不必要な事務上の負担

教育コーディネータは、通常、カリキュラムの作成と準備、教育プログラムの実施を行っています。手動のプロセスでは、大部分の時間とエネルギーが、教育管理の分配、フォローアップ、エスカレーション及びトラッキングに費やされます。また、これと同じくらいの時間が、試験実施、結果の検証、教育管理完了のトラッキングに費やされます。

4】監査及び査察の準備ができていない点

顧客または規制当局担当者による監査の観点から、教育に関し最も重要視されることは、規制に対応する教育記録をとっているかということです。監査員が組織図を見て、無作為に従業員の教育記録の提示を求めた場合に、準備ができていない企業が多く見受けられます。

【5】効果的ではない適格性評価

適格性の評価には注意が必要となる部分があります。多くの企業は、教育プログラムの本質をとらえるテストの作成や実施という点で失敗しています。手動のシステムでは、教育コーディネータは、日常的な業務に大きな労力を費やしているため、カリキュラムの内容に集中する時間がほとんどありません。


【教育コンプライアンス】

教育は、製品品質と安全性に欠かせない要素となっています。だからこそ、さまざまな基準及び規制(製薬企業向けFDA 21 CFR Part 820.25、医療機器メーカー向けFDA 21 CFR Part 820.25及び一般製造業者や他の企業向けのISO 9000 2000)では、良質な管理システムの一部として教育が要求されるのです。

企業がゼロから教育管理を確立しようとしているか、既存のプロセスを改善しているかどうかに関わらず、教育要求事項を全体のコンプライアンスや経営目的と統合しなければなりません。手動または自社製のプロセスを使用している場合は、自動化したシステム(2)への切り替えをご検討ください。教育の土台を選択する際に、最新技術をご活用ください。教育管理の確立及び維持に費やす時間、労力及びリソースは、長い目で見ると作業に付加価値を与えるものです。


【参照】

(1)Dave Hunterは、2002年にMasterControlに入社。彼の広範囲な技術経験は、マイクロソフト、ED、インテル及びTenFoldなど20年以上にも及ぶ。Brigham Young Universityから電気工学学科学士号及びMBAを取得。

(2)MasterControl Training及び教育管理の自動化及び合理化について詳細をお読みになりたい方は、http://www.mastercontrol.com/training_software/にアクセスしてください。


Cindy Fazzi
MasterControlユーザーを対象とするMasterControl Insider(毎月発行)のエディターを務める。主にライフサイエンス業界及びその他の規制対象環境について執筆。オハイオ及びニューヨークのAP通信社における経験は、新人ニュースリポーターから始まり、ライター及びエディターとしての20年に及ぶ。Ohio State Universityのジャーナリズム学科で修士号を取得。



本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年4月20日月曜日

リスク管理結果の評価

Rod Farrar
Director, Paladin Risk Management Services


Dr. Alan McLucasの著書「Decision Making:Risk Management, Systems Thinking and Situation Awareness(意思決定-リスク管理、そして状況認識)」からリスク管理のパラドックスについての概念をご紹介いたします。

「効果的なリスク管理業務というのは、典型的なパラドックスに振り回されてしまうものです。つまり、日常的にリスクが効果的に管理されていると、不測の出来事は非常に稀にしか発生しません。そのため慎重なリスク管理行動がどれだけ効果的であるかについて、誰も気付かないものなのです。管理担当者の肩をたたいて非常によくやったとは誰も褒めてくれません。しかしその正反対に、十分にリスク管理されない場合、一同が異口同音に非難するのです。」

組織のリスク管理者とは報われない業務である---きっとそんな風に感じたことがありますよね?

このパラドックスは、非常に重要な2つの見解をもたらしています。まず、なにより明白であるのは、組織のリスク管理担当者であるということは、報われない業務を行うことだということです。お褒めの言葉を頂戴することなど滅多にないことですし、逆に成果が結果通りに得られない場合には、最初に厳しい目にさらされるのです。第2の見解として、組織は、リスク管理の成果やリスク管理が組織に与えている価値の評価に慣れていないと考えます。

リスク管理が組織にもたらすメリットを評価することは難しい課題であります。こうした難題の解決には、リスク管理の実績評価にあたり広範囲な要素を考慮する必要があります。
評価は次の3つの分野に分けられます。

a.法令順守:組織が自社のリスク管理方針の指示に従っているかについて評価。

b.定着度:業界のベストプラクティスに対する組織のリスク管理プログラムの定着度を評価。

c.付加価値:組織の目的の達成度及び成果の一因となっているリスク管理の貢献範囲を評価。



本記事に関連するホワイトペーパー:



