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1月4日(木)からは、通常通り営業しておりますので、どうぞよろしく御願いいたします。
2017年12月27日水曜日
2017年11月27日月曜日
CFDAにおける医療機器ソフトウェアに関する規制
医療機器のソフトウェアへの依存度の高まりを踏まえ、 ソフトウェアに対する規制要件は一段と 厳しさを増していくものと考えられます。 |
Marketing Communications MasterControl
各国、各産業を取り締まる規制当局が数多く存在するなか、世界の法的環境や規制要件の改正・改変をすべて把握するということは製造業者にとっては難しい課題です。中国国家食品薬品監督管理総局(CFDA)は、医療機器関係ソフトウェア登録技術審査指導原則(2015年第50号通知)を2015年8月5日に発表しました。この原則は、中国語版のみの提供で、医療機器メーカーあるいはそのパートナーが開発したスタンドアロンソフトウェアあるいはソフトウェアコンポーネントに関する文書作成要件に関する大幅な変更が示されています。
中華圏UL Medical Regulatory Advisory Services (MRAS)シニアマネージャであるTim Lin氏は、規制が世界的に変化していることを製造業者が把握できていない場合に起こりうる結果として、設計の不備、要件を満たすソフトウェア文書を作成することができないプロセス、また最悪な例としては申請の棄却を挙げています。
医療機器メーカーが新しい要件を理解し必要な措置を講じることができるよう、同氏はUL paper内で新しい原則について説明を行い、中国国内の機器メーカーに対し、販売承認申請書提出の際に実施すべきことについて3つの提案をしています。
改正の概要
新しい規制にはCFDAの現行の考え方が盛り込まれ、2012年4月28日発令のガイダンスに基づき策定されています。ソフトウェアのアップデート版や修正版登録に関する要件と併せ、文書要件に関し、より詳細な要件が示されています。
CFDAは、ソフトウェアの安全性及び有効性を確保するうえでは、開発段階においてリスクマネジメントや品質保証、ソフトウェアライフサイクルプロセスを適用することが重要であるとの考えを示しています。医療機器で使われるスタンドアロンソフトウェアの一部やコンポーネントとして使用されるOTSソフトウェア、完全採用型のOTSソフトウェアにも、2015年第50号通知に定められる新しい要件が適用されます。
基本前提事項
ソフトウェア安全性分類クラスA、B、Cの割り当てを受けるうえで、申請者は、登録時に次の情報を含むソフトウェアの説明書を提出します。
- 基本情報‐ソフトウェアの識別、安全性上の分類、アーキテクチャドキュメント及び設計図、ハードウエアトポロジー、動作環境、使用目的、禁忌、登録履歴
- 導入プロセス‐開発の概要、リスクマネジメント、要件仕様、ライフサイクル、ベリフィケーション&バリデーション、欠陥管理、改訂履歴、臨床評価
- コアアルゴリズム
適用されるソフトウェアの安全性分類に応じて、必要な書類の分量や内容が異なります。
新たに追加された事項―ソフトウェアアップデート
ソフトウェアアップデートは、現行の規制では文書化が義務づけられており、CFDAによる審査の対象となります。医療機器の安全性及び有効性に影響がある大幅なバージョンアップ(適応保守及び完全化保守など)と、それらに影響がない軽微なバージョンアップでは、規制上の取り扱いが異なります。ソフトウェアの大幅なバージョンアップの場合、医療機器メーカーは修正版としてCFDAへの申請が必要ですが、軽微なバージョンアップであれば品質管理システムの一環として文書化が義務付けられるものの、許可更新時または修正時にCFDAによる審査が実施されるのみとなります。
2015年第50号通知ではまた、ソフトウェアバージョンやOTSソフトウェアの文書化要件ならびに、ソフトウェア及びソフトウェアコンポーネントの登録要件についての概要が示されています。
ULからの3つのアドバイス
中国での有害事象発生リスクの増加をうけ、CFDAはより厳しい医療機器規制を作成し、対応策の一環としています。規制要件は幅広い範囲での医療機器ソフトウェアを取り扱っているため、新しい原則への取り組みが困難になることが予想されます。ULでは、2015年第50号通知を満たすために以下の提言を掲載しています。
- 製品設計段階において規制要件に準拠するソフトウェア開発プロセスを導入すること。
- 開発段階におけるソフトウェア開発活動をすべて文書化すること。
- ソフトウェア設計が終了するまでに、規制要件に基づいた文書作成を完了すること。
最終的には、頑健なソフトウェアライフサイクルプロセスで文書化をしっかりと行うことが、審査時間を短縮し医療機器の市場導入を早める鍵となります。
Lin氏によるCFDAの新しい医療機器ソフトウェア要件の詳細をご覧になりたい方は、こちらをクリックしてUL paperにアクセスください。
UL社は46か国に事業所を設け、製品の安全性および適合性試験のエキスパートとしてグローバルにサービスを展開しています。ULの専門チームは、新しい規制要件の理解や、社内薬事業務チームにかかる負担の軽減など、規制対象企業の皆様を常にサポートいたします。詳しくはhttp://ul.com/まで。
著者の紹介
Beth Pedersen
ユタ州Salt Lake CityにあるMasterContorl本社のマーケティングコミュニケーションスペシャリスト。
マイクロソフト社、ノベル社、NetIQ社、SUSE社、Attachmate社含む企業ソフトウェアサイトで技術やマーケティングに関する執筆活動を行っている。University of Wisconsin, Madisonでライフサイエンスコミュニケーション学士号、およびIT University of Copenhagenでデジタルデザイン及びコミュニケーションの修士号を修得。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
ラベル:
医療機器
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Y. Uchino
2017年11月20日月曜日
UDI(機器固有識別子): ルールが十分であるとはいえない現状
FDAがUDIの形式及び内容に関する ドラフトガイダンスを発表 |
Hyman, Phelps & McNamara, P.C
医療機器(クラス II)へのUDI適用が義務付けられる期日の2カ月前である2016年7月26日、UDIの形式及び内容という最も基本的な概念に関連したドラフトガイダンスが発表されました。具体的には、業界及びFDA認定の発行機関に対し、UDIの形式及びその内容を「明確化すること」及び「UDI発行システムから生成されたUDIが、ルールに準拠していることをより確実なものとすること」を目的とすることが述べられています。
2013年9月にUDIルールが最終化されるとまもなく、第一号となる発行機関がFDAによって認定されています。それ以降、発行機関は、製造業者と協力してクラス III及びクラス IIのUDI発行に関する取り組みを実施してきました。不適合とみなされるUDIが発行されていることをFDAが認識しているといった記載はドラフトガイダンスにはありませんが、それがこのドラフトガイダンスの含意ではないかと思われます。例えば、ドラフトガイダンスには「FDA認定各UDI発行機関は、UDI付与を目的とするシステムの開発及びオペレーションに際し、製造業者がFDA認定発行機関のシステムを使用することにより、UDI表示要求事項に準拠するUDIを作成することが確実となることが至って重要である」という内容が示されています。
ウェブセミナー: Working on a Post-Inspection FDA
認定UDI発行機関からUDIを取得済である製造業者には、ドラフトガイダンスにおける上記内容が、UDIの表示要求事項を満たしていないUDIが実際に発行されていると読み取れることから、不安を抱くこともあるかもしれません。しかしドラフトガイダンスでは、製造業者に発行されたUDIの適合性を確認すべきだとか、要件を満たしていないUDIが発行されているといった内容をFDAが認識しているとの記載もありません。万が一、基準を満たしていないUDIをFDAが認識しているのであれば、ガイダンスにそのような内容が記載され、不十分なUDIの是正方法に関してもう少し、直接的なガイダンスを製造業者及びUDI発行機関に向けて示すはずです。
また、ドラフトガイダンスには、UDIルールの最終化以降に発表されたルールやガイダンスでは述べられていない新しいコンセプトが紹介されています。しかし、「データデリミター(Data Delimiter)」や「UDIキャリア(UDI Carrier)」などが紹介されている一方で、これらは発行機関が既に使用されているものなのか、それともUDIの形式及び内容の生成における全く新しい方法であるのかは、明確ではありません。しかし、既に発行済のUDIの順守状況を踏まえて、FDAが認識している課題に対する是正方法として、このようなコンセプトが現段階で紹介されているのかもしれません。しかし、このような点について、ドラフトガイダンスでは明確には述べられていません。
FDAは、このような最終段階においてガイダンスを発行した理由や、法規制を満たしていないUDIの可能性、新しい用語が導入された理由について、もう少し明確に説明する必要があると思います。また、製造業者が発行機関から取得したUDIが要求事項を満たしていない場合、それらの対応に要する猶予期間をFDAは与えるべきであり、UDIの取得に積極的に取り組んできた企業に対する法的措置は取るものではないと思います。
※本記事は著者の許可を得て、転載しています。
著者のご紹介
Jennifer D. Newberger
クライアントである医療機器メーカーの薬事戦略構築や製品アプリケーションの準備、ラベリング、広告、プロモーションに関する法令順守、強制措置などでサポートを行っています。ヒト組織に由来する製品に関するFDA規制の専門家として、コンビネーション製品に関する問題にも取り組んでいます。また、FDAに対する薬事スケジュールや契約、対応に関するコンサルティングを行い、医療機器メーカーを代表してFDAとの話し合いに出席するといった活動にも携わっています。薬事分野では、IDEや510(k)、de novo 、PMA申請、ファイリングの準備、法令遵守では、MDRやリコールQSRに関し企業へのアドバイス、大企業から中小企業まで、事業の立ち上げをサポートしています。前職では、FDAのCDRH(Center for Devices and Radiological Health)でポリシーアドバイザーとしての経験を有していたことから、当局内部のプロセス及びプライオリティを熟知しており、医療機器に関するルールが発令された際に、このような行政側の視点を意識したアドバイスを提供しています。
関連記事:
"Need Help Navigating UDI? FDA Can Help"
"The Future of Medical Device Registries"
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Y. Uchino
2017年11月15日水曜日
ISO、複数の規格に対する変更を実施
B. Christine Park CQA, CQM/OE Consultant
品質マネジメントシステムやその他の規格の改定に伴い、期限内での対応が求められています。ここ数年で改定された主な規格は以下の通りです。
これら3つの規格は、過去数年の間に改定され、多くの企業が用いる重要な規格です。規格が改定される場合、企業には新しい規格への移行期間として、通常は3年という期間が設けられています。上述の規格においても3年以内の移行が求められています。3年と聞くと時間は十分にあると思うかもしれませんが、実際にはそう長くありません。時は刻一刻と過ぎていきます!今すぐ自社の事業に関連する改定箇所や要求事項を確認してみましょう。
新ISO 9001:2015 及び他の規格は「全10章」の章立てになり、シンプルかつ標準化することを目的に再構成されました。一方で、ISO 13485:2016 の章立ての改定は容易ではなく、新しい規格の発行に間に合わないとされました。その為、ISO13485:2016の章立ては従来のままとなり、ISO13485技術委員会により本文書に新しい概念が数多く盛り込まれました。
注目すべき重要な改定点がいくつかあります。
QMSが既に確立されている企業でも、この機会を予備調査として、現在の対応状況をご確認いただければと思います。文書や記録を確認することで、この新規格にどの程度、準拠しているかを把握できます。また、あまり複雑化せず、シンプルに必要な作業だけを行い、対応を目指すという考えも重要です。そして、新規格への対応も実現し、企業戦略と一致したQMSが構築できれば、それは、事業運営として非常に有益な成果になることを確信しています。
