2016年3月22日火曜日

品質監査:継続的改善への近道として


公衆安全衛生における唯一の方法、それは品質の確保です。
Beth Pedersen Marketing Communications Specialist, MasterControl Inc.


GxP規制対象の企業、またはISO認証を取得した企業であれば、監査の重要性は理解されていると思います。事業に関わる規制や基準は頻繁に変更される一方で、その変更点を常に理解し、順守する体制を整え、その状況を常に明示できるようにしておかなければなりません。

規制要件への対応や間近に迫った監査への準備に追われていると、監査組織が企業にもたらす価値を見失ってしまう可能性があります。そして、単純ですが、確認や評価を行わずにどうやって改善を実行することができるのかという、非常に重要な疑問にたどり着きます。

監査という言葉の響きは強力で、ポジティブなイメージが浮かびにくいものです。 監査とは、その性質上、問題点を洗い出す業務であり、問題点にはペナルティが課せられ、時には厳しい処分や費用を伴う場合もあります。監査の準備をする上で頭を悩ますのは、膨大な文書管理や証拠収集、署名や承認の入手、担当者の教育記録、関係部門の調整など、他にもまだまだあります。

監査がうまくいかなかった場合の影響などを考えると、監査のことを考えるだけでも恐ろしくなるのも当然です。Walt Murray氏は、マスターコントロールのQuality and Compliance Consulting (QCC) Services(業務コンサルティングの提供部門)のディレクターとして在籍し、25年以上にわたり442件の監査を実施し、監査における様々な状況を数多く経験してきました。


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その内のひとつの例を挙げましょう。監査対象のある企業は、既存の工場が新規OTC医薬品を製造する契約を締結済であり、製造開始前には、21 CFR Part 211に遵守した体制の確立が必要でした。監査の目的は、技術、製造、洗浄業務を評価すること(=新製品の生産)と関連していました。被監査企業がこうした業務活動の証拠や記録文書を提示できない時点で、Murrayはこの企業が監査基準をクリアすることができないことを悟っていました。

さらに事態を悪化させたのは、作業場が製造業務に適していないことでした。さらに、状況改善に向けた企業の対策を示す計画書が一切提示されなかったことも加わった為、Murrayは監査開始前に強制的に監査を中止しました。その結果、被監査企業と新規医薬品の製造委託契約を締結していた企業は契約解除を決め、数名の従業員が職を失いました。

ただ、信じられないかもしれませんが、Murray氏が関わった監査では、監査の始まりこそ前向きな状況ではなかった場合でも、最終的には圧倒的多数の企業で前向きな結果に繋がったとのことです。監査で指摘が見つかるということは、変更や改良、改善が義務付けられます。その為、監査に対する不安は、「監査」の特長の一つ程度に考えるべきです。

「大抵の人が監査を恐れる理由は、監査担当者が求めているポイントを理解していないことにあります」とMurray氏は述べています。「監査担当者は、常に、企業による規制の遵守及び適合能力のどこに不備があるかに意識を向けているのです。」


品質管理への道

1987年以降、国際標準化機構(ISO)がISO 9000基準を発令し、製造業者や他業種にとっても品質監査が最重要課題として位置付けられ、ISO、アメリカ食品医薬品局(FDA)、その他の規制当局において監査の重要性は高まり続けています。現在、ISO 9001、ISO 14001、ISO 13485、21 CFR Part 820、21 CFR Parts 210-211、21 CFR Part 606、OECD Principles of Good Laboratory Practice、ICH Q7 Good Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredientsなど(これらはごく一部ですが)、数多くの基準や規制が存在し、監査はその規制の下で品質評価や改善を実現するメカニズムとして機能しています。

確認や評価を実施し、最終的に判定を下すといった体系的取り組みの中隔が監査です。監査では、製品、サービス、試験、プロセスやシステムに主眼がおかれます。GxP規制対象企業やISO認証取得企業に特に関係する監査としては、特定の規制・規格などに対する適合性の監査と業務に対する監査の2種類が存在します。特定の規制・規格などに対する適合性の監査では、活動やプロセス、システムが特定の要求事項を満たしているかどうかを評価し、その結果はコンプライアンスや認証取得に直結します。 業務監査の着眼点は、組織が一連の規則を遵守しているかであり、規則の有効性、及び組織の目標達成における規則の適合性に注目しています。