【法令順守】

組織のあらゆるプログラムと同様、リスク管理プログラムも順法監査の対象となります。この監査は、組織のリスク管理方針に詳述される基本的な要求事項の順守を確実にすることを目的としています。

一部の組織では、リスク管理方針の順守に関する評価は単なる評価にすぎません。リスク管理プログラムの実績を方針の順守に限定しているような場合には、根本的な欠陥があるのです。

リスク管理方針の要求事項すべてを100%順守しているものの、リスク管理が効果的な成果を生じていないケースも実際に考えられるため、注意する必要があるのです。


【定着度の評価】

組織のリスク管理体制の確立における第一ステップは、既存の管理プロセス及びシステムを評価することです。組織のリスク経営管理プロセスの現状を理解するのに最も有効な手段は、リスクマチュリティ評価を実施することです。

Paladin Risk Management Servicesが実施した評価結果を以下に示します。

組織は、リスクマチュリティに関する経時的変化の向上に取り組むべきだと考えます。






【付加価値】

法令順守及びリスク管理プログラムの定着度の評価は絶対的に不可欠なものである一方で、リスク管理が組織の目標達成の一因となっていることに多くの組織は関心を示していません。

皮肉なことに、組織で現在評価されているリスク管理の実績を示す評価基準を使用すれば、リスク管理の貢献度を把握することができるのです。

組織がリスクマチュリティの改善を継続的に行う場合、こうした評価基準に基づく実績も向上していきます。直線的関係を得られることは決してありませんが、リスクマチュリティが増大すれば結果的に実績も向上します。

次の図は、これを可視化した数値指標です。












これらの図表を具体的に説明すると、組織がリスクマチュリティを基準に従って評価する際には、同時に実績の評価に対しても基準に従って評価する必要があるということです。

しかしながら、これは精密科学ではないため、直接的に関係性を証明するのは不可能であることを理解しなければなりませんが、リスク管理の改善と実績の向上には非常に良好な相関関係が明らかになっています。

リスク管理の成果を評価する場合、これこそが企業が最も強く望んでいることなのです。

(※Paladin Risk Management Servicesから著者の許可を得て複製。)


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Rod Farrar
オーストラリアでリスク管理に関するトレーニング及びコンサルティング・サービスを提供するPaladin Risk Management Services社のDirectorを務める。Paladin社の主要なトレーニングであるDiploma of Risk Management and Business Continuity、Advanced Diploma of Governance, Risk and Complianceには、オーストラリア全域及びインドネシア、ニュージーランド、パプアニューギニア、ソロモン諸島から300名以上が参加する。連絡先:rod@paladinrisk.com.au


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2015年4月16日木曜日

FDA査察 vs EU査察:類似点と相違点

Marie E. Dorat, CQA, CAA
IPRF, LLC
RA/QA Consulting & International Product Registration


【EU-FDA共同イニシアチブ】

米国食品医薬局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)によるGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)イニシアチブは、2009年9月に査察共同イニシアチブをスタートさせました。この査察プログラムは、米国及び欧州連合(EU)の治験実施施設、治験依頼者及び医薬品開発業務受託機関(CRO)を対象としたものです。

GCP査察共同実施は、欧州委員会、欧州医薬品庁(EMA)及びFDAの3機関で締結されています。このイニシアチブにより、査察及び所見に関する情報の共有化が整備され、共同査察の円滑な実施が可能となります。最終的な目的は、欧州連合(EU)及びFDAの査察官が同一施設に関して同じ情報を共有することです。


【では、ここで求められているものとは何なのでしょうか?】

FDAによる治験実施施設の査察は、医薬品、生物製剤または医療機器など製品固有な内容で実施されます。治験分担医師は、具体的には21 CFR 312(Investigational New Drug Application)及び21 CFR 812(Investigational Device Exemption)の規制を含むFDA規則を順守しなければなりません。治験依頼者、CRO及びモニターが対象の査察の場合には、治験依頼者やCROによって実施された業務と手順についてFDAへの申請で定めた内容との比較が行われます。