著者のご紹介
Christine (Chris) Park
医療機器、IVD、バイオテクノロジー/医薬品分野におけるR&D及び製造の経験から、品質システムや品質管理(CAPAや苦情、監査など)に対するコンサルティングを提供している。また、薬事申請のサポートとして、技術書類の作成やレビュー、リスクアセスメント、変更管理なども直接的に支援している。現在は、AAMI TC210規格委員会のメンバーとして積極的に活動しながら、改訂版のISO 9001:2015やISO 13485:2016、FDAの連邦規則集改訂 (820、 210/211、食品)の導入や移行のための企業向けコンサルティングを行っている。
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様々なISO規格が改定、移行期日までに対応を |
品質マネジメントシステムやその他の規格の改定に伴い、期限内での対応が求められています。ここ数年で改定された主な規格は以下の通りです。
- ISO 9001:2015 品質マネジメントシステム
- ISO 13485:2016 医療機器 — 品質マネジメントシステム
- ISO 14001:2015 – 環境マネジメントシステム
これら3つの規格は、過去数年の間に改定され、多くの企業が用いる重要な規格です。規格が改定される場合、企業には新しい規格への移行期間として、通常は3年という期間が設けられています。上述の規格においても3年以内の移行が求められています。3年と聞くと時間は十分にあると思うかもしれませんが、実際にはそう長くありません。時は刻一刻と過ぎていきます!今すぐ自社の事業に関連する改定箇所や要求事項を確認してみましょう。
新ISO 9001:2015 及び他の規格は「全10章」の章立てになり、シンプルかつ標準化することを目的に再構成されました。一方で、ISO 13485:2016 の章立ての改定は容易ではなく、新しい規格の発行に間に合わないとされました。その為、ISO13485:2016の章立ては従来のままとなり、ISO13485技術委員会により本文書に新しい概念が数多く盛り込まれました。
- QMSは、経営戦略及び事業目的と一致するものであること
QMSは、ビジネス活動の一環であることが期待される一方で、これまでは一般的に、別の活動として管理されてきました。本アプローチによって、組織全体で一貫性が強化される契機となることが期待されます。品質を強化することは、より良い企業運営につながるものなのです。 - 組織の状況の把握と判断
「規模に見合った戦略の実践」:経営陣は、継続的に品質システムに対して取り組むことで、自社のマネジメントシステムの課題やニーズを把握することができます。
- マネジメントシステムに対する経営陣のコミットメント
経営陣は、品質の確保を目的として、QMS及び従業員へのコミットメントを示すことが要件となっています。経営陣が積極的に関わり、QMSが優れた企業運営の手法であると認識されていけば、コスト削減につながり、安定した企業運営が実現できます。
- プロセスアプローチの適用
不適切な運用管理の場合、業務間の連動が正しく機能しないケースも多く、結果として、再作業などの無駄が発生します。企業のQMSや経営手法にプロセスアプローチを導入することで、部門や個人の孤立化といった組織の細分化を防止し、安定した企業運営に繋げることができます。
- マネジメントシステムと予防処置
「予防処置」の考えは、リスクの特定や軽減といったマネジメントシステムの目的と並列であることから、是正処置とは切り離し、システム全体を対象とした活動に変更となりました。予防処置を例外として扱うのではなく、リスク評価と組み合わせた適切な管理体制が必要です。
- 文書化した情報
「文書化された手順」や「記録」という用語は、「文書化した情報」に変更されました。要求事項として求められているのは、手順書や作業指示書などの管理、または、実施した業務の証拠としての記録の管理です。ただ、「情報」という言葉の定義は広義な為、企業側で解釈を決めることができます(※この変更はISO 13485には含まれません)。
- 改善機会の発見
リスクベース思考に関連することですが、改善機会と想定結果をリスクベースで評価し、適切な判断をすることが期待されています。
- QMSに対する変更の管理
QMSの計画的な運用が求められており、その運用に影響を与えるような変更を実施する場合、必ずリスク評価を行い、変更内容が適切に導入されたことを保証できるような枠組みが必要となります。
- 組織としての知識
「組織としての知識」という概念が発表されました。これは、人や組織に変更があった場合でも、事業運営に影響を与えないよう、組織として知識を管理することが求められています。
QMSが既に確立されている企業でも、この機会を予備調査として、現在の対応状況をご確認いただければと思います。文書や記録を確認することで、この新規格にどの程度、準拠しているかを把握できます。また、あまり複雑化せず、シンプルに必要な作業だけを行い、対応を目指すという考えも重要です。そして、新規格への対応も実現し、企業戦略と一致したQMSが構築できれば、それは、事業運営として非常に有益な成果になることを確信しています。
著者のご紹介
Christine (Chris) Park
医療機器、IVD、バイオテクノロジー/医薬品分野におけるR&D及び製造の経験から、品質システムや品質管理(CAPAや苦情、監査など)に対するコンサルティングを提供している。また、薬事申請のサポートとして、技術書類の作成やレビュー、リスクアセスメント、変更管理なども直接的に支援している。現在は、AAMI TC210規格委員会のメンバーとして積極的に活動しながら、改訂版のISO 9001:2015やISO 13485:2016、FDAの連邦規則集改訂 (820、 210/211、食品)の導入や移行のための企業向けコンサルティングを行っている。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
2017年11月13日月曜日
SEMICON JAPAN 2017出展のお知らせ
マスターコントロールは、エレクトロニクス製造サプライチェーンの国際展示会「SEMICON Japan 2017」に出展致します。
世界中のソフトウェアやデバイスメーカーが出展する「World of IoT」ゾーンにて、IoT時代に求められる品質マネジメントシステムの在り方や、品質管理や品質保証といった業務の効率性改善を支援するソリューションをご紹介しています。
皆さまのご来場を心よりお待ちいたしております。
会期:
2017年12月13日(水曜日)~12月15日(金曜日) 10時~17時
会場:
東京ビッグサイト 東展示棟・会議棟
出展ゾーン/小間番号:
WORLD OF IOTゾーン/3752
主 催:SEMI (Semiconductor Equipment and Materials International)
公式ウェブサイト:
http://www.semiconjapan.org/jp/
世界中のソフトウェアやデバイスメーカーが出展する「World of IoT」ゾーンにて、IoT時代に求められる品質マネジメントシステムの在り方や、品質管理や品質保証といった業務の効率性改善を支援するソリューションをご紹介しています。
皆さまのご来場を心よりお待ちいたしております。
SEMICON Japan 2017 開催概要
会期:
2017年12月13日(水曜日)~12月15日(金曜日) 10時~17時
会場:
東京ビッグサイト 東展示棟・会議棟
出展ゾーン/小間番号:
WORLD OF IOTゾーン/3752
主 催:SEMI (Semiconductor Equipment and Materials International)
公式ウェブサイト:
http://www.semiconjapan.org/jp/
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イベント
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Y. Uchino
2017年11月7日火曜日
Masters Forum 2017へのお礼
先日は、多くの方々にMasters Forum 2017へご来場いただき、誠にありがとうございました。
本年度は、イベント5周年ということもあり、3セッション同時開催というフォーマットにて開催した一方、不安もあったのですが、結果として、私たちが想定した以上に多くのお客様にご来場いただき、社員一同、感謝いたしております。当日は至らない点も多々あったかと思いますが、そのような点も含めて、次回以降、よりクオリティーの高いイベントとして運営できたらと考えております。
また、概要等が決まりましたら、追ってご連絡いたしますが、2018年も11月6日(火)に開催を予定しています。
よりコンテンツを充実させ、ご来場いただける全ての方々にとって、実りある時間を過ごせるようなイベントとして企画できたらと考えておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
Masters Forum 2017 イベント事務局
本年度は、イベント5周年ということもあり、3セッション同時開催というフォーマットにて開催した一方、不安もあったのですが、結果として、私たちが想定した以上に多くのお客様にご来場いただき、社員一同、感謝いたしております。当日は至らない点も多々あったかと思いますが、そのような点も含めて、次回以降、よりクオリティーの高いイベントとして運営できたらと考えております。
また、概要等が決まりましたら、追ってご連絡いたしますが、2018年も11月6日(火)に開催を予定しています。
よりコンテンツを充実させ、ご来場いただける全ての方々にとって、実りある時間を過ごせるようなイベントとして企画できたらと考えておりますので、引き続き、よろしくお願いいたします。
Masters Forum 2017 イベント事務局
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Y. Konishi
2017年9月19日火曜日
QAについて:プロサッカーとの類似点及び意外に知られていない4つのポイント
QAとプロサッカーには多くの共通点があります。 何が頭に浮かびますか? |
Marketing Communications, MasterControl
1979年は様々な重大な出来事があった年でした。ソニーからウォークマンが発売され、マイケル ジャクソンが自身の成功の先駆けとなるソロアルバム「Off the Wall」を発売、マーガレット サッチャーが英国史上初めて女性首相に選ばれました(サッチャー女史についてはこの後もう少し詳しく説明いたします)。
しかし、品質分野で働いていた方々は、1979年と聞くと、別の出来事を思い出すはずです。この年は、FDAの21 CFR Part 58 (1)に「Quality Assurance(QA)」という文言が盛り込まれ、最初のGLP規制として認識されました。
加えて1979年は、QAの専門家であり、現在はスコットランドに拠点をもつGxPコンサルティング会社のTMQA社ディレクターを務めるDr. Andrew WaddellがQA分野での事業を開始した年でもあります。
同氏は、欧州で開催されたマスターコントロール ユーザー向けイベント「2016 Masters Conference」で、“The Challenges Facing Today’s Quality Assurance (現在QAが直面する課題)”と題した基調講演を行いました。Waddell氏は、ユニークな人生経験と37年にわたるQA分野での経験からまだあまり知られていない、QAの5つの側面について評価を行い、およそ40年が経過した規制が抱える問題解決にチャレンジし、品質業務における輝かしい未来について言及しています。
よく知られていないQAに関する5つの認識
Waddell氏がエジンバラ大学ヒト病理学の教授を務めながら研究者であったころ、別のキャリアに進むきっかけとなる出来事がありました。発端は、1979年5月にサッチャー氏(2)が首相に就任したことであり、「サッチャー政権が支出の削減を行い、医療分野での仕事の魅力が半減してしまった」とWaddell氏は述べています。それから1か月後にFDAからGLPが発令され、大手CROからWaddell氏にQAにおける新概念導入への参加要請がありました。
規制対象業界の発展に伴い、QAに対する認識は変わり、QAとは何であるか、また何がQAではないのかについての誤った認識が、専門家である監査担当者の間でも生じてしまうことが度々ありました。こうした誤った認識のひとつに、QA(品質保証)と品質管理(QC)は同じであるという考え方です。定義上、「保証」とは確信を提供するという意味ですから、QAに当てはめれば、品質に関する要件を満たすという確信となります(3)。一方、QCは試験に着目し、実際に品質要件を満たすものであるというエビデンスを提供することとなります。
