2017年11月27日月曜日

CFDAにおける医療機器ソフトウェアに関する規制

医療機器のソフトウェアへの依存度の高まりを踏まえ、
ソフトウェアに対する規制要件は一段と
厳しさを増していくものと考えられます
Beth Pedersen
Marketing Communications MasterControl


各国、各産業を取り締まる規制当局が数多く存在するなか、世界の法的環境や規制要件の改正・改変をすべて把握するということは製造業者にとっては難しい課題です。中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は、医療機器関係ソフトウェア登録技術審査指導原則(2015年第50号通知)を2015年8月5日に発表しました。この原則は、中国語版のみの提供で、医療機器メーカーあるいはそのパートナーが開発したスタンドアロンソフトウェアあるいはソフトウェアコンポーネントに関する文書作成要件に関する大幅な変更が示されています。

中華圏UL Medical Regulatory Advisory Services (MRAS)シニアマネージャであるTim Lin氏は、規制が世界的に変化していることを製造業者が把握できていない場合に起こりうる結果として、設計の不備、要件を満たすソフトウェア文書を作成することができないプロセス、また最悪な例としては申請の棄却を挙げています。

医療機器メーカーが新しい要件を理解し必要な措置を講じることができるよう、同氏はUL paper内で新しい原則について説明を行い、中国国内の機器メーカーに対し、販売承認申請書提出の際に実施すべきことについて3つの提案をしています。




改正の概要

新しい規制にはCFDAの現行の考え方が盛り込まれ、2012年4月28日発令のガイダンスに基づき策定されています。ソフトウェアのアップデート版や修正版登録に関する要件と併せ、文書要件に関し、より詳細な要件が示されています。

CFDAは、ソフトウェアの安全性及び有効性を確保するうえでは、開発段階においてリスクマネジメントや品質保証、ソフトウェアライフサイクルプロセスを適用することが重要であるとの考えを示しています。医療機器で使われるスタンドアロンソフトウェアの一部やコンポーネントとして使用されるOTSソフトウェア、完全採用型のOTSソフトウェアにも、2015年第50号通知に定められる新しい要件が適用されます。


基本前提事項

ソフトウェア安全性分類クラスA、B、Cの割り当てを受けるうえで、申請者は、登録時に次の情報を含むソフトウェアの説明書を提出します。

  • 基本情報‐ソフトウェアの識別、安全性上の分類、アーキテクチャドキュメント及び設計図、ハードウエアトポロジー、動作環境、使用目的、禁忌、登録履歴
  • 導入プロセス‐開発の概要、リスクマネジメント、要件仕様、ライフサイクル、ベリフィケーション&バリデーション、欠陥管理、改訂履歴、臨床評価
  • コアアルゴリズム

適用されるソフトウェアの安全性分類に応じて、必要な書類の分量や内容が異なります。


新たに追加された事項―ソフトウェアアップデート

ソフトウェアアップデートは、現行の規制では文書化が義務づけられており、CFDAによる審査の対象となります。医療機器の安全性及び有効性に影響がある大幅なバージョンアップ(適応保守及び完全化保守など)と、それらに影響がない軽微なバージョンアップでは、規制上の取り扱いが異なります。ソフトウェアの大幅なバージョンアップの場合、医療機器メーカーは修正版としてCFDAへの申請が必要ですが、軽微なバージョンアップであれば品質管理システムの一環として文書化が義務付けられるものの、許可更新時または修正時にCFDAによる審査が実施されるのみとなります。

2015年第50号通知ではまた、ソフトウェアバージョンやOTSソフトウェアの文書化要件ならびに、ソフトウェア及びソフトウェアコンポーネントの登録要件についての概要が示されています。


ULからの3つのアドバイス

中国での有害事象発生リスクの増加をうけ、CFDAはより厳しい医療機器規制を作成し、対応策の一環としています。規制要件は幅広い範囲での医療機器ソフトウェアを取り扱っているため、新しい原則への取り組みが困難になることが予想されます。ULでは、2015年第50号通知を満たすために以下の提言を掲載しています。