                     
 本記事に関連するホワイトペーパー
Managing Change Control to Comply with FDA and EU Regulations


EUの場合、監督はEMAのGCP査察実施部門(GCP Inspection Services Group)が担っています。EMA査察は、部門からの要求時、特定製品への関心が高い場合や、あるいは単にGCP要求事項への順守を確認するために実施されます。査察官は、共同実施イニシアチブを通じて加盟国間での整合性を図り、欧州諸国間において治験に対し認知される取り決めとの適合性を確認します。EUにおける臨床試験実施要求事項には、GCP、GMP(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)及び査察が含まれており、臨床試験指令(指令2001/20/EC)、GCP指令(指令2005/28/EC)及び関連するガイダンスにより実施されます。


【査察準備】

担当者の準備という観点から、模擬査察を実施されることを強く推奨します。ICH/GCP Consolidated Guidanceを使用しての包括的なチェックリストの作成、特に必須文書(Essential Documents)に関するチェックリストの作成について検討すべきだと思います。

  • 施設におけるすべての証拠資料(Documentation)の確認
  • 担当者とのGCP要求事項及びプロトコールの確認
  • 治験依頼者やIRBから適切な認可をすべて取得しているかの確認
  • 限移譲に関する責務の対応がなされているかの確認
  • 証拠資料(Documentation)に対する正確性及び法令順守の観点からの確認
  • 矛盾の有無を確認し、修正可能な場合は修正、この時点で修正できない項目は明確化を図る(通常は“Note to File”)。
  • 記録の欠落の特定
  • 可能な場合、未解決の問題や未処理の問題を解決
  • 原資料と症例報告書(CRF)の入力値を比較し、データ入力の正確性を確認
  • 薬事関連ファイルを見直し、現行の必須文書が含まれていることを確認
  • 同意取得を得るための同意説明文書フォーム及び手順の確認

 模擬査察では担当者と実際に面接を行い、誰が何について説明するか決定します。質問に対する回答の練習を行ってみてください。査察官からの質問事項に対する回答内容について話し合い、次の事項について徹底していきます。

  • 簡潔であること。問題とされている内容に対してのみ回答する。
  • 回答は正直かつ率直に。
  • 任意の情報提供は行わない。
  • 推測や憶測を述べない。
  • 議論しない。

査察の通知を受理したら、査察の準備に取り組みましょう。行動順序を考え整理していきます。

  • 査察官用に個室を予約。
  ◦ 治験に登録した全被験者の診療記録及び症例報告書が利用できるように準備します。 
  ◦ また必須文書ファイルも用意しておきましょう。


  • 査察官が到着するまでに適切なファイルにアクセスできるように、コンピューターの設定を行う。

  ◦ アクセス制限のかかった一時的なパスワードを設定し、利用可能な状態にしておきます。
  ◦ データベースの内容に関するクィックリファレンスガイド(早見用手引き)を準備しておきま
    しょう。


  • 近くにコピー機を準備する。


【査察当日】

FDA査察官が身分証明書及び署名のあるFDA Form 482(Notice of Inspection)原本を監査対象企業の一番の責任者(通常管理責任者)に提示し、査察が開始されます。一方、EUの場合、査察開始時に提示するために発行される公式文書はありません。その代わりに、オープニングミーティングで査察の目的、期待内容、必要な文書や面接が必要な担当者などについて、口頭で説明が行われます。

FDA及びEUの査察官はいずれも、企業から要求される文書への署名義務はありません。FDA査察官は、FDAのフォーム以外のものへは署名しないように指示されていますが、こうした要求は書面による施設査察報告書(EIR)への報告の対象となります。この点に関してはEMAもFDAと同様です。

FDA査察官及びEU査察官の両者は施設の確認を行い、リソース、要員、また施設全体が実施予定の治験に対し適切であるか否かを確認し、評価するための質問を投げ掛けます。見学の際には、手順書及びその他の文書(製品保管場所の温度管理/記録など)が求められる場合があります。

EU査察官は、要求し受領したすべての文書の追跡記録を保持します。すべてのリクエストが文書により記録されていることを確認する目的で、この文書は査察実施施設へ提出されます。一方、FDAの場合には文書の正式な要求は口頭のみで行われます。引き続き査察官に立ち会い要求、質問事項及びコメントをすべて記載する担当者を決めます。また、査察官に提示する全ての文書に『Confidential』のスタンプを押してください。可能な限り、査察官に提示するコピーから被験者の識別情報は削除しておきます。