「QA=品質管理と考えるのは根本的な間違いです」とWaddell氏は述べています。「我々の目的は、何かを見つけることではありません。我々の仕事は、品質に関する要件を満たしていることを保証し確信を提供することなのです。」
監査とは、こうした確信を提供する目的でQA分野にて使用されるツールのひとつなのです(4)。
2. 品質の二面性
品質とは何ですか?その答えはシンプルではありません。品質を完璧に定義する1行の文章は存在しないかもしれませんが、Waddle氏は文献から古典的な品質の定義を2つ紹介しています。
品質:明確に定められた基準に関するコンプライアンス
品質:顧客満足(顧客への感動提供)
問題は最終製品自体にあるのではない、それを規定する基準に問題があるのです。「基準が不適切であれば基準を満たしたところで品質は確保されません」とWaddell氏は述べています。
二番目の定義は一般的に使われていますが、やはり問題があります。スコットランドにあるタイヤ販売ショップとのWaddell氏の体験談を挙げています。顧客を100%満足させることがショップの方針であることを理由に、タイヤの価格を定価よりもずっと低い金額にしてくれないかと尋ねてみたという話です。価格が下がることで顧客を喜ばせることはできるかもしれませんが、ビジネス的には誤っています。もちろんショップのマネージャーは拒否していました。
Waddell氏は、いずれの定義も不十分であると述べています。「どちらの定義にも満足できません。理由は、品質には常に2つの側面があるからです。第一になすべきことを実行するということ、第二に正しい方法で実施するということです。
3. 適用される規制は「開発スペクトル(Development Spectrum)」で規定
開発スペクトルは、アイデアの段階から販売製品に至るまでのイノベーションプロセスを示しています。スペクトルの片側は「開発」フェーズで、オリジナルのアイデアを作り上げ、無限大の可能性を探っていきます。このフェーズでは「なすべきことを実行する」ことになります。このタイミングでは、何を創造し、どのような特徴が製品の付加価値となりうるのかを決定していきます。
スペクトルのもう一方側は「証明」フェーズで、ここでは正確性が必須となり、規制や安全に関する要件、顧客からの期待を確実に満たすことが求められます。あなたの素晴らしいアイデアが製品化された後は、製品の正確な動作の確保が必要となります。つまり、Waddell氏がいう上述の言葉「正しい方法で実行する」ことが求められるのです。
革新的なビジネスで創業した小規模企業のような場合には、発掘フェーズのすべての時間を新しいアイデアや製品の開発に費やしてしまいます。こうした企業にとっての品質とは、オリジナリティーや斬新さとなります。しかし、製品を販売するためには、既に多くの製品を販売しているような企業と同じ品質関連規制を遵守する必要があります。こうした企業が注力しているのは、一般的に、堅牢性やコンプライアンスとなります。ですから、革新的事業を展開する多くの企業は次第に解決困難な状況へと陥り、規制遵守が非常に難しくなってしまうのです。
「規制は、堅牢性、予測可能性、確実性などの特性に支配されますが、lifeという言葉はまた違ったものです」とWaddell氏は述べています。「Lifeという言葉はスペクトラムであって、新しいアイデアから販売製品に至るまでのひとつの旅を表します。同時に、品質システムにも反映されるべきものとなります。」
4. 監査担当者の担う役割は様々
監査担当者の仕事内容は明確かもしれませんが、見かけより多くの責任が課せられています。監査業務に加えて、次の役割を担わなければならないからです。
- 心理学者監査時、規制、治験実施計画書、モニタリングレポートやデータの記録といった監査の専門的な側面に監査担当者は多くの時間を費やします。また、監査対象の場所はどこか、使用されるツールは何か、どのような情報を収集すべきかといった手順的な側面もより細かく見ています。Waddell氏の経験では、専門的または手順上の問題が理由で監査が上手くいかなかったことは、ほとんどないということです。むしろ個人に原因があることの方が多いと言います。「監査実施時の面談では多くの方とお会いしますが、その方々のパーソナリティも様々です。その為、監査担当者はカメレオンのように、その様々なパーソナリティを受け入れ、監査を受ける側の立場に合わせる必要があるのです。」
- 技術者膨大な量の情報を取り扱っている拠点への監査の場合、従来の監査方法が効果的とはいえません。「多くのケースで、情報やプロセス、システム、手順というものは、必要だからでなく、生成が「可能」であるがために生成されているのです」とWaddell氏は述べています。「紙の山」の管理を避ける為、テクノロジーを用いることを推奨しており、テクノロジーの知識を有する監査担当者への期待が高まっています。
- 伝道者リスクマネジメントというのは新しい概念ではありませんが、Quality GurusにはじまりTotal Quality Management、Six Sigmaなど、近年品質における革新的な動向がみられます。Waddell氏は、リスク管理を行うことには賛成しているのですが、コスト削減のためのツールに限定してリスク管理を使用することには、警鐘を鳴らしています。「リスク管理は良い事だと思います。ただし、リソースをスマートに適用する目的で使用することが条件となります」とWaddell氏は述べています。「この目的で従来のQA手法を用いるのは問題でしょう。我々は、価値の確認の難しい記録の山の確認に多くの時間を費やすことがあります。」リスク評価のバリデーションを行い、それが意図する目的にかなっていることを確認し、監査担当者は模範を示し企業をサポートしていくことが重要となります。
5. プロサッカーとQAの様々な共通点
以前はプロサッカーの審判であり、現在はスコットランドサッカー協会のメンバーでもあるWaddell氏は、2つの異なる分野の比較をしています。Waddell氏によれば、サッカーの審判も監査もルール (例:FIFA 試合規則とFDA GLP)と実際の行動を照らし合わせてみることが目的であるので、基本的な類似点が数多くあると言います。プロサッカーチームはすべてが同じというわけではありません。ですから、個々のサッカークラブからのニーズやレベルに応えることができるように、協会のライセンス認定はレベル化されています。Waddell氏はQAがサッカーから学べることがいくつかあると述べています。
第一に、サッカーの審判は、目にした出来事を軽度(minor)、重大(major)、危険(critical)に分類するようなことはしません。QA分野でも同じであれることをWaddell氏は望んでいます。品質監査について、「私は正しいか、誤りかということを論ずるよりも、軽度か重大かに分類することにより多くの時間を費やしてしまっています」と述べています。「実際に問題に取り組むことよりも、グレード分けを論じることにエネルギーが注がれてしまうのです。」
さらに、プロサッカーでは、ルールを守ること、そして審判からの指摘への対応はすべて監督の責任となります。どのように行動するかについて審判からアドバイスすることはなく、ルールを守り様々な問題を是正することは各クラブに一任されているのです。
最後に、問題の報告は、素早く効果的に行われています。サッカーの場合、審判を行った日のクロージングミーティングで、審判は試合中の問題点をシンプル且つ迅速な形で報告します。従来のGxPモデルでは、回答が必要となる場合、レポーティングに数週間かかってしまうこともあります。
プロサッカーの例に倣い、QAでも法令遵守の構造により広く多様性を持たせることを提案しています。「入門レベル」から始め、次第により厳しい基準を満たすことが出来るようになれば、より高いレベルで行動できるようになるはずなのです。
1979年、Waddell氏がヒト病理学の専門家から初のGLPスペシャリストとなり、21 CFR Part 58を読んだ際に「これは悪魔崇拝儀礼のようだ」と感じたそうです。しかし、じっくりと目を通すと考えは変わっていったというのです
「我々にルールは必要なかったのです」とWaddell氏は言います。「実際、品質というのは直感的なものであり、我々にとっての品質とはGLPそのもの、つまり、信頼性及びデータの一貫性の確保に取り組む環境を確保することなのです。」
Waddell氏のプレゼンテーションはこちらから
Dr. Andrew Waddell
TMQAディレクターを務め、品質管理全般で30年以上にわたる経験からまたこの分野の専門家として国際的に認知され品質保証(QA)の調査に関する教育を行っている。QAシステムの研究及び開発が専門で、様々な「Good Practice」規則に関するコンサルタント及び監査担当者として活躍。国際会議で定期的にQAに関する規制及び監査に関するプレゼンテーションを行っている。
同氏は、2001年、国際的な大手QAリサーチ関連企業であるTMQA社を設立。本社はスコットランドのエジンバラにあり、スロバキアのBratislavaにも拠点がある。TMQAでは、GCP、GLP、GMP、GVP、GC関連規制に関するトレーニングや監査、コンサルタントを行っている。TMQA社のユニークな特長は、コンサルタントや契約者からは独立した同社スタッフ独自の豊富な経験と多様なサービスを提供していることである。
Waddell氏は以前、FIFAのエリートリストに名を連ねたサッカーの国際審判で、スコットランドサッカー協会のプロ委員会(Scottish Football Association’s Professional Game Board)のメンバーでもある。スコットランドライフサイエンス協会の諮問委員会(Advisory Board of the Scottish Lifesciences Association)のメンバーでもある。
著者のご紹介
Beth Pedersen
ユタ州ソルトレイクシティにあるMasterControl本社マーケティングコミュニケーションスペシャリスト。Microsoft社 Novell社 NetIQ社 SUSE社 Attachmates社などの企業に向けたものも含め、ソフトウェア関連でテクニカル分野及びマーケティング分野で執筆を行っている。University of Wisconsin-Madisonライフサイエンスコミュニケーションで学士号を取得し、IT University of Copenhagenデジタルデザインで修士号を取得している。
引用元:
1) 21 CFR Part 58. https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfcfr/CFRSearch.cfm?CFRPart=58
2) Margaret Thatcher Foundation. http://www.margaretthatcher.org/essential/biography.asp
3) ISO 9000:2015. http://www.iso.org/iso/catalogue_detail?csnumber=45481
4) ISO 19011. http://www.iso.org/iso/catalogue_detail?csnumber=50675
関連記事:
2016 Masters Conference in Amsterdam Sheds Inspiring Light on Quality
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投稿者
Y. Uchino
2017年7月26日水曜日
「改善」は気づかい
同僚のホゼとピーターが改善の道へと 第一歩を踏み出す。 |
Markovitz Consulting
ピーターとホゼは、長年一緒に働いています。パンチプレス機のオペレーションを任されているピーターは63歳ですが、一日の終わりにはビルの間を抜け、75ヤード離れたゴミ捨て場まで50ポンドの廃棄物を引きずって運んでいます。
ホゼはピーターより20歳ほど若いため、ピーターが腰を痛めないように、できるだけゴミは自分が運ぶようにしていますが、仕事上、毎回という訳にもいきません。
現在、この会社の改善に取り組んでいるのですが、まずはシンプルに困っていることから改善していきましょうと提案しています。いくつもの座学を受ける、5S活動を実践するなど、ビジネスを「大きく変える」ことにチャレンジするのではありません。ただ、昨日こうであったことが必ずしも今日もそうでなければならない!という必要はないということに気付いてもらいたいのです。誰もが状況をより良く、よりシンプルに変化させることができるのだということを知ることが、改善への第一歩だと思います。
ピーターとホゼは無口な人間です。キックオフミーティングやトレーニングプログラムにおいても、彼らが何かを発言することはありませんでした。変化を拒んでいるのか、あるいは長年のクロックパンチングに従事するなかで、仕事に関する最小限の要求以外、何かを求める気力を失ってしまっているのかもしれません。
資料ダウンロード:変更管理 ~FDA及びISO環境における継続的な品質改善~.
