2017年11月15日水曜日

ISO、複数の規格に対する変更を実施

B. Christine Park CQA, CQM/OE Consultant


様々なISO規格が改定、移行期日までに対応を


品質マネジメントシステムやその他の規格の改定に伴い、期限内での対応が求められています。ここ数年で改定された主な規格は以下の通りです。


これら3つの規格は、過去数年の間に改定され、多くの企業が用いる重要な規格です。規格が改定される場合、企業には新しい規格への移行期間として、通常は3年という期間が設けられています。上述の規格においても3年以内の移行が求められています。3年と聞くと時間は十分にあると思うかもしれませんが、実際にはそう長くありません。時は刻一刻と過ぎていきます!今すぐ自社の事業に関連する改定箇所や要求事項を確認してみましょう。

新ISO 9001:2015 及び他の規格は「全10章」の章立てになり、シンプルかつ標準化することを目的に再構成されました。一方で、ISO 13485:2016 の章立ての改定は容易ではなく、新しい規格の発行に間に合わないとされました。その為、ISO13485:2016の章立ては従来のままとなり、ISO13485技術委員会により本文書に新しい概念が数多く盛り込まれました。





注目すべき重要な改定点がいくつかあります。
  • QMSは、経営戦略及び事業目的と一致するものであること
    QMSは、ビジネス活動の一環であることが期待される一方で、これまでは一般的に、別の活動として管理されてきました。本アプローチによって、組織全体で一貫性が強化される契機となることが期待されます。品質を強化することは、より良い企業運営につながるものなのです。
  • 組織の状況の把握と判断
    「規模に見合った戦略の実践」:経営陣は、継続的に品質システムに対して取り組むことで、自社のマネジメントシステムの課題やニーズを把握することができます。
  • マネジメントシステムに対する経営陣のコミットメント
    経営陣は、品質の確保を目的として、QMS及び従業員へのコミットメントを示すことが要件となっています。経営陣が積極的に関わり、QMSが優れた企業運営の手法であると認識されていけば、コスト削減につながり、安定した企業運営が実現できます。
  • プロセスアプローチの適用
    不適切な運用管理の場合、業務間の連動が正しく機能しないケースも多く、結果として、再作業などの無駄が発生します。企業のQMSや経営手法にプロセスアプローチを導入することで、部門や個人の孤立化といった組織の細分化を防止し、安定した企業運営に繋げることができます。
  • マネジメントシステムと予防処置
    「予防処置」の考えは、リスクの特定や軽減といったマネジメントシステムの目的と並列であることから、是正処置とは切り離し、システム全体を対象とした活動に変更となりました。予防処置を例外として扱うのではなく、リスク評価と組み合わせた適切な管理体制が必要です。
  • 文書化した情報
    「文書化された手順」や「記録」という用語は、「文書化した情報」に変更されました。要求事項として求められているのは、手順書や作業指示書などの管理、または、実施した業務の証拠としての記録の管理です。ただ、「情報」という言葉の定義は広義な為、企業側で解釈を決めることができます(※この変更はISO 13485には含まれません)。
  • 改善機会の発見
    リスクベース思考に関連することですが、改善機会と想定結果をリスクベースで評価し、適切な判断をすることが期待されています。
  • QMSに対する変更の管理
    QMSの計画的な運用が求められており、その運用に影響を与えるような変更を実施する場合、必ずリスク評価を行い、変更内容が適切に導入されたことを保証できるような枠組みが必要となります。
  • 組織としての知識
    「組織としての知識」という概念が発表されました。これは、人や組織に変更があった場合でも、事業運営に影響を与えないよう、組織として知識を管理することが求められています。

QMSが既に確立されている企業でも、この機会を予備調査として、現在の対応状況をご確認いただければと思います。文書や記録を確認することで、この新規格にどの程度、準拠しているかを把握できます。また、あまり複雑化せず、シンプルに必要な作業だけを行い、対応を目指すという考えも重要です。そして、新規格への対応も実現し、企業戦略と一致したQMSが構築できれば、それは、事業運営として非常に有益な成果になることを確信しています。


著者のご紹介
Christine (Chris) Park

医療機器、IVD、バイオテクノロジー/医薬品分野におけるR&D及び製造の経験から、品質システムや品質管理(CAPAや苦情、監査など)に対するコンサルティングを提供している。また、薬事申請のサポートとして、技術書類の作成やレビュー、リスクアセスメント、変更管理なども直接的に支援している。現在は、AAMI TC210規格委員会のメンバーとして積極的に活動しながら、改訂版のISO 9001:2015やISO 13485:2016、FDAの連邦規則集改訂 (820、 210/211、食品)の導入や移行のための企業向けコンサルティングを行っている。

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