【査察終了時クロージングミーティング】

査察の終了時に、FDA査察官から書面によるFDA Form 483(List of Objectionable Conditions)が被査察施設に渡されます。これは査察時の重要な査察所見の報告書であり、製品やプロセスに関連する重要な所見や、FD&C法及び関連法への違反の有無が記されています。FDAの場合、重要且つ認可対象の製品または被査察プロセスに関連する所見のみがリストされます。前回査察時の所見が修正されていない事項や、再発している事項がある場合にはFDA-483に記載されます。

EU査察官の場合、査察の終了時に問題ありと判断された所見の書面によるリストは提示されず、その代わりにクロージングミーティングにおいて口頭で所見に関する説明が行われます。EMAからは、各被査察施設に対し査察報告書及び総合査察報告書(IIR)が提供されます。監査報告書は、英語で作成されます。施設査察では、治験実施者と治験実施責任者に報告書の写しが提供されますが、CRO/治験実施責任者の査察は被監査組織にのみ写しが提供されます。

クロージングミーティングでは、査察官からのコメントや査察官との協議内容をすべてメモします。監査の際の是正事項については説明を行ってください。所見についての査察官の解釈に異議があれば話し合ってください。可能な限り、どのような問題も査察官と対面している間に明確にしておきましょう。明確、正直、そして万全な準備というキーワードを忘れないでください。



Marie E Dorat
法令順守/維持に取り組む企業を支援する薬事/品質管理コンサルティング会社IPRF社のCEOを務める。IPRF社は、国際製品登録書類の合法化にかかる時間を2か月から2~5日に短縮するといった費用効果に優れたシステムを提供し、競合他社よりも一歩早い製品の市場投入を実現する支援を行っております。医療機器及び生物薬剤/製薬業界における品質管理の現場でその専門スタッフとして13年間在籍。品質管理システムに関する並外れた知識と規制に関する高度な専門知識を備え、さらに、バリデーション、ギャップ分析、CAPA、変更管理、監査及びトレーニングにおいて豊富な経験を有しております。cGxPsガイドラインの順守、ISO規格、国際的な規制への順守を確実にし、クライアント品質管理システム/eQMSを開発、適用し、運用しています。360Predict eQMSシステムのSMEも務め、その開発を支援しています。


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2015年3月30日月曜日

ISO 9001:2015改正への対応

Christopher Paris
Operations, Oxebridge Quality Resources


ISO9001次期改正は2015年内の予定であり、これまでの版よりも大きな論議を呼ぶことが予想されています。
ドキュメントは現在、国際規格原案(DIS :Draft International Standard)の段階でほぼ固まっており、最終案に向けた作業での変更はほとんどないと思われます。

改正対応に大きなプレッシャーを与える内容の記事をインターネット上で見かけますが、変更内容は我々が考えるほど大幅なものではありません。
現行の2008年版と文字数だけを比較してみた場合、新規要求事項はなく、74%は単に既存の要求事項の文言の変更であり、残りの20%はISO評議会からの新規要求事項、6%はTC176による新規文言となっています。

「ISO9001:2015への移行」に向けて多額の費用を費やしたくない企業にとっては朗報かもしれませんが、ISO9001が21世紀に対応する、より近代的な規格へと進化することを期待する企業にとっては、朗報とは言えません。


【Annex SL】

要求事項のテキストは、ISO専門委員会(TC :Technical Committees)の運営手順に関する全要求事項を定めた「Consolidated Supplement(総合版ISO補足指針)」と呼ばれるISO専門手順書に従って作成されます。発行は、TCの全活動の監視組織であるISO技術管理評議会(TMB:Technical Management Board)が行います。
通常、TCはISO規格のみ発行できることになっていますが、ISO加盟国の代表でTCが構成されていることから、2009年にTMBはISO9001や14001などすべてのISOマネジメントシステム規格の共通要素である「章立て(High Level Structure)」を定めたISOガイド83の作成に乗り出しました。
ガイド83(案)は最終化されることがなかったため、TMBはその後、異例(かつ水面下)ながらガイド83の用語をAnnex SLとして総合版ISO補足指針-ISO専門手順に組み入れました。これによりTMBはTCの代表者の合意なしで、TCに旧ガイド83の規定を採用させることとなりました。