ですから、掲示板に張り出されたホゼの改善案カードを見て私は驚きました。加工現場のごみ箱にキャスターを付けたいというのです。ホゼにこの提案について尋ねると、「ピーターが心配です。彼は63歳です。ごみ収集箱までゴミを引きずって腰を痛めて欲しくないのです」とだけ答えました。
節約経営の指導者や(私のような)節約に関するコンサルタントをしている者は、大抵、コスト低減、増収、リードタイムの短縮、品質の向上などについてをお話します。しかし、これらは日常業務とはかけ離れており、改善がそこでなぜ重要なのかという理由を働く人の視点から語られていなかったのです。企業の利益を第一に考えるよりも、より働きやすく人の役に立つ改善を考えることの方が、重要で嬉しいことでしょう。新郷重夫氏は、4つの改善の最終目標は、優先度の順に「よりシンプルに、より良い品質で、より早く、より安く」と述べています。
ホゼがゴミ箱に取り付けたキャスターは、企業業績への影響はゼロです。しかし、改善への第一歩です。そして、それよりも重要なことは、これは、ホゼの気づかいが示されているということだと思います。
複写厳禁 The Lean Post掲載記事
改善の道へ第一歩を踏み出せましたか?下のコメント欄にご意見をお寄せください。
著者のご紹介
Dan Markovitzは、リーン式の新しいアプローチの指導及び実践により、より迅速、より堅牢な組織運営のためのアドバイスをしている。長年、リーン方式の考えを伝えるためのトレーニング講師を務め、lean journeysへのアプローチ方法を開発し、企業がリーン式の実践を再び活発に行うためのサポートを行っている。米国及び欧州で活躍。WL Gore社、Abbott Vascular社、NYU Medical Center、the New York City Department of Health, CamelBak社、Clif Bar社、Industrial Revolution、Goodyear Tire社を顧客に持つ。
He is a faculty member at the Lean Enterprise Institute and teaches at the Stanford University Graduate School of Business, the Stanford Continuing Studies Program, and the Ohio State University’s Fisher School of Business.
Lean Enterprise Instituteの講師であり、Stanford University Graduate School of Business、 Stanford Continuing Studies Program及び Ohio State University’s Fisher School of Businessで教壇に立つ。
Shingo Research 賞受賞のA Factory of One 及びBuilding the Fit Organizationの著者でもある。Lean UK SummitやReykjavikで開催されたLean Island Conference、LEI Transformation Summit、 Shingo International Conference、その他数多くのAME Conferencesにて発表の経験を有す。
Markovitz氏は日本に4年在住した経験があり、日本語が堪能。Wesleyan University にてBAを取得、及びStanford University Graduate School of BusinessのMBAを取得しています。連絡先;dan@markovitzconsulting.com.
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2017年6月12日月曜日
SCIOコンセプト:費用対効果のよい臨床試験の実施
過去20年間における新医薬品の開発費用は物価上昇率より7.4% 上昇しており、こうした上昇は臨床試験が主な要因とされています。 |
Founder/CEOBBCR Consulting
(Boston Biotech Clinical Research)
新薬開発には膨大な費用がかかることはよく知られています。2014年の米タフツ大学医薬品開発研究センターで実施された調査から、「新規処方医薬品1品目の販売承認の取得までにかかる税引前費用は、平均2兆5580億ドルと算出された」とDr. Henry G. Grabowski やDr. Ronald W. Hansenによる報告があります。過去20年間における新医薬品の開発費用は物価上昇率よりも7.4%上昇しており、この一因となっているものに臨床試験が挙げられます。しかし、バイオテクノロジー関連の研究費用が増大しても臨床開発の成功率が上がっているわけではありません。むしろ、バイオテクノロジー業界におけるイノベーションの大きな支障となり、医薬品や医療機器の価格高騰へと繋がり、消費者にも影響を及ぼしています。将来の医療に役立つライフサイエンス製品を開発し、開発プロセスのコストパフォーマンスを高める為の最善策を考える必要があるのです。
「共通認識」とは?
バイオテクノロジー関連企業では、販売候補の新製品が創出されると非臨床試験プロセスにおける開発が行われます。開発候補品のバリデーションが完了すると、イン・ヴィトロ研究または動物を対象とする安全性及び有効性に関する試験が行われ、次に臨床試験へと移行して第1相、第2相、第3相試験が実施された後に、当局による製品販売承認へと進みます。何十年もの間、この業界に属するすべての企業が治験に対し同じ道筋を辿ってきました。
そこで、臨床治験計画届(Investigational New Drug: IND)や医療機器に対する適用免除(Investigational Device Exemption:IDE)の計画の仕方に着目することが重要となります。またそれは本稿で紹介する質問に対する回答の鍵となるものでもあるのです。
バイオテクノロジー/製薬企業では基礎研究が完了すると、IND/IDE申請書提出のための作業に移ります。被験者に対する一定レベルの複雑性や侵襲性のリスクを示した医療機器のみがIDE申請を行うことになります。
IND申請では、フォーム1571、1572、3674、CMC情報、毒性情報、イン・ヴィトロ研究及び動物モデル試験に関連する過去の試験からの情報について、FDA(食品医薬品局)へ提出することが求められています。さらに(1)治験計画 (2) 治験薬概要書 (3)治験実施計画書といった臨床関連情報の提出も必要となります。
IDE申請の場合、過去の研究、リスク分析、機器に関する情報、製造、ラベリング・モニタリング手順、環境への影響に関する調査についてなど、初期の調査研究で得られた前臨床情報の提示が求められます。しかし、IDE申請を進めるという企業の意向が決まり次第、 (1)治験計画 (2)治験医師に関する情報 (3) IRB に関する情報 (4)治験実施計画書のFDAへの提出が求められます。
上述のプロセスは数十年間行われてきたものです。こうしたプロセスのどこで臨床試験の実施が困難になるほどの高額な費用が掛かっているのでしょうか。また、臨床試験を適切に実施するための解決策には何があるのでしょうか。
- 製品の損失となるミスを回避する
- 開発にかかる費用の削減及び期間の短縮化を図る
- 被験者の安全性を確保するために臨床試験を最適化する
- 治療費が低くより良い治療法を求める
- 適切な治療を受ける
- 優れた治療を個人に提供する
- ヘルスケアにおける持続可能性を向上する
- イノベーションを推進し、社会への付加価値を創造する
ガイドラインに示されているように、IND/IDE申請はいずれも治験計画、治験薬概要書、治験実施計画書の提出が求められています。審査を受けるバイオテクノロジー企業は、主に臨床計画書においてとなりますが、治験薬概要書、治験実施計画書においても開発中の製品の根拠を示す必要があります。IND/IDEには臨床開発ストラテジーに関する記述や、規制当局からの質問に対する回答も提出しなければなりません。
次に、費用対効果の低い臨床試験を引き起こしてしまう、犯しがちなミスをご説明します。
「犯しがちなミス」とは?