監査の最終的な結果は、監査対象製品やサービス、アクティビティやプロセスに関連するシステムに関する所見、指摘事項、及び結論を含む報告書です。この報告書は、規制対応が確立されているか、あるいは改善を行うべきかが示されています。つまり、問題点を克服するチャンスとなるのが監査なのです。

後手の対応と分類される不適合報告や品質管理試験、顧客苦情処理、逸脱処理のような他の品質管理手法と比べ、監査は問題発生前に処理することができますし、さらに詳細な情報に基づいた判断をすることも可能です。監査にはこのような性質がありますので、恐怖の種以外のなにものでもないと捉えず、むしろ監査こそが継続的改善のチャンスであると認識すべきでしょう。

監査を通じて評価を行い、要件でなくても企業にとって有益なプロセスを理解することにより、現行プロセスの改善が可能となり、より適切なマネジメントや規制遵守にも繋がるので、監査は重要な管理ツールとなるのです。GxP規制対象企業やISO認証取得企業として、特定の規制・規格などに対する適合性の監査や業務に対する監査の結果が「適正」と判断されることが最重要であることは確かですが、「品質監査」を単に行政処分やFDAの監視リスト掲載を回避する方法と捉えるのではなく、企業が業務改善を行う上で、効果的な手段は監査の他にないと認識していただきたいです。


著者のご紹介
Beth Pedersenは、マスターコントロール米国本社のマーケティングコミュニケーション部門のスペシャリストです。マイクロソフトやノベル、NetIQ、SUSE、Attachmateといった企業のWebサイトで、技術やマーケティングに関する執筆活動を行っています。University of Wisconsin, Madisonでライフサイエンスコミュニケーションの学士号を取得し、IIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を修得しています。

本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年3月9日水曜日

ISO 9001:2015:経営手法に対する特効薬として

管理業務の悩みで寝不足になってませんか?
ISO 9001:2015が助けになるかもしれません!?
Matt Leiphart
Cavendish Scott, Inc.


ISO 9001:2015は、管理職の方々の日々の悩みへの解決策になるかもしれません。新しいISO 9001の最大の変更点は、経営陣に対して、問題を未然に防ぐための取り組みを求めています。問題を回避するシステムが備わっていれば、経営者には安心感が生まれ、細かな配慮を行き届かせてシステムを育成することができますので、安心して眠ることもできるのです。

私も長年、管理職を務めた経験があり、組織の責任者というのは、常に次に挙げるような内容を考えているかと思います。

  • 目標達成
  • 大切なお客様の満足度の維持
  • 進捗状況の監視
  • 効果的な業務管理

目標を達成するということは、想定される結果を考慮しながら組織全体の方向性を定め、障害となりうる課題への対応を行うことです。ISO 9001:2015の第4.1項では、組織の目標、戦略的方向性や意図する結果を考慮し、目標達成に関連する組織内外の問題を特定することが述べられており、これを「組織目標(Organizational Context)」と呼んでいます。この分野において、不明な点が多かったり、発生している問題が不明確または対応中である場合は、経営者に不安を与える要因ともなります。

また、製品やサービスに影響を及ぼす顧客以外の利害関係者を特定し、彼らの要求事項を把握する必要もあります。経営面から考慮すると、こうした利害関係者は成功に欠かせない存在と認識されており、ISO 9001:2015第4.2項では、利害関係者の要求について記載されています。ISO 9001:2015は、経営者に対し、こうした利害関係者のニーズを満たす取り組みを支援する内容となっているため、経営者も安心して取り組むことができるでしょう。