  • 製品設計段階において規制要件に準拠するソフトウェア開発プロセスを導入すること。
  • 開発段階におけるソフトウェア開発活動をすべて文書化すること。
  • ソフトウェア設計が終了するまでに、規制要件に基づいた文書作成を完了すること。

最終的には、頑健なソフトウェアライフサイクルプロセスで文書化をしっかりと行うことが、審査時間を短縮し医療機器の市場導入を早める鍵となります。

Lin氏によるCFDAの新しい医療機器ソフトウェア要件の詳細をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてUL paperにアクセスください。

UL社は46か国に事業所を設け、製品の安全性および適合性試験のエキスパートとしてグローバルにサービスを展開しています。ULの専門チームは、新しい規制要件の理解や、社内薬事業務チームにかかる負担の軽減など、規制対象企業の皆様を常にサポートいたします。詳しくはhttp://ul.com/まで。


著者の紹介
Beth Pedersen
ユタ州Salt Lake CityにあるMasterContorl本社のマーケティングコミュニケーションスペシャリスト。
マイクロソフト社、ノベル社、NetIQ社、SUSE社、Attachmate社含む企業ソフトウェアサイトで技術やマーケティングに関する執筆活動を行っている。University of Wisconsin, Madisonでライフサイエンスコミュニケーション学士号、およびIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を修得。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2017年11月20日月曜日

UDI(機器固有識別子): ルールが十分であるとはいえない現状

FDAがUDIの形式及び内容に関する
ドラフトガイダンスを発表

Jennifer D. Newberger
Hyman, Phelps & McNamara, P.C

医療機器(クラス II)へのUDI適用が義務付けられる期日の2カ月前である2016年7月26日、UDIの形式及び内容という最も基本的な概念に関連したドラフトガイダンスが発表されました。具体的には、業界及びFDA認定の発行機関に対し、UDIの形式及びその内容を「明確化すること」及び「UDI発行システムから生成されたUDIが、ルールに準拠していることをより確実なものとすること」を目的とすることが述べられています。

2013年9月にUDIルールが最終化されるとまもなく、第一号となる発行機関がFDAによって認定されています。それ以降、発行機関は、製造業者と協力してクラス III及びクラス IIのUDI発行に関する取り組みを実施してきました。不適合とみなされるUDIが発行されていることをFDAが認識しているといった記載はドラフトガイダンスにはありませんが、それがこのドラフトガイダンスの含意ではないかと思われます。例えば、ドラフトガイダンスには「FDA認定各UDI発行機関は、UDI付与を目的とするシステムの開発及びオペレーションに際し、製造業者がFDA認定発行機関のシステムを使用することにより、UDI表示要求事項に準拠するUDIを作成することが確実となることが至って重要である」という内容が示されています。



ウェブセミナー: Working on a Post-Inspection FDA 


認定UDI発行機関からUDIを取得済である製造業者には、ドラフトガイダンスにおける上記内容が、UDIの表示要求事項を満たしていないUDIが実際に発行されていると読み取れることから、不安を抱くこともあるかもしれません。しかしドラフトガイダンスでは、製造業者に発行されたUDIの適合性を確認すべきだとか、要件を満たしていないUDIが発行されているといった内容をFDAが認識しているとの記載もありません。万が一、基準を満たしていないUDIをFDAが認識しているのであれば、ガイダンスにそのような内容が記載され、不十分なUDIの是正方法に関してもう少し、直接的なガイダンスを製造業者及びUDI発行機関に向けて示すはずです。

また、ドラフトガイダンスには、UDIルールの最終化以降に発表されたルールやガイダンスでは述べられていない新しいコンセプトが紹介されています。しかし、「データデリミター(Data Delimiter)」や「UDIキャリア(UDI Carrier)」などが紹介されている一方で、これらは発行機関が既に使用されているものなのか、それともUDIの形式及び内容の生成における全く新しい方法であるのかは、明確ではありません。しかし、既に発行済のUDIの順守状況を踏まえて、FDAが認識している課題に対する是正方法として、このようなコンセプトが現段階で紹介されているのかもしれません。しかし、このような点について、ドラフトガイダンスでは明確には述べられていません。