臨床試験費用を効果的に活用できないといった状況を生む、多くの企業が犯しがちなミスとはどのようなものでしょうか。それは、クリニカルストラテジーの価値を認識していないがために、マイルストーンに基づいた意思決定が行われ、開発目標やギャップを見失ってしまうということです。
臨床試験全体を遂行するに十分な計画をしていると確信している医薬品及び医療機器企業が大半ですが、多くの場合、IND/IDE申請は第1相試験の実施計画書に限定されています。これでは、規制当局による製品レビューは完璧ではありませんし、治験依頼者となるバイオテクノロジー企業は、臨床研究の開発手段について別の方法を模索したり、適切であるだろうその他の選択肢を検討したりすることに制限がかかってしまいます。同様に、臨床開発のいずれの段階でも、単一部門よりも複数の部門で協力し合うことが非常に重要です。多くの場合、薬事文書の準備や提出に関する業務は薬事知識を有する人員に、試験実施計画書の作成は一意に臨床試験実施担当者に任せてしまい、関連する医療ニーズを的確に理解しないで計画書作成の意思決定がされているのが現状です。
治験依頼者である企業は、大抵、IND/IDE申請に向けて第1相試験の計画書を準備することで十分だと捉えており、ストラテジーもないままにIND/IDE申請を行ってしまいます。分かりやすい例を挙げてみましょう。
多くの場合バイオテクノロジー企業では、第2相試験からエンドポイントのバイオマーカーや製品の差別化について検討を開始します。しかし、このような検討は計画作成の初期段階の「クリニカルストラテジーの計画」として検討すべき内容であり、これによりバイオテクノロジー企業は、適時に必要なデータを入手することが可能となるのです。
図 A: Synthropy調査結果
図Aは第2相試験の不成功原因について示すもので、第2相試験の不成功例の少なくとも29%が臨床開発開始時のストラテジーが不十分である、あるいはストラテジーを立てていないことに起因していることが分かります。
そのような場合には、「ストラテジー」の概念が「プロセス」の概念と混同されてしまっているのです。この場合の「プロセス」を定めるという行為は、地図を見ながら山に登ってはいるが、最適なルート、障害物、時間、安全性についての手掛かりは全くない状態と類似しています。一方で、「ストラテジー」を考えるということはハイキングにかかる時間や、適切な持ち物、遭遇するかもしれない問題や危険をすべて把握し、最悪の場面に遭遇した場合の解決策も準備している状態となります。
薬事規制の道筋が明確になれば、経済的にも科学的にも最も適切なアプローチを積極的に選択することができ、タイムリーなリソースプランニング、そして何より臨床試験成功への最善の策の見極めに確信が持てるようになるのです。
図 B:クリニカル/薬事的ストラテジーの基礎及びフェーズにかかる影響
IND/IDE申請における規制に基づいた臨床試験の薬事的ストラテジーの策定に必要な要素を図Bにまとめました。こうしてみると、包括的なクリニカル/薬事的ストラテジーを策定し、製品に応じてカスタマイズすることは、第1相/第2相以降も臨床試験開発のあらゆる段階に効果が波及するであろうことがわかります。
臨床計画とは?
臨床計画という用語は、単に一連の事象を示す言葉ではありません。総合的分析結果を示すものであり、「薬事的な臨床開発ストラテジー」を策定するものです。個人的には「臨床改革ストラテジー(SCI:Strategic Clinical Innovation)」と呼んでいます。これには第1相試験から概念実証試験(proof-of-concept study)までが関与してきます。研究的試験の根拠、治験対象母集団の選択、IND/IDE申請後の臨床試験デザイン、動物における毒性データから予測される開発上のリスク、あるいは同一製品また同一クラスに分類される製品を使用した過去に実施されたヒト試験などの情報が必要とされます。
SCIO(Strategic Clinical Innovation Organization)コンセプトのバリュープロポジションは、臨床研究へのアプローチの合理化、トライアルモデルへのストラテジーの導入と費用対効果向上の実現です。ストラテジーがイノベーションの鍵であるといった考えを基に、IND/IDE申請における医薬品開発プロセスを改め、臨床試験開始前の段階で製品に適したクリニカル/薬事的ストラテジーを導入することで、臨床研究全般におけるイノベーションが可能となります。SCIOコンセプトで重要なのは、非臨床試験からIND/IDE申請及びヒト試験までの移行の時期に時間をかけることです。SCIOコンセプトを導入することは革新的ソリューションとなり、企業では医療や市場のアンメットニーズ(未だ満たされていない医療ニーズ及び市場ニーズ)、継続的薬事イノベーション、医療需要を満たすことを目的とし、非臨床データの評価を行うようになります。SCIOコンセプトでは、薬事的なバックグラウンドと科学的、医学的知識との融合、及び将来の医薬品のあるべき姿を十分に理解することも必要となります。
今日における臨床研究の実施や臨床試験デザインの決定は複雑かつ多大な労力のいる作業となっていますので、一般的な段階的アプローチではなく、包括的なストラテジーに従って進めることが重要となります。SCIOコンセプトでは一元化された総合的なストラテジーの策定が導かれ、そのなかで関連部門が製品開発及び臨床試験の双方の最適化に関与して行くこととなります。最終的には、薬事的な臨床試験ロードマップが作成され、デザイン重視の試験が計画され、試験デザインの合理化を図り、臨床計画において各試験に一意的な目的が設定されることとなるのです。これによって、データセットが完成されないがために費用や時間をかけて同じことを繰り返さなければならない状況を回避することが可能となります。
これは非常に重要なこととなります。なぜなら、臨床試験に関する適切な薬事的ストラテジーやロードパップを策定せず、この段階を省略してIND/IDE申請書を提出すれば、製品開発にとても重要な規制当局による有用なフィードバックやアドバイスを受ける機会を逸してしまうからです。投資者側にとっては、規制当局からの製品開発計画への薬事的フィードバックやお墨付きをもらえるということは何より歓迎されるものです。さらに、臨床試験に関する薬事的ストラテジーやロードマップが策定するということは、ライフサイエンス製品開発で一番費用のかかる臨床試験の費用対効果を最大限にできるということなのです。
臨床試験の開始までに臨床試験の薬事的ストラテジーを策定し、ライフサイエンス製品の開発を最適化させれば、費用対効果を著しく高めて臨床試験にかかる費用と時間を最大30%削減することが可能となります。また臨床試験の被験者数の縮小、達成可能なエンドポイントの選択、PoCの特定などのさまざまなベネフィットが想定できるのです。臨床試験を実施するための費用、時間、リスクを考える際には、臨床計画及び臨床試験デザインに対するセカンドオピニオンは貴重であると考えます。
結論
臨床試験に関する薬事的ロードマップやストラテジーの策定は、コストパフォーマンスの高い臨床試験を実施するために必須です。臨床試験におけるバイオテクノロジー企業は、ストラテジーとロードマップを策定することは今日の臨床試験にかかる費用対効果の問題を解決する鍵となることを認識する必要があります。
臨床開発やIND/IDE申請準備にストラテジー策定を組み入れるということを特別な作業と捉えたりせず、ストラテジー策定が最重要事項であり、これによって臨床試験開発が単純化され、非常に大きな利益を与えてくれると認識することで、誰もが犯してしまうミスは回避できるのです。
著者のご紹介
Dr. Candida Fratazzi
バイオメディカル研究分野で25年の経験を有し、SCIOコンセプトを開発。臨床開発におけるイノベーションを積極的に支援することを目的としたBBCR Consulting (www.BBCRConsulting.com) 社を2009年に設立。免疫学の上級学位を取得している。希少疾病の専門家でもあり、のう胞性繊維症、ゴーチェ病、多発性硬化症などの研究に取り組む。バイオテクノロジー、医薬品、医療機器企業のコンサルタントとして、臨床/薬事的な開発ロードパップやコストパフォーマンスの良い臨床試験デザインについてアドバイスを行う。
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Y. Uchino
2017年5月22日月曜日
Inspection Readiness:情報の透明性強化と連動した査察対策
監査担当者としての私の目標は、被験者の安全や権利を守りながら、 信頼性の高いデータが得られる方法で治験が実施されることです |
Quality Assurance Consultant | Independent Auditor
Director, Muse Clinical
監査や査察は謎に包まれている部分が多く、何が起こるかを正確に把握できず、不安に思われる方も多いのではないでしょうか。間違ったことを言ったらどうなるだろう?回答できない場合は? 要求される資料が提供できなかったら?これらは確かに起こり得ることですが、完璧を求める監査担当者や査察官などいません。監査担当者が求めているのは透明性です。被験者の安全や権利が確保され、信頼性の高いデータが得られる方法で治験が実施されることが、監査担当者としての私の目標です。治験依頼者は、継続的に治験施設との連携を図ることを求めており、不備が見つかった場合には問題を特定し、改善に取り組みます。査察官も、治験実施に関する査察で目指すものは同じです。では、規制当局が求める品質で治験が実施されること、及び査察への即応性が高いということはどのように確認できるのでしょうか。
まず、Inspection Readinessの意味について理解していきましょう。Inspection Readinessを簡潔に説明すると、査察への準備ができている状態であり、包括的に治験の実施状況が明確で正確に記録化されている状態で、外部の監査担当者や査察官にも確認できる状態を意味します。ここで重要なことは、Inspection Readinessは継続的かつリアルタイムである点で、それは、いつでも査察に対応できる品質レベルで運用されているという点です。査察の準備というのは、にわか仕込みでは通用しません。
これらを踏まえ、査察官として我々が持つ知識をどのように活用できるのか、つまり、査察における着眼点や評価方法について公共性の高い情報をどのように適用できるかについて、お話しさせていただきます。治験の運用や記録作成の手順を決める際、こうした情報をどのように利用すれば、より良い判断を下せるのでしょうか。治験施設及び治験依頼者双方のスタッフにトレーニングを実施することによって、治験の運用や記録の作成に関する認識や理解がわずかながらも深まるとすれば、それは多大なる変化をもたらしてくれることでしょう。治験モニターや治験依頼者のスタッフであれば、こうした情報を利用して、重大なリスクを伴う分野を特定したり、治験を実施するうえで、どの側面での記録作成に不備や問題が起こりやすいか等を理解するのに役立てることができます。また、治験医師の場合には、こうした情報を治験業務手順に盛り込むことにより、最も重要視される領域に専念できるようになります。
各国の査察関連資料には、査察官がどういった要素を最も重要と考えているかが記述されています。米国のBioresearch Monitoring (BIMO)ガイダンスには、査察の開始から終了までの運用手順が詳述されています。これは査察官向けのガイダンスですが、一般にも公開されているため、利用することができます。別の国の査察関連資料には、治験施設向けのものもあります。BIMOが最も詳細な情報がまとめられているガイダンスとなりますが、EUでは加盟国に対する一般的条項が盛り込まれた中核的なガイダンスがあります。カナダ保健省からは、詳細情報が記載された事前査察パッケージも提供されています。これらのガイダンスは、いずれもすべて同じ原則に則って作成されているため、国や地域を問わず、貴重な情報となるでしょう。