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成功の鍵は、リスクベースの考え方にあります。組織目標や利害関係者の要求事項を理解するということは重要ですが、新しい規格の内容はそれだけに留まりません。組織固有の問題や要求事項、リスクやチャンスに対し、マネジメントシステムを整備していくことにあるのです。重要度に基づき取るべき行動を決定し、頑強な評価プロセスによって定期的なモニタリングを実施します。別のアプローチが必要となれば、そこで修正をします。第4項の評価については、第6.1項及び6.2項にも述べられていて、リスクとチャンスを明確にして目標を設定するとしています。現行のISO 9001が航海に必要な船舵のように方針が規定されているとするならば、ISO 9001:2015には、風向計やコンパス、地図、スピーカーが加えられ、より具体化された方法が規定されているということです。

次に、モニタリングの変更点についてお話しします。ISO 9001では常に、測定及びデータ分析に関する内容が用いられていましたが、新規格では全く新しい基準の概念が取り入れられています。モニタリングや測定、分析、評価における要求事項は、規格全体にわたって記載されています。2008年版と同様、要求事項が直接的に記載されている項目は第9.1項の1つのみです。2008年版とは異なるのは、2015年度版ではモニタリングや測定、分析、評価を行わなければならない対象について、別の項目でも規定している点です。第9.1項以外の要求事項は、25箇所以上ありました。以前は、「重要と判断する箇所をモニタリングし、測定を行う」としていた記載が、現行の要求事項ではより規範的であり、包括的かつ全般的な内容となっています。

運用管理に関しては、新ISO 9001で大幅に変更された点はなく、運用管理に関する細かな表現などが変わり、経営者をより支援する内容となっています。計画的、非計画的、いずれの変更もその管理に関する新しい要求事項があります。ISO9001:2015では、「知識(Knowledge)」を特定し、利用できるようにしておかなければならないこととしています。

「力量(Competence)」とは、今までトレーニングの考慮の際に注目されていたテーマです。コミュニケーションプロセスについては、より明確に要求事項が定義されています。アウトソーシングやコンサルティング、委託などの外部ソースからのサービス提供に対する管理についても、今回詳細に規定されています。不適合の管理については、不適合製品だけにとどまらず、「不適合の過程出力(nonconforming process outputs)」が含まれています。こうして強化された内容は、いずれも経営者にとって根本的な変更を求めるものでなく、2008版の盲点に着目した結果、現行の改定に至ったものとなります。それではここで、経営者の皆様の為のまとめ項目です。

  • 一歩引いて、全体像を眺めてみてください。そして、組織内外の課題のうち、意図した結果や目標、戦略的意図を実現する上で組織にとって役立つ、あるいは妨げるとなる可能性のある課題を特定します・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • 組織が影響を及ぼす(または影響を及ぼす可能性のある)関係者を特定してください。このような利害関係者の要求事項を定義し、その利害関係者や要求事項がマネジメントシステムに関係するのか、意識的に判断して行く必要があります・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • リスクやチャンスのうち、全体的な状況に影響を及ぼすものや、組織内外の問題、利害関係者の要求事項に関係するものを特定してください。 計画的にリスクに対し安全対策を講じ、チャンスを最適化した後に、リスクとチャンスに関するモニタリングの方法を決定します・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

  • 作業方法は指定された手順に準拠し、関係周辺の管理を行ってください。やらなければいけないことを1つずつ着実になしていくだけです。予測できる変更と予測できないない変更をプロセスに組み入れておけば、逸脱があった場合も、要求事項で求められる水準を維持しつつ結果を得ることが可能です。・・・できていれば、チェックマークをつけてください。

結果に焦点を当てたマネジメントシステムでは、組織の重要度の高い利害関係者に着目し、運用管理やモニタリング方法も組み入れて追跡可能な状態となる(必要に応じて迅速に追跡を実施する)ことができるのです。あなたの最高責任者に是非お伝えください。快眠のために枕をオーダーする代わりに、ISO 9001:2015を是非お読みくださいと。