従って、TC176ではAnnex SLを変更することなくその構造や用語を導入することが求められ、新しいAnnex SLの番号設定に合わせてISO9001の条項を再構成するのに多くの時間が費やされました。
2015年発行というISOからのプレッシャーに加え、直接顔を合わせる例会の実施回数も極めて少なかったことから、TC176ではISO9001に対し品質マネジメントの新しいベストプラクティスや最新の進展を考慮するには、とにかく時間が足りない状況でした。


【リスク思考(Risk-based Thinking)】

ISO9001へのリスク概念の導入には、多くの解釈があります。TC176の偏った解釈とは対照的に、リスク概念の導入はユーザーの声から生じたものではありませんでした。
ISO9001ユーザーの要望に関して実施されたユーザーサーベイでは、リスク概念の導入は第5位でしたし、このサーベイが終了する約1年前にはすでにTC176にAnnex SLが義務づけられていたことになります。

社内にはリスクマネジメントの専門家はおらず、TC176はタイトなスケジュールの下でこの複雑な分野の調査に行き詰まり、それを打開できずにいました。
「リスク思考」という概念は、TMBからのリスクの組み入れに関する指令に対応したものであると同時に、これまでの是正措置用語の問題を解決するために考え出されたものでもあります。
ここで問題なのは、「リスク思考」というものが既存のリスクマネジメント領域に存在しておらず、さらにリスクに関する専門的な知識体系にもない概念であり、TC176が何の根拠もないところから考案されたものということです。
その結果、リスクに関する要求事項では、実質、何も要求していません。記録、手順、プロセス、リソースに関する要求事項がないのです。これはリスクマネジメントではないとさえ明確に述べているのです。
単にリスクについて考えることが要求されており、企業ではすでに実施されています。ISOに設置されたリスクマネジメントに関するTCに所属する委員が「リスク思考は音声のボトルを販売するようなものだ」とコメントしたことがあります。

ただその前に、GCPについて簡単に触れたいと思います。残念なことに、米国規則ではGCPに対しては、GLPまたはGMPほど白黒はっきりとした区別がありません。生データの定義さえも明確にされていない状態です。手短に言えば、GCPとは「販売承認に関する法令基準を満たすことができるデータ」を提供し、治験責任医師に対し「十分かつ正確な病歴」の維持を要求するものであります。新薬の製造及び販売を可能にする意思決定を裏付ける目的でヒト対象者から得た信頼性の高い試験施設データは、非臨床及び製造の試験施設データと同じデータの完全性という特性を有するべきであるということにご同意いただけると思います。

上述以外に議論の的となっているのは、「ポジティブリスク」の概念で、ネガティブリスクと同様の取り組みをISOは組織に期待しています。
ポジティブリスクという概念は、リスクマネジメント専門家のあいだでは意見が二極化しており、製品安全や金融・保険の専門家のあいだでは拒絶されています。
それでもISOがポジティブリスクの推進派であるため、現在のISO9001規格ではひとつの要素となっているのです。


【その他の改正】

その他の重要な改正は次のとおりです。

  • 組織の構成――これはISOへの適合性を理解する前に、企業に自社の組織構成を把握するよう強く要請する歓迎すべき変更点です。
  • 人的要因――明確に表示されているわけではありませんが、作業環境におけるこの新しい用語は、企業に対し職場内での「社会的・心理的」要因の管理を求めています。つまり、品質管理担当者や監査員は一夜の心理学者にならざるを得ないような惨事も起こりかねません。
  • 変更管理――最終的に、管理された方法でプロセス変更の実施を確実にすることという用語をISO9001に追加しています。
  • 文書化された情報――TC176は「文書」と「記録」をどうした理由からかひとくくりにして「文書化された情報」としています。現在、ISO9001が求めているものは文書なのか記録なのか、あるいは何の管理規定がどれに適用されるのかさえも不明確です。TC176からは偏った見解が述べられていますが、文書管理規定では印刷物を綴じて保管する方法や署名がいまだ好ましいものとされています。Wikis、SharePoint、Confluenceなどの最新ツールに移行している企業にとっては、適合への対応は困難となるでしょう。
  • 組織的な知識――リスク思考と同様に新規要求事項であり、また「知識」とは何であるのかが定義されていないことから、TC176がここで何を要求しているかは不明確です。
  • ドキュメンテーションの削減――いろいろと言われていますが、TC176は文書化については表現を変えるに留まり、廃止はしませんでした。明確に手順を要求する代わりに、「定義する」という単語をいたるところで使用していますが、書かずにどのように定義するのか疑問です。依然、TC176は「包括的」と「曖昧さ」を混同しているのです。