まずは、規制当局から提供されている査察に関する資料を熟知することが一番です。他国のものでも構いません。ご自身のスタディの中からひとつ選択し、着眼点や質問など1つ1つに対し、どのように回答するかを考えてみます。記録の内容で回答を裏付けできているか、文書化されずにスタッフの記憶にのみ残されているような情報はないか、監査する第三者は、作成した資料から経緯を理解でき、関連する質問すべてに回答することができるか、記録はALCOAの原則に準拠しているか。1つの治験に対してでも構いませんので、模擬監査のように質問を実践してみると、プロセス、文書化、トレーニング間のギャップの存在が明るみに出てくる傾向があり、ご自身の施設の別の治験に対しても対応可能となります。
治験責任医師の管理活動
査察で注目される要素のひとつである治験責任医師の管理活動を抜粋し、詳しく見て行きましょう。監査担当者として、私がどの治験施設でも共通する課題だと認識している内容です。治験責任医師(PI)が治験に適切に関与し、管理しているということをどのように立証しますか?治験の多様性を考えれば、関与のレベルも様々だと思いますが、管理活動を記録する方法は数多くあります。
鍵となるのは透明性です。治験責任医師の管理活動は、治験の様々な側面に織り込まれるべきであり、第三者である監査担当者が確認できるものでなければなりません。例えば、スタディタスクの委任について、どのように行われたか、適格性を有する要員に委任されたのかどうか、治験に関する情報(治験の実施状況、安全性情報の更新、被験者ケア、治験実施計画書からの逸脱、傾向など)が治験責任医師に提供されているかといった質問に対する回答が記録に示されてなければなりません。また、治験実施における重要な判断を下す局面に治験責任医師が関与していることが記録に明示されていなければなりません。
わかりやすく、治験実施における管理活動が不十分であった事例及びその対応オプションをご紹介します。
事例:管理活動の文書化
原資料に、適切な治験医師の管理活動を示す記録がなかった例です。被験者との定期的なコミュニケーションを記録した経過記録がなく、有害事象に関する記録(AEログ)に保存されている有害事象データのレビュー及び署名は、治験実施施設が事象を認識してから数か月後に行なわれていた他、潜在的問題について治験医師と検討した記録が原資料にありませんでした。また、治験の実施状況や被験者について、治験コーディネータや治験分担医師の間で意見交換が行われた記録がありませんでした。また、同意文書に治験医師の署名欄はなく、治験参加同意のプロセスで治験責任医師が待機あるいは同席していたか明確ではありませんでした。
面談の中で、監督活動の文書化が主な問題であることが分かりました。被験者ケアや有害事象、安全性情報の更新については、度々、電話での意見交換が行われていました。施設スタッフとの間で、治験の実施状況を報告する定期会議が開催され、重要なケースや困難な症例を話し合う場が設けられていました。治験責任医師は、治験参加への説明同意プロセスには必ず同席または待機しており、被験者の次回来院時、身体所見を診る前に被験者記録の見直しを行っていました。しかしながら、これらのいずれも記録を残していなかったのです。
この事例に対する取組として、治験実施施設では、治験責任医師が詳細な経過記録を残し、そこに治験参加への説明同意プロセスに関わる情報も必要であったと思われます。有害事象に関する記録(AE log)を用いる場合には、レビューや署名が適時に実施されていることを示し、原資料には治験責任医師や治験コーディネータ間における診療、治験への対応に関する口頭でのやり取りや治験責任医師が気づいたことなどを記録しなければなりませんでした。定期的なスタッフミーティングでは議事録を作成します。
治験責任医師の監督活動を記録する方法は多くあります。以下のリストはそのごく一部です。すべての治験責任医師が必ずしも医師というわけではないため、治験のタイプや治験責任医師の適格性に合わせて調整が必要となる点にご注意ください。
- 治験実施計画書からの逸脱、治験責任医師による認識/レビュー、IRBへの報告に関する判断について記録する。
- 被験者とのコミュニケーション、潜在的な医学的問題へのフォローアップ、診療全般を示した経過記録を残す。
- 覚書を利用して他で適切に文書化されていない問題を文書で保管する。是正措置及び予防措置全般に関する記録を含み、問題の理解、治験施設及び治験責任医師の責務、再発防止のために適切な取り組みが行われていることを明示する。
- 治験や安全性に関する重要な情報を治験施設スタッフと共有化していることを示す会議議事録を作成する。
- 判断に関する記録では、重要な決定や、治験実施手順に関する情報を治験施設スタッフへ伝達していることを明示する。
- 臨床検査値やカルテに傾向や異常値が認められた場合、適時にレビューを行い署名する。
- 治験責任医師を含み、治験施設スタッフ向けに、方針、手順、特別な問題/CAPA、治験実施手順書に関するトレーニングを実施する。
- 治験責任医師の責任移譲は正確且つ適切に文書化する。必要に応じて、業務の遂行時のスタッフ立合いの記録を含めること。法令に定められた医療関係者の適格性や関連資料を認識していることを記録する。
- モニタリングレポートには、治験責任医師がモニタリング担当者と定期的に会議を開催していることを記録する。
- 治験実施計画書で認められる治験医師または外来医師の判断により治療がおこなわれた場合、必要があれば治験依頼者の承諾も併せ、発生時にすべて記録する。
- 治験医師は、有害事象の所見について因果関係及び重症度を原資料に適時に記録する。
査察対応準備は一朝一夕にはいきませんが、考え方と取り組み方法をいくつか変更するだけで達成可能になります。まずは、意識することです。次に、現状を評価するために利用できるリソースを使って、小さくても意味のある変革を実現していきましょう。
著者のご紹介
Jessica Masarek
Muse Clinical社 ディレクター。小規模コンサルティンググループであるMuse社で、治験依頼者、治験医師、CROと共に品質保証に関連する支援を行っている。
産業界において管理者としての様々な経験を有する。専門は、外部監査、リスク低減戦略、治験ファイル一元管理システム及びプロセスの開発を中心とした品質保証分野全般にわたる。
コンプライアンス実践への取り組みに対し共同アプローチを提唱し、バランスのとれた積極的なソリューションを提供しInspection Readinessの向上を図る。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
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Y. Uchino
2017年5月2日火曜日
FDA査察における指摘事項への対応 ~反論もOK!?~
Martin Browning, President, EduQuest, Inc.
法制化策定及びFDAの査察官としての22年
FDAは限定された人材での運用に追われながらも、法規制対象にある企業への査察は継続しており、査察報告書(Form 483)や警告文書が発行されています。
2014年の1年間を通じて実施されたFDAの査察件数は38,000件を超え、発行された8,457件のForm 483には、査察官の判断で業務や製品がFDA要求事項に適合していないことを示す指摘事項が記載されています。
経験を積んだ査察官の世代交代の中、この年間査察件数を維持するため、FDAでは新たな査察官の雇用にも取り組んでいます。もちろんベテランの査察官も残留していますが、経験の浅い査察官が担当することになる可能性も高いのです。
業界特有の知識が不十分な新米査察官が、馴染みのない製品やプロセスに関する説明を理解し受け入れるということは難しいことかもしれません。ですから、もしForm 483の所見に納得できない場合には、議論を大きくしすぎないためにも、効果的かつ責任のある回答手段を認識し講じるべきだと考えます。
査察終了後のプロセスの一例
Form 483への回答は、規制当局の上層部(ワシントンの法執行部を含む)が関与する前に企業側のストーリーを伝えることのできる最高のチャンスです。
驚く企業の方もいるかもしれませんが、Form 483の記載内容で企業が適切ではないと考える点については、査察官が企業を去ってしまう前に、企業側の責任で査察官に働きかける、あるいは少なくとも意見を伝えることが求められています。
査察後の最終確認会議では、査察官がForm 483の指摘事項をひとつずつ説明し、企業の回答や査察期間中に実施された是正措置を記録する義務があります。
指摘事項に対して100%の自信をもって回答できるのであれば、たとえ反論であっても回答すべきでしょう。しかし、どのように回答すべきか浮かばない場合は、指摘への回答は書面にてFDAに送付する旨を査察官に伝えるほうが得策です。
口頭で回答したとしても、フォローアップとして書面での回答を迅速にFDAに提出することが極めて重要となります。理由は次のとおりです。
企業に出向き、査察が終了してから10営業日以内に指摘事項を要約した、施設査察報告書(EIA:Establishment Inspection Report)をスーパーバイザーに提出することが、FDA査察官には義務付けられています。FDAでは警告文書を発行するのか、あるいはその他の法的措置を講じるのかについては、EIRの提出を受けたときから動き始めることになっています。
FDAからは15日以内にForm 483の指摘事項への回答を提出するよう求められますが、私は査察官が査察報告書を最終化するまでのスケジュールに合わせて、10日以内の回答提出をお勧めします。早めに回答を行うことで、FDAの上層部に企業側の意見が伝わるチャンスは最大限に広がります。
そうすれば、企業からの回答は、Form 483に記載される指摘事項に対し警告文書の発行が必要か否かの判断を下す査察官のスーパーバイザー(通常は地域コンプライアンス担当者)やその他の法執行機関の当局者を含む全ての関係者の目に触れることになるのです。
回答が適切であると判断されれば、企業から提案された是正措置が認められ警告文書の発行に至らずに済んだことを示す文書を受領します。しかし、これで終わったわけではありません。もし、再査察の際に、是正措置が実施されていなかった、または効果がなかったことが判明すれば、初回の査察で警告文書の発行がされていたものと同様に再査察が行われることになります。
次に回答、特に書面による回答に含むべき内容をご紹介します。
企業の事業内容に精通していないFDA担当者が回答を読みますので、事業内容や製品、業務概要、企業の歴史などを盛り込むと良いでしょう。
指摘事項に同意しないのであれば、問題の背景となる情報を提示し、査察官からの指摘を受けた理由と、その指摘が妥当ではないとする根拠を説明してください。
的確な科学的根拠を準備しましょう。ご自身のプロセスや製品に伴う経験を討議すべきであって、査察官の経験や査察プロセスを侮辱するようなことはしてはいけません。そのような方法では当局との友好的な関係を築くことはできないでしょう。
書面または口頭で回答する場合、指摘を受けた状況に対し、基準を満たす製品であることを保障するために合理的かつ最大限の取り組みを企業の管理下で実施しているということをFDAに示すことが非常に重要となります。
次に、回答として不適切な内容を挙げます。
効果的な回答事例
ここで、実際にあった査察における指摘事項3例と、それに対する企業からの不適切な回答とそれに対する適切な回答例とをご紹介します。私が考えるより慎重で効果的な回答例もありますので、是非比較してご覧ください。
指摘事項 事例1:保管用冷蔵庫に記録表はないが、製品は保管条件の摂氏4~8°で保管されていた。
不適切回答例:冷蔵庫に記録表を設置する予定です。
適切な回答例:保管条件による製品への影響はないことを確認するために、実施済みの全試験を再度行い、冷蔵庫に保管された全製品の再調査を行う予定です。合格品質限界(Acceptable Quality Limited :AQL2.5)を用い、統計学的に裏付けされた抜き取り検査計画書に基づき、抜き取り検査を実施する予定です。不合格品が確認された場合、全ロットを破棄するか、可能であれば再加工することになっています。試験終了後、試験に関する文書の写しを2週間以内に提出する予定です。記録表は、30日以内に全ての冷蔵庫に設置する予定です。