著者のご紹介
Matt Leiphartは、1992年以降、ISO 9001等、マネジメントシステム規格にかかわる業務に従事。 13年間、コンサルティング会社の代表を務め、マネジメントシステムの評価ではスコアリング方式を採用。第三者組織の監査役であり、審査機関のリーダーとしての管理理システムの監査技術のトレーニングプログラムをこれまでに数多くの人々に提供した実績を誇る。様々な経験を踏まえ、継続的な改善やビジネス目標達成のためのツールとして、マネジメントシステム規格を最大限に活用するといったユニークな視点に基づいたアイデアを提供。現在は、Cavendish Scott, Inc.で、附属書SL及びISO 9001:2015への対応に向けた新たなトレーニングプログラムを開発し、コンサルティングを行っている。

Cavendish Scott, Inc.は、30年以上にわたり、ISO 9001に関する規格のコンサルティング、トレーニングプログラム、監査に取り組んでまいりました。長期にわたり、規格が進化していくのを見ていると、検討中の規格がどのような方針で最終化されるのか、非常に楽しみです。弊社では、トレーニングプログラムやコンサルティングソリューション、監査、ギャップ分析、プロジェクトプランニングパッケージなど、クライアントの皆様をサポートするサービスを提供いたしております。経営者に向けたリスクベースの思考のメリットについての講習会も開催しております。
Cavendish Scott, Inc.は常に、正確で専門性の高い、効果的なマネジメントシステムソリューションの創造に励んでおります。杓子定規に処理するのではなく、皆様の企業が付加価値のある認証を獲得できることを弊社が保証します。詳しい情報はこちらから。

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2016年2月23日火曜日

プロジェクト完了後のシステム運用における4つの秘訣

ユーザーがソフトウェアを使い始めると様々な疑問が湧いてきます。
こうした疑問をすべて解決できますか?
Stephanie Jones
Senior Professional Services Consultant, MasterControl Inc.

2015年4月9日の記事では、スムーズなシステム導入を実現する上での8つのポイントについて、ご紹介させていただきました。今回は、導入を行った企業の担当者が去った後、システムを運用していく上でのポイントをご紹介したいと思います。

ユーザー、また導入サービスを提供する企業側の担当者として、何百件ものソフトウェア導入に携わってきた経験上、問題になりがちな課題が一つあります。それは、効果的なシステムとして作り上げるには、システムの導入だけでなく、システム運用にも注力し続けなければいけないという点です。


例えば、エンドユーザーが新しいシステムの利用を開始すると、システム管理者に対して質問が殺到することになります。システム管理者とはいえ、システム管理者向け教育は数か月前であり、またそのトレーニングでは想像を超える情報量を習得しなくてはならず、一生懸命理解しようとしてもほんの一部しか理解できず圧倒された経験がある方も少なくないと思います。ここでは、導入後最初の問題を冷静に対処できるよう、いくつかの提案をしたいと思います。

解決策①:問題を記録しカテゴリー別に分類
トリアージプロセス(緊急時に最善の作業をするため、緊急度に応じて優先順位を決める過程)を通じて、報告された全ての要求や問題を記録・分類します。分類はカテゴリー別に行いますが、関心の高いもの「HOT」か、そうではない「NOT」といった具合にシンプルにすべきです。「HOT」とは、事業を停止させるような内容であり、これ以外の場合は「NOT」に分類します。また、以下のようなサブカテゴリーを追加することで、より具体的に分類することも可能です。

1. 既知の問題(=解決策を既に知っている)
2. ユーザートレーニング関連
3. SOP関連
4. 未知の問題(=解決策を知らない)

 最初の3つのサブカテゴリについては何をするべきかご存知だと思いますので、関心の高いもの「HOT」のカテゴリーから対応を行い、時間があれば「NOT」の問題を対応していきましょう。



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解決策②:電話会議を活用
導入終了後の最初の2週間は、導入を行った企業の担当者やテクニカルサポートと、前述の「未知の問題」への対処方法について、電話会議をリクエストすることをお勧めします。このようなサポートを契約時の要件として含めることで、障害修正のスピードまで確約は取れないにしても、より密接なサポート体制を構築することが可能となります。また、時間の節約にも繋がりますので、フラストレーションが軽減できるかもしれません。