FDAは、このような最終段階においてガイダンスを発行した理由や、法規制を満たしていないUDIの可能性、新しい用語が導入された理由について、もう少し明確に説明する必要があると思います。また、製造業者が発行機関から取得したUDIが要求事項を満たしていない場合、それらの対応に要する猶予期間をFDAは与えるべきであり、UDIの取得に積極的に取り組んできた企業に対する法的措置は取るものではないと思います。

※本記事は著者の許可を得て、転載しています。

著者のご紹介
Jennifer D. Newberger
クライアントである医療機器メーカーの薬事戦略構築や製品アプリケーションの準備、ラベリング、広告、プロモーションに関する法令順守、強制措置などでサポートを行っています。ヒト組織に由来する製品に関するFDA規制の専門家として、コンビネーション製品に関する問題にも取り組んでいます。また、FDAに対する薬事スケジュールや契約、対応に関するコンサルティングを行い、医療機器メーカーを代表してFDAとの話し合いに出席するといった活動にも携わっています。薬事分野では、IDEや510(k)、de novo 、PMA申請、ファイリングの準備、法令遵守では、MDRやリコールQSRに関し企業へのアドバイス、大企業から中小企業まで、事業の立ち上げをサポートしています。前職では、FDAのCDRH(Center for Devices and Radiological Health)でポリシーアドバイザーとしての経験を有していたことから、当局内部のプロセス及びプライオリティを熟知しており、医療機器に関するルールが発令された際に、このような行政側の視点を意識したアドバイスを提供しています。

関連記事:
"Need Help Navigating UDI? FDA Can Help"
"The Future of Medical Device Registries"

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2017年11月15日水曜日

ISO、複数の規格に対する変更を実施

B. Christine Park CQA, CQM/OE Consultant


様々なISO規格が改定、移行期日までに対応を


品質マネジメントシステムやその他の規格の改定に伴い、期限内での対応が求められています。ここ数年で改定された主な規格は以下の通りです。


これら3つの規格は、過去数年の間に改定され、多くの企業が用いる重要な規格です。規格が改定される場合、企業には新しい規格への移行期間として、通常は3年という期間が設けられています。上述の規格においても3年以内の移行が求められています。3年と聞くと時間は十分にあると思うかもしれませんが、実際にはそう長くありません。時は刻一刻と過ぎていきます!今すぐ自社の事業に関連する改定箇所や要求事項を確認してみましょう。

新ISO 9001:2015 及び他の規格は「全10章」の章立てになり、シンプルかつ標準化することを目的に再構成されました。一方で、ISO 13485:2016 の章立ての改定は容易ではなく、新しい規格の発行に間に合わないとされました。その為、ISO13485:2016の章立ては従来のままとなり、ISO13485技術委員会により本文書に新しい概念が数多く盛り込まれました。