指摘事項 事例2:冷凍乾燥器の取扱説明書では、機器のメンテナンスは6か月ごとに実施することとなっているが、現時点で冷凍乾燥器の定期メンテナンスは実施されていない。
不適切な回答:早急に冷凍乾燥器の製造元に連絡し、保守契約をお願いします。
適切な回答例:冷凍乾燥機には故障ベースの保守スケジュールが立てられています。20年間使用していますが、本冷凍乾燥機で冷凍乾燥された製品に問題があったことはありません。予防的にメンテナンスを行って冷凍乾燥機が正常に稼働しているか確認する必要はないと判断します。
指摘事項 事例3:電気的試験で記録された結果は定性的データのみで、定量的データはなかった。
不適切な回答:これらの試験の場合、社内標準作業手順書(SOP)では定量的データを記録することは要求されていませんので、FDA Form 483で扱われる問題ではないと考えます。
適切な回答例:査察官が必要と判断された定量的データは、実際、電導度の判断にのみに使用したものです。プロセス評価が実施されており、一定の傾向を示すと判断できるような情報を定量的データの記録から得ることはできません。このような試験では製品の仕様が満たされていることを担保するために定量的データは必要ないという理由を査察官がご存じではなかったので、こうした情報を査察官に説明しました。
「適切な回答」では具体的かつ積極的な姿勢が示されている点にご注目ください。また企業がどのように問題を理解し管理していることについても明確になっている点がお分かりいただけると思います。議論や意見を投げかけるのではなく、事実のみを提示しているのです。
無回答のままにしておくのは賢い選択ではありません。
Form 483による査察指摘事項を受けた場合に最大の目標となることは、企業の経済的、法的損失の可能性を最小限にとどめることとなりますので、可能な限り迅速に指摘事項への対応に取り組まなければなりません。
Form 483に回答しなければならないという法的拘束はありません。しかし、Form 483の段階ではあくまでも指摘事項が査察官の意見であることを覚えておいてください。ですから、タイムリーかつ周到な回答することは、当局で追加的措置が検討される前に企業側のストーリーを伝えることができる最良で、おそらく最後のチャンスとなるでしょう。
ご存知のとおり、絶妙なバランスが存在します。自ら問題を取り上げる必要がありますが、もし、企業が当局やその職員を侮辱するような態度を示すようなことがあれば、より高額な費用がかかってしまうことになったり、悪い評判がたって経営が立ち行かなくなってしまうような追加的な法的措置を通じて、コンプライアンスの問題に直面することになるかもしれません。
こうした態度をとるのではなく、これ以上の法的措置の必要性はなく、企業は当局が指摘する問題を認識し解決に向けて取り組んでいることをFDAに示してください。そうすれば、当局はあなたの組織の進捗状況の監視を継続しながら、「より大きな問題」を抱える企業へと注目対象を移していくかもしれません。
確かなことは、Form 483の査察指摘事項への無回答、回答遅延や不十分な内容が、御社CEOのデスクに警告文書が届けられてしまう可能性を高めてしまうということです。
企業の回答に関するその他の情報:
Form 483や警告文書の発行に関するFDAのアプローチに関する詳しい情報を知りたい方は、次にご紹介するリンクにアクセスしてください。
FDAは査察の完全「戦略法」を納めた本を作成しています。「Investigations Operations Manual (IOM)」はfield investigator向けポリシーガイドで毎年更新されています。2015 年度版IOM のPDFファイルがEduQuest社から発行されており、ウェブサイトから無料でダウンロードできます。
著者のご紹介
Martin Browning
FDAに22年間、エキスパートField Investigatorとして、またFDAの薬事部門アソシエイトコミッショナーのスペシャルアシスタントとして従事。21 CFR Part 11規制を起草したメンバーの一員でもあり、品質システムに関する規制(21 CFR Part 820)の作成にも貢献。1995年にEduQuest社を共同で立ち上げ、FDAコンプライアンスエクスパートのグローバルメンバーの一員としてFDA模擬査察や薬事的アドバイス、FDAコンプライアンス関連のトレーニングプログラムを提供している。
本投稿に関するご質問は、EduQuest社Martin Heavner (martinheavner@eduquest.net, 301-874-6031)までご連絡ください。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
法制化策定及びFDAの査察官としての22年
FDAは限定された人材での運用に追われながらも、法規制対象にある企業への査察は継続しており、査察報告書(Form 483)や警告文書が発行されています。
2014年の1年間を通じて実施されたFDAの査察件数は38,000件を超え、発行された8,457件のForm 483には、査察官の判断で業務や製品がFDA要求事項に適合していないことを示す指摘事項が記載されています。
経験を積んだ査察官の世代交代の中、この年間査察件数を維持するため、FDAでは新たな査察官の雇用にも取り組んでいます。もちろんベテランの査察官も残留していますが、経験の浅い査察官が担当することになる可能性も高いのです。
業界特有の知識が不十分な新米査察官が、馴染みのない製品やプロセスに関する説明を理解し受け入れるということは難しいことかもしれません。ですから、もしForm 483の所見に納得できない場合には、議論を大きくしすぎないためにも、効果的かつ責任のある回答手段を認識し講じるべきだと考えます。
査察終了後のプロセスの一例
Form 483への回答は、規制当局の上層部(ワシントンの法執行部を含む)が関与する前に企業側のストーリーを伝えることのできる最高のチャンスです。
驚く企業の方もいるかもしれませんが、Form 483の記載内容で企業が適切ではないと考える点については、査察官が企業を去ってしまう前に、企業側の責任で査察官に働きかける、あるいは少なくとも意見を伝えることが求められています。
査察後の最終確認会議では、査察官がForm 483の指摘事項をひとつずつ説明し、企業の回答や査察期間中に実施された是正措置を記録する義務があります。
資料ダウンロード: 21 CFR Part 11 Industry Overview
指摘事項に対して100%の自信をもって回答できるのであれば、たとえ反論であっても回答すべきでしょう。しかし、どのように回答すべきか浮かばない場合は、指摘への回答は書面にてFDAに送付する旨を査察官に伝えるほうが得策です。
口頭で回答したとしても、フォローアップとして書面での回答を迅速にFDAに提出することが極めて重要となります。理由は次のとおりです。
企業に出向き、査察が終了してから10営業日以内に指摘事項を要約した、施設査察報告書(EIA:Establishment Inspection Report)をスーパーバイザーに提出することが、FDA査察官には義務付けられています。FDAでは警告文書を発行するのか、あるいはその他の法的措置を講じるのかについては、EIRの提出を受けたときから動き始めることになっています。
FDAからは15日以内にForm 483の指摘事項への回答を提出するよう求められますが、私は査察官が査察報告書を最終化するまでのスケジュールに合わせて、10日以内の回答提出をお勧めします。早めに回答を行うことで、FDAの上層部に企業側の意見が伝わるチャンスは最大限に広がります。
そうすれば、企業からの回答は、Form 483に記載される指摘事項に対し警告文書の発行が必要か否かの判断を下す査察官のスーパーバイザー(通常は地域コンプライアンス担当者)やその他の法執行機関の当局者を含む全ての関係者の目に触れることになるのです。
回答が適切であると判断されれば、企業から提案された是正措置が認められ警告文書の発行に至らずに済んだことを示す文書を受領します。しかし、これで終わったわけではありません。もし、再査察の際に、是正措置が実施されていなかった、または効果がなかったことが判明すれば、初回の査察で警告文書の発行がされていたものと同様に再査察が行われることになります。
次に回答、特に書面による回答に含むべき内容をご紹介します。
- 査察官からの指摘事項の再記載-これは企業が問題を理解していることを示すことが目的です。
- 指摘を受けた理由について
- 製品仕様への影響はなかったこと(あるいは、今後影響しないこと)を確認するために講じられた措置について
- 指摘事項に対する取り組みの開始日とその方法について
企業の事業内容に精通していないFDA担当者が回答を読みますので、事業内容や製品、業務概要、企業の歴史などを盛り込むと良いでしょう。
指摘事項に同意しないのであれば、問題の背景となる情報を提示し、査察官からの指摘を受けた理由と、その指摘が妥当ではないとする根拠を説明してください。
的確な科学的根拠を準備しましょう。ご自身のプロセスや製品に伴う経験を討議すべきであって、査察官の経験や査察プロセスを侮辱するようなことはしてはいけません。そのような方法では当局との友好的な関係を築くことはできないでしょう。
書面または口頭で回答する場合、指摘を受けた状況に対し、基準を満たす製品であることを保障するために合理的かつ最大限の取り組みを企業の管理下で実施しているということをFDAに示すことが非常に重要となります。
次に、回答として不適切な内容を挙げます。
- 規制の解釈を争点にしないこと。たとえ経験の浅い査察官であっても、規制に関しては企業の皆さんが知っていることよりもっと細かなところまで査察官は熟知しているのですからFDA査察官に分があります。規制の解釈を当局と議論したところで、まず勝ち目はありません。
- 予定される是正措置の概要の記載がなく、単にForm 483を受領した旨だけの記載で済ませないこと。是正措置が示されていない場合、企業は問題を理解していない、またはその重要性が認識できていないと当局は判断します。
効果的な回答事例
ここで、実際にあった査察における指摘事項3例と、それに対する企業からの不適切な回答とそれに対する適切な回答例とをご紹介します。私が考えるより慎重で効果的な回答例もありますので、是非比較してご覧ください。
指摘事項 事例1:保管用冷蔵庫に記録表はないが、製品は保管条件の摂氏4~8°で保管されていた。
不適切回答例:冷蔵庫に記録表を設置する予定です。
適切な回答例:保管条件による製品への影響はないことを確認するために、実施済みの全試験を再度行い、冷蔵庫に保管された全製品の再調査を行う予定です。合格品質限界(Acceptable Quality Limited :AQL2.5)を用い、統計学的に裏付けされた抜き取り検査計画書に基づき、抜き取り検査を実施する予定です。不合格品が確認された場合、全ロットを破棄するか、可能であれば再加工することになっています。試験終了後、試験に関する文書の写しを2週間以内に提出する予定です。記録表は、30日以内に全ての冷蔵庫に設置する予定です。
指摘事項 事例2:冷凍乾燥器の取扱説明書では、機器のメンテナンスは6か月ごとに実施することとなっているが、現時点で冷凍乾燥器の定期メンテナンスは実施されていない。
不適切な回答:早急に冷凍乾燥器の製造元に連絡し、保守契約をお願いします。
適切な回答例:冷凍乾燥機には故障ベースの保守スケジュールが立てられています。20年間使用していますが、本冷凍乾燥機で冷凍乾燥された製品に問題があったことはありません。予防的にメンテナンスを行って冷凍乾燥機が正常に稼働しているか確認する必要はないと判断します。
指摘事項 事例3:電気的試験で記録された結果は定性的データのみで、定量的データはなかった。