解決策③:導入担当者の出張サービスまたはリモートでのフォローアップ
落ち着きを取り戻し、ユーザーが新しいシステムに慣れてきたあたりで、導入担当者とのフォローアップを予定することをお勧めします。このフォローアップは、ユーザートレーニングであがった質問への回答、導入目的の再確認、未解決の「NOT」に該当する課題などへのサポートが目的です。この打ち合わせは、内容次第ではリモートまたは出張してもらう形が選択できると思いますが、少なくとも一日は必要です。

解決策④:自分自身で解決
マスターコントロールでは、お客様Webサイトなどを通して、ツールや教育資料、FAQ、お客様同士での意見交換フォーラムなどを提供しています。このようなサービスは他のベンダーでも用意されていると思いますので、導入プロジェクトの期間に限らず、活用をお勧めします。

今回、ご紹介したポイントは、ユーザーからの質問やリクエストの管理といった日々の業務に活用していただけたら幸いです。また、システム導入・運用に関連する進捗を経営陣にタイムリーに報告する上でも助けになると思いますので、全体として業務をスムーズにまわすことに繋がればと考えています。


著者のご紹介
Stephanie Jonesは、2011年にマスターコントロールに入社以来、導入コンサルタントとして業務に従事しています。企業システムに関する経験は30年以上にも及び、プロジェクト管理や業務プロセス分析、ソフトウェア導入、データ変換、コンピュータシステム・バリデーション、規制・規格対応など、多彩なスキルを有しています。実体験から得た彼女の専門知識は、特に製薬及び食品製造業で秀でており、非常に優れた問題解決力及び対人スキルは彼女の強みであり、企業規模の大小を問わず何百もの導入成功を実現しました。


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2016年2月9日火曜日

FDA査察における3つのポイント『準備、管理、フォローアップ』

適切な準備を査察に対して行うことで、実際の査察も
スムーズに受けることができます。
模擬査察を活用して適切な準備を行いましょう。
Kelly Thomas
Atlantic Validation

FDAの査察を無事に終えることは、cGMPへの順守及び事業の成功において極めて重大です。堅牢な品質システムを運用・維持することは、FDA査察を突破する上で欠かせないポイントの1つですが、それが全てではありません。査察に対する準備及びマネジメントも同様に重要です。適切なマネジネント戦略があれば、コンプライアンス違反に対する指摘を受けるリスクを軽減することもできます。ここでは、査察官に対する知識、実際の査察準備及び管理方法、査察の終了時に必要なフォローアップ、ならびに、実際の現場から得た教訓についてお話したいと思います。



査察官に対する知識
査察官の一番の懸念は患者の安全性であるため、その点に関しては十分な根拠とデータをもって説明する必要があります。労力のかかる作業ですが、決定意思を得るためには多くのデータを用意しておくことが重要となります。2011年のプロセスバリデーションガイダンス(Process Validation Guidance)及びICH Q9に従って、より科学的な裏付けが重要視され、査察官は科学的意義の追及によりオープンな姿勢を示すようになりました。ただし、査察官は決して悪意があるわけではなく、彼らはプロの懐疑論者であり、事業場においてあらゆる危険性や有害性の特定を含む全てのチェック項目が、データに基づいた強い根拠によって裏付けされ、それが支持されることを期待しています。

正しい決定が下されているとの結論に査察官が至るよう説得力のある方法でデータを提示することが、品質保証管理者及び内容領域専門家(SME, subject matter expert)の責務となります。査察官に対し反対の意見を述べることが可能である点にも注意することが重要です。もちろん、常に礼儀正しく接し、好戦的な態度は回避すべきです。基本的には、製造プロセスが十分に理解されていること、また品質管理システムがどうのように設計されているか、そしてこの2つがどのように連携してコンプライアントシステムを構築しているかについての説得が必要となります。