【不足点について】

  • 圧倒的ハードウエアバイアス――サービスプロバイダーはISO9001を引き続き敬遠すると考えられるため、代わりにCMMIや別の規格を実行する方向性が強まっていくと思われます。TC176はこの問題には解決の糸口がないとし、すでに規格を分割する必要があります。
  • プロセスと目的がリンクしない――規格では、品質目標とプロセスが堅固に結びついていないため、プロセスアプローチはいまだ紛らわしいままです。せっかくの好機を逃してしまいました。
  • フレキシブルなデザインモデル――ISO9001は現在もAgileなど多くの最新モデルとは相反する設計及び開発モデルを要求しています。まるで1950年代から抜け出せないかのようです。

【生き残りをかけて】

幸いなことに、新規格には曖昧で不完全な概念がたくさんあり、企業はいかようにも解釈することができます。ISO9001:2015のもとでは、企業が生き残る重要な鍵は「調整力」にあるのです。

中身のない品質管理マニュアルを作成するよりも、ISO9001要求事項の解釈を条文ごとに定義する方針文書を作成すべきです。単文でも構わないので方針を作成したら、次にこれを支持する手順を示します。これらは従来の品質管理マニュアルのようですが、まったく別のもののように見えます。こうした文書は、トレーニング用として、また何より第三者監査員への提供用として役立ちます。

このようなポリシーステートメント(方針要綱)は、企業のプロセスに沿ったものであるべきで、各プロセスは必ず(多くではないにせよ)いずれかの要綱と対応させます。次に、各プロセスの目的(プロセス毎に最低1つ)を決め、これをポリシーステートメントの裏付けとし、各プロセスの効果を評価することが可能となります。不明確なプロセスマップや忌まわしいタートル図を処分する良いタイミングかもしれません。

次に、企業独自の解釈に関して問題に遭遇した場合、特に認証機関の監査員から異議があった場合には、企業の意見を主張する必要があります。解釈上の不一致がなく実際の要求事項に厳密に沿っていることを認証機関(CB)の監査員が理解すれば、企業による解釈を受け入れるはずです。これまでは企業がCBに対し解釈のガイダンスを求めていました。つまり後ろ向きだったのですが、認証機関は企業による解釈を評価する機関であり、認証機関の解釈を評価するものではありません。

最後に、CBとの間に避けられない衝突が発生する状況においては、企業は自社の主張や抗議を行い、抗議をエスカレーションする権利を行使する準備が必要です。CB業界では、監査員のトレーニングに経費をかけることを嫌がり、特にリスクマネジメントに関する複雑な分野に関しては、今すぐに着手することはないでしょう。企業は再度自社の解釈に関するドキュメントを示し、問題に遭遇した場合には意見を主張するのです。企業は、これまで以上に監査員の規定を定めたISO17032及びISO19011を読み込む必要があり、身を守るためにいつでもこの規定を使えるようになっておかなければならないのです。

結果的には、企業のプロセスに適切に対応し極めて優れた最終製品やサービスを保証するプロセスをより効果的に評価する、より根本的な品質マネジメントシステムが構築されます。しかし、これらはすべてISO9001のためではなく、ISO9001とは無関係に生じるもので、TC176が国際的に発信した大きな欠陥のある曖昧な用語を大いに活用することに依存しています。
ISO9001:2015に備えてあなたの会社ではどのようなことをしていますか? どのようなことにお困りでしょうか?
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Christopher Paris
化学製造業界にて勤務後、現職はOxebridge Quality ResourceのVP Operation、またISO9001及びAS9100のエキスパートであり、ISO TC176 米国技術諮問グループ前主任監査員も歴任しています。Oxebridgeは、SpaceX、Lufthansa、Northrup Grumman、L3、JetBlueとも取引があります。また、Christopher Parisは世界唯一のISO9001のパロディーであるEyesore 9000を書いた風刺作家であり、そのダウンロード数はほぼ2万5千回に達しており、規格対応に携わっている企業の権利に関する熱心な提唱者として世界的に活躍しています。お問い合わせは、www.oxebridge.comからアクセスしてください。


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