不適切な回答:これらの試験の場合、社内標準作業手順書(SOP)では定量的データを記録することは要求されていませんので、FDA Form 483で扱われる問題ではないと考えます。
適切な回答例:査察官が必要と判断された定量的データは、実際、電導度の判断にのみに使用したものです。プロセス評価が実施されており、一定の傾向を示すと判断できるような情報を定量的データの記録から得ることはできません。このような試験では製品の仕様が満たされていることを担保するために定量的データは必要ないという理由を査察官がご存じではなかったので、こうした情報を査察官に説明しました。
「適切な回答」では具体的かつ積極的な姿勢が示されている点にご注目ください。また企業がどのように問題を理解し管理していることについても明確になっている点がお分かりいただけると思います。議論や意見を投げかけるのではなく、事実のみを提示しているのです。
無回答のままにしておくのは賢い選択ではありません。
Form 483による査察指摘事項を受けた場合に最大の目標となることは、企業の経済的、法的損失の可能性を最小限にとどめることとなりますので、可能な限り迅速に指摘事項への対応に取り組まなければなりません。
Form 483に回答しなければならないという法的拘束はありません。しかし、Form 483の段階ではあくまでも指摘事項が査察官の意見であることを覚えておいてください。ですから、タイムリーかつ周到な回答することは、当局で追加的措置が検討される前に企業側のストーリーを伝えることができる最良で、おそらく最後のチャンスとなるでしょう。
ご存知のとおり、絶妙なバランスが存在します。自ら問題を取り上げる必要がありますが、もし、企業が当局やその職員を侮辱するような態度を示すようなことがあれば、より高額な費用がかかってしまうことになったり、悪い評判がたって経営が立ち行かなくなってしまうような追加的な法的措置を通じて、コンプライアンスの問題に直面することになるかもしれません。
こうした態度をとるのではなく、これ以上の法的措置の必要性はなく、企業は当局が指摘する問題を認識し解決に向けて取り組んでいることをFDAに示してください。そうすれば、当局はあなたの組織の進捗状況の監視を継続しながら、「より大きな問題」を抱える企業へと注目対象を移していくかもしれません。
確かなことは、Form 483の査察指摘事項への無回答、回答遅延や不十分な内容が、御社CEOのデスクに警告文書が届けられてしまう可能性を高めてしまうということです。
企業の回答に関するその他の情報:
Form 483や警告文書の発行に関するFDAのアプローチに関する詳しい情報を知りたい方は、次にご紹介するリンクにアクセスしてください。
- Frequently Asked Questions about FDA Form 483s
- Chapter 4-1 of FDA’s Regulatory Procedures Manual
- Field Management Directive No. 120 (意図しないForm483の対応に関するガイダンス)
FDAは査察の完全「戦略法」を納めた本を作成しています。「Investigations Operations Manual (IOM)」はfield investigator向けポリシーガイドで毎年更新されています。2015 年度版IOM のPDFファイルがEduQuest社から発行されており、ウェブサイトから無料でダウンロードできます。
著者のご紹介
Martin Browning
FDAに22年間、エキスパートField Investigatorとして、またFDAの薬事部門アソシエイトコミッショナーのスペシャルアシスタントとして従事。21 CFR Part 11規制を起草したメンバーの一員でもあり、品質システムに関する規制(21 CFR Part 820)の作成にも貢献。1995年にEduQuest社を共同で立ち上げ、FDAコンプライアンスエクスパートのグローバルメンバーの一員としてFDA模擬査察や薬事的アドバイス、FDAコンプライアンス関連のトレーニングプログラムを提供している。
本投稿に関するご質問は、EduQuest社Martin Heavner (martinheavner@eduquest.net, 301-874-6031)までご連絡ください。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
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投稿者
Y. Uchino
2017年4月13日木曜日
MEDTEC JAPAN 2017に出展
マスターコントロール/HOYAサービス展示ブース
ブース番号:4510(医療用エレクトロニクス展内)
公式WEBサイト : http://www.medtecjapan.com/
東京ビッグサイトにて開催される医療機器製造・設計に関するアジア最大級の展示会「MEDTEC JAPAN 2017」に、マスターコントロール公式パートナーであるHOYAサービス株式会社と共同で出展いたします。
本展示会では、最新バージョンの「MasterControl Version 11.6」を利用した文書管理や教育管理、品質管理の製品展示を予定しています。また、HOYAサービス株式会社で提供しているERPシステム「Microsoft Dynamics 365」の医療機器向けテンプレートやCRMシステムなど、医療機器を扱うHOYAグループのシステム開発・運用を担い培ってきた独自のサービス・ソリューションもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
⦅展示予定製品⦆
- MasterControl Documents
- MasterControl Training
- MasterControl Process
- MasterControl Audit
- Microsoft Dynamics 365
ラベル:
イベント
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Y. Uchino
ICH GCP及びEU規制における大幅な改定
Laurie Meehan
改正の内容は?
改正の主なポイントは2つ挙げられます。
2015年の年初に、 ICH E6(R2)「医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインの補遺(案)」がICH*で発表され、20年ぶりの国際的ガイドラインの大幅な改定と言われています。当該ガイドラインの実施とおおよそ同時期に、新しいClinical Trial Regulation (CTR) 563/2014が、制定から久しい現行のEU Directive 2001/20に代わって適用されることになります。
ICH GCP E6 (R2)
経緯:
ICH E6ではそもそも、治験依頼者による技術革新に高い柔軟性をもたらすことが意図されていましたが、時に誤った解釈をされ、革新の支障となってしまうことがあると、ICHのビジネスプランで述べられています。新しい補案ではこうした点が修正され、「臨床試験のデザイン、実施、監督、記録、報告アプローチの改善と効率化」が図られます。
RQA (旧 BARQA)のDr. Colin Wilsherが補遺(案)に関する詳しい分析を執筆しており、ガイダンスにおける変更点と臨床試験において所見の多くを占めている「最新の話題」との関連付けを行っています。
補遺(案)の内容
ICH E6(R2) の内容は次のとおりです。
ICH E6(R2)の今後
ICHでは、欧州、米国、日本、カナダ、スイスを対象に規制当局への意見・情報を募集しています。最終合意ガイドラインの公表は2016年11月に予定されています。
EU Clinical Trial Regulation 536/2014
経緯:
欧州連合加盟国の臨床試験許可制度は大幅に遅れをとっていると言われています。新しい指令では、被験者の安全性に対して高い基準を維持しつつ、臨床試験実施地域として欧州連合国が魅力的なものとなるように設計され、効率化が図られています。
新規則の内容:
Dr. Martine Dehlinger-Kremer (SynteractHCR社メディカル及び薬事部門グローバルVP) による60分間のウェブセミナーでは、EUにおける新しい規則全般の概要が取り上げられています。
規制調和:Dr. Dehlinger-Kremerによると、現行の「指令(2001/20/EC)」の解釈は、細部では28加盟各国の裁量に委ねられており、国内で独自に異なった解釈で法化されていました。承認申請要件や、タイムスケジュール、安全性情報の取り扱いが異なっていることで、治験依頼者にとっては欧州諸国での臨床試験の計画は困難を極め、莫大な費用に繋がっています。(RQA GCP Committee は “gold-plating”と称される追加要件の義務化が各加盟国で取り決められていることについて言及しています)。新しい規則では、国別の解釈は不要となります。
新しいプロセスでは、単一の臨床試験許可申請の提出により試験に関連するEU全加盟国を網羅する一括申請が可能となります。審査はすべての関係加盟国(CMS:Concerned Member State)が行いますが、任命された参照加盟国(RMS:Reference Member State)が各国での審査を調整しますので、治験依頼者へは1つの成果文書が提示され、単一の審査報告書が作成され、全CMSに対し有効となります。新しい規則では、CMSから許可が下りないケースや治験施設独自の文書作成やプロセスなどの手順に関して限定的な条項はあるものの、EUポータルへの一括申請が可能になれば、これまでの各加盟国に対する申請手続きに係る作業量が劇的に軽減されることになります。
臨床試験許可申請と同様、安全性報告に関しても、欧州連合加盟国間で調整される予定です。
申請のタイムスケジュール:許可申請の審査までのタイムスケジュールは決められた日程で進むため、治験依頼者は確実なスケジュールに基づいて計画を進めることができます。しかしながら、タイムスケジュールがタイトな場合には、治験依頼者にとっては計画こそが重要になってきます。申請審査のプロセスとなる60日間には、申請者が詳細な回答を求められるタイミングが2回あります。回答は30日以内と決められているので、正確な情報を準備しておく必要があります。
透明性:新しい規則では、臨床試験結果の報告制度についての記述があり、研究に関する透明性の確保と知見の共有化といった業界の動向が反映されています。申請の取り下げや最終的に承認に至らないといった場合も、治験依頼者は「医療関係者以外の一般の人々にも分かりやすい」概要書を準備し、販売承認申請書と併せて治験の総括報告書(Clinical Study Report: CSR)の提出することが求められています。こうしたデータはEUの新しいデータベースに蓄積され公開される予定です。
柔軟性:新しい規則では、治験マスターファイル(TMF)の内容やモニタリング業務(RBMを考慮)の柔軟性を支持する条項が含まれています。
FDAとの重要な相違点:EUにおける新しい規則の下では、開始前のEUデータベースへの登録が義務付けられています。米国では治験者登録開始後 21 日以内と規定があります。さらに、EUでは第1相試験のEUデータベースへの登録が必要ですが、米国では第1相試験はClinicalTrials.gov(米国の臨床試験登録システム)への登録が規定されていません。治験依頼者がEUでの販売承認の裏付けに、米国での臨床試験で収集されたデータを使用したい場合には、米国で実施される試験もEUにおける新しい規則の登録要件を遵守しなければなりません。
CTR 536/2014の今後
当該規則は早ければ2016年5月に発効される可能性があります。実現的には、臨床試験の透明性の確保を目的とした管理データベース及び臨床試験許可制度のためのポータルサイトをともに6か月で実用化することが前提条件であり、これを満たす必要があります。
最後に、現行版への改定内容を統合し新しい内容を判り易いようにご配慮いただきましたことに関し、ICH エキスパートワーキンググループ (