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信頼を査察官に植え付けることが、良好な関係や流れを築くうえでの第一段階となります。そして信頼を植え付けるには、文書管理(GDP, good documentation practices )を一貫して遵守するドキュメント(データファイル)とともに情報パケットを事前に整えておくことしかないのです。GDPは、強力な品質システムの基礎となるものです。GDPを遵守することで、監査担当者はパケットに含まれるデータに信頼感を抱くものです。さらに、データパケットに明確なラベルをつけておくこと(バリデーション、サマリーレポート、変更管理、逸脱など)で、正確な情報が提供されているという好印象を与えます。それだけ、きれいに整理されたデータには価値があるというものです。

さらに、進行中の品質システムの改善策を示すことも、cGMPコンプライアンスの維持に取り組んでいることを印象付けることができるでしょう。品質システムの改善の例としては、定期的な品質マネジメントレビュー(QMR)、CAPAの記録や継続的改善プロジェクトを通じて示すことができるのではないでしょうか。
査察官は、限られた時間の中で査察を完了しなければなりません。査察官が無駄な時間を費やすことはかえって悪印象です。
最低限の時間で限りなく査察を進めやすいよう努めましょう。

査察準備
査察準備は、企業の財源に匹敵する価値があります。査察を受ける際の準備を事前に行っておくことで、安心して査察当日を迎えられることができるでしょう。最初に行うべきことは、「査察の管理」SOPの作成です。SOPには、FDAの施設訪問時の対応担当者を明記します。まず、施設の品質部門長、業務責任者及びその代理に通知します。ここで、査察官が施設を訪問する旨を、関係従業員全体に知らせる方法についても説明します。SOPに対するトレーニングは全従業員を対象に行い、トレーニング実施に関する記録を文書で残します。尚、受付係や警備員なども、査察官と最初に接することからトレーニングの対象と考えられます。SOPでは、以下のトピックを取り上げてください。
  • 情報に対するFDAのリクエストした記録方法についての説明
  • 査察官から写真やビデオの提示がリクエストされた場合の対処方法
    • SOPで写真やビデオ撮影の禁止が規定されている場合でも、FDAの査察官には撮影の権利があります。
    • Operations2014年のInvestigations Operations Manual(IOM;査察実施マニュアル)のセクション5.3参照
  • 企業の品質管理手順に反するFDAリクエストへの対応方法についての説明
  • 作業中のクリーンルームへの入場が制限されている場合などでも、査察官を案内する必要があること
  • 就業時間に関する記載。
査察準備チーム(IRT)発足の目的は、すべての準備活動を洗い出し、完了することです。査察時に査察のサポートをすることが、IRTの責務となります。品質関連組織以外のグループからもメンバーを集めたチーム(クロスファンクショナルチーム)を構成するとさらに良いでしょう。

十分な計画を立てることが重要であり、これにより査察の管理における労力が軽減します。
そのためには、どの会議室を査察官に割り当て、どの会議室を監査のサポートルーム(別名「War room(戦略的な決定をする部屋)」)として使用するかを事前に決定しておくことも重要です。これらの2つの部屋は近すぎてもいけません。War roomは使用中、特にSMEが査察官のリクエストに対する戦略を練っている場合には、雑踏と喧騒の渦中に置かれます。従って、査察官の控室として使用する会議室は、人の行き来の多いエリアから離れた場所が適しています。また、できれば製造現場やQC臨床検査にも近すぎない場所が望ましいです。            

計画過程の一部として、誰がSMEを務めるのか、また治験実験計画書や逸脱の提示に関する担当者は誰なのかをあらかじめ決定しておきます。SOP(標準作業手続き)、逸脱、トレンド報告やバリデーション(検証)の正当性を主張する練習の機会を設けることで、誰が査察官訪問時の対応に適しているかを判断する良い機会となります。さらに重要なこととして、模擬査察を実施することで、品質管理責任者が査察時対応すべきではない人物を認識できる機会でもあります。規制当局からの査察官への資料の提示には、ある意味スキルを要します。誰でも、このスキルがあるというわけではありません。人によっては神経質になり過ぎたり、問題について語り過ぎる場合があります。そのためSMEとのテストを実施することは、査察を無事完了する目的において重要な要素となるのです。