注目すべき重要な改定点がいくつかあります。
  • QMSは、経営戦略及び事業目的と一致するものであること
    QMSは、ビジネス活動の一環であることが期待される一方で、これまでは一般的に、別の活動として管理されてきました。本アプローチによって、組織全体で一貫性が強化される契機となることが期待されます。品質を強化することは、より良い企業運営につながるものなのです。
  • 組織の状況の把握と判断
    「規模に見合った戦略の実践」:経営陣は、継続的に品質システムに対して取り組むことで、自社のマネジメントシステムの課題やニーズを把握することができます。
  • マネジメントシステムに対する経営陣のコミットメント
    経営陣は、品質の確保を目的として、QMS及び従業員へのコミットメントを示すことが要件となっています。経営陣が積極的に関わり、QMSが優れた企業運営の手法であると認識されていけば、コスト削減につながり、安定した企業運営が実現できます。
  • プロセスアプローチの適用
    不適切な運用管理の場合、業務間の連動が正しく機能しないケースも多く、結果として、再作業などの無駄が発生します。企業のQMSや経営手法にプロセスアプローチを導入することで、部門や個人の孤立化といった組織の細分化を防止し、安定した企業運営に繋げることができます。
  • マネジメントシステムと予防処置
    「予防処置」の考えは、リスクの特定や軽減といったマネジメントシステムの目的と並列であることから、是正処置とは切り離し、システム全体を対象とした活動に変更となりました。予防処置を例外として扱うのではなく、リスク評価と組み合わせた適切な管理体制が必要です。
  • 文書化した情報
    「文書化された手順」や「記録」という用語は、「文書化した情報」に変更されました。要求事項として求められているのは、手順書や作業指示書などの管理、または、実施した業務の証拠としての記録の管理です。ただ、「情報」という言葉の定義は広義な為、企業側で解釈を決めることができます(※この変更はISO 13485には含まれません)。
  • 改善機会の発見
    リスクベース思考に関連することですが、改善機会と想定結果をリスクベースで評価し、適切な判断をすることが期待されています。
  • QMSに対する変更の管理
    QMSの計画的な運用が求められており、その運用に影響を与えるような変更を実施する場合、必ずリスク評価を行い、変更内容が適切に導入されたことを保証できるような枠組みが必要となります。
  • 組織としての知識
    「組織としての知識」という概念が発表されました。これは、人や組織に変更があった場合でも、事業運営に影響を与えないよう、組織として知識を管理することが求められています。

QMSが既に確立されている企業でも、この機会を予備調査として、現在の対応状況をご確認いただければと思います。文書や記録を確認することで、この新規格にどの程度、準拠しているかを把握できます。また、あまり複雑化せず、シンプルに必要な作業だけを行い、対応を目指すという考えも重要です。そして、新規格への対応も実現し、企業戦略と一致したQMSが構築できれば、それは、事業運営として非常に有益な成果になることを確信しています。


著者のご紹介
Christine (Chris) Park

医療機器、IVD、バイオテクノロジー/医薬品分野におけるR&D及び製造の経験から、品質システムや品質管理(CAPAや苦情、監査など)に対するコンサルティングを提供している。また、薬事申請のサポートとして、技術書類の作成やレビュー、リスクアセスメント、変更管理なども直接的に支援している。現在は、AAMI TC210規格委員会のメンバーとして積極的に活動しながら、改訂版のISO 9001:2015やISO 13485:2016、FDAの連邦規則集改訂 (820、 210/211、食品)の導入や移行のための企業向けコンサルティングを行っている。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2017年11月13日月曜日

SEMICON JAPAN 2017出展のお知らせ

マスターコントロールは、エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2017」に出展致します。



世界中のソフトウェアやデバイスメーカーが出展する「World of IoT」ゾーンにて、IoT時代に求められる品質マネジメントシステムの在り方や、品質管理や品質保証といった業務の効率性改善を支援するソリューションをご紹介しています。

皆さまのご来場を心よりお待ちいたしております。



SEMICON Japan 2017 開催概要

会期:
2017年12月13日(水曜日)~12月15日(金曜日) 10時~17時

会場:
東京ビッグサイト 東展示棟・会議棟

出展ゾーン/小間番号:
WORLD OF IOTゾーン/3752

主 催:SEMI (Semiconductor Equipment and Materials International)

公式ウェブサイト:
http://www.semiconjapan.org/jp/

2017年11月7日火曜日

Masters Forum 2017へのお礼

先日は、多くの方々にMasters Forum 2017へご来場いただき、誠にありがとうございました。

本年度は、イベント5周年ということもあり、3セッション同時開催というフォーマットにて開催した一方、不安もあったのですが、結果として、私たちが想定した以上に多くのお客様にご来場いただき、社員一同、感謝いたしております。当日は至らない点も多々あったかと思いますが、そのような点も含めて、次回以降、よりクオリティーの高いイベントとして運営できたらと考えております。

また、概要等が決まりましたら、追ってご連絡いたしますが、2018年も11月6日(火)に開催を予定しています。

よりコンテンツを充実させ、ご来場いただける全ての方々にとって、実りある時間を過ごせるようなイベントとして企画できたらと考えておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

Masters Forum 2017 イベント事務局