資料を提示する者が、資料の内容について知識と自信を持っていることだけでなく、建物の内部も外部も査察の準備が整っていることが大切です。
不動産用語の「curb appeal(外見上の魅力)」という言葉を思い浮かべてください。施設の屋外にメンテナンスが行き届いている様子が窺える場合、その中で行われている作業も同様に良好な状態であるということを裏付けてくれるものです。

施設の外見上の魅力と共通のコンセプトに、文書の系統化や視覚的表現があります。これは、cGMPの文書管理が実施され、遵守されているという良いイメージを査察官に植え付けるうえでとても重要です。プロトコール(治験実施計画書)及びレポートの系統化に、目次やビジネスプランの要点をまとめた事業計画書(エクゼクティブサマリ)を用いるのも良好な方法です。これらの文書は非常に厚い場合がありますが、査察官は限られた時間で多くの資料をチェックしなければならないため、サマリがよく検討され、まとまっている場合にはそれだけがレビューの対象となる場合があります。裏付け文書をすべて揃えたパッケージを準備しておくと、フォローアップの際に裏付け文書の提示を求められることを避けることができます。レポートで逸脱やCAPAといった文書が参照される場合、そのような記録のレビューも可能なように準備しておきます。査察における精密な調査に耐え得る補足文書パッケージの例を下記に示します。
  • サマリーレポート
  • 署名済みのプロトコール
  • 逸脱及び不一致に関する記録
  • 裏付け付属書類
品質マネージャは、「注目すべきトピック」のリストを作成します。こうしたトピックとは、正当性を示すのがより困難なデータパッケージとなります。妥当性が確固たるものではなくなってしまった逸脱や、バリデーションプロトコール(科学的根拠のある治験実施計画書)/レポートにさまざまな逸脱があるといった状況は、どんなcGMP組織においてもある、といっても過言ではありません。査察時のリスク低減の鍵となるのは、より難しい会話を想定し、決定意思を示しその正当性を示す戦略を練っておくことです。模擬査察の際にこの演習を行って、データと結論について明確な話ができるよう経験しておくのが良いでしょう。

これを瞬時にこなすことは非常に難しいことですが、演習により、よりスムーズにこなせるようになります。

実際の査察の管理
まず、査察官に証明書の提示を要求し、実施される査察内容を確認します。施設の品質部門長、業務責任者及びその代役に、査察官の訪問を直ちに通知します。

監査開始会議(オープニングミーティング)では、実施される査察の種類に関する情報を得ることが重要です。原因を追求するための追加査察(for-cause inspection)ではルーティンに実施されるサーベイランス査察とはアプローチが異なるため、どのタイプの査察が実施されるのかを把握することが重要となります。証明書が提示されたら、所定の会議室に査察官を案内します。査察が進行中である旨を施設全体に通知します。査察準備チームは、所定の待機室準備計画を自動的に実行します。プリンタ、コンピュータ、電話、査察リクエストログ、幹事役及び書記が、査察のサポートには必要となります。

最初のプレゼンテーションを行うことも可能ですが、簡単に済ませます。組織図、人数、就業時間と施設のレイアウト図を見せ、施設見学にも案内します。通常1日目までにここまでを行います。清掃が見学に先立ってきちんと実施されていることを確認してください。開いているダンボール箱や通常のゴミやほこりを取り除いておくことで、清掃手順についての質問は回避できるでしょう。見学の前に、査察官に施設案内図のコピーを渡しておきます。人と設備の流れについて明確に示しておきます。
見学の際に、査察官は設備の番号と人員の名前に注目します。見学が完了すると、この情報をもとにメンテナンス、較正及びトレーニングの記録がリクエストされます。資料提示に関するリクエストはすべて記録し、監査サポートルームに伝えます。査察官にはリクエストされた資料の送付に関し現実的なタイムフレーム(物事を行うための必要な時間)を伝えてください。

監査フォローアップ
資料の提示を繰り返し求めなくてはならないような場合には、査察官も気分の良いものではありません。非常に合理的な所要時間の提示が想定される為、各リクエストの内容をきちんと理解していることを確認してください。質問または資料提示に関するリクエストの内容についての不明点は、査察官に遠慮なく質問してみてください。査察テクニックの1つとして、どんな情報が提供されるかを確認するために、故意に漠然とさせることがあります。質問には常に誠実に回答してください。誤った説示または不正行為は、意図的かにかかわらず、確実に悪影響を及ぼすものです。明るみになった場合の査察官の反応を考慮してみてください。

一日一日終了時に、その日のオブザベーション(指摘)についての簡単な報告を査察官に求めてみてください。また、この時間から翌日の査察の方向性を知ることができます。それによってスタッフは就業時間後に翌日必要となる資料を準備することができます。文書が準備され、いつでも提示できる状態にあることで、査察はよりスムーズになります。

査察官の技術
査察中、追加情報を得るため査察官が用いるテクニックがいくつかにあります。1つには先に述べた、意図的な曖昧さを用いるテクニックがあります。この場合、リクエストの内容を明確化するための質問をし、正確に理解できているか確認します。
もう一つの査察テクニックは、長時間にわたる沈黙です。人は、沈黙を埋めるために発言が増える傾向があります。質問への回答が終了したら、次の質問が尋ねられるまで、安心して静かに座っていて大丈夫です。査察官が妥当性を審理するためにデータまたは結論についての質問が尋ねられる可能性がある点に注意することが重要です。この一連の質問は、そのままアプローチに対する異論を意味するものでも、裏付けデータに基づいてなされた決定事項を擁護するものでもありません。
短時間にかなりの情報量がリクエストされるという事態も起こりうるのです。このテクニックの目的は、資料がどれくらい簡単に検索可能かについて確認することであり、実際にすべての文書業務をチェックすることではありません。合理的な所用時間も提示します。

監査のフォローアップ
品質管理責任者の目的は、査察からのオブザベーション(指摘)をゼロにすることです。そして、もしオブザベーションが発見された場合には、指摘事項(finding)すべてに回答することです。コミットメントはすべて徹底的に検討し、タイムリーに実施可能かを確認します。規制当局に提出されたコミットメントに対する逸脱は、タイムリーにその正当性を示し、伝達する必要があります。計画に変更がつきものであることは規制当局側も理解していますので、必ず計画を伝達するようにしましょう。

最後に
有効な査察の準備計画を策定し、実行することは、より良好な結果を導くとともに、査察における労力も軽減します。事前に計画することによって、文書の提出期間を短縮することができ、SMEのプレゼンテーションスキルも向上し、査察官が抱く品質システムに対する信頼感も増します。


著者のご紹介
Kelly Thomasは、医薬、生物工学及び医療機器業界に18年の経験を有し、cGMP事業に影響を及ぼすすべての品質保証活動及び品質管理活動の策定、実行、管理を専門領域としています。コンプライアンスストラテジー(法令遵守計画)が企業の戦略的ミッション、顧客満足度及び規制要求事項と整合する品質システムの開発及び実施もその一部に含まれます。
Thomas氏は、East Carolina Universityで生物学を専攻し修士号を取得、その後Meredith CollegeのMBAを取得しています。またAmerican Society for Quality (ASQ-米国品質協会)から複数の認定資格も取得しています。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2016年1月20日水曜日

MasterControl Customer Websiteのリニューアルについて

マスターコントロールでは、お客様向けの情報サイト「MasterControl Customer Website」のリニューアルを現在、行っております。今回のリニューアルには、コンテンツの日本語提供も含まれ、今後は様々なサービスやコンテンツが日本語でアクセス可能となります。尚、リニューアル作業期間中は、本サイトが一時的に利用不可となりますので、ご不便をおかけしますが、ご理解ご協力の程、宜しくお願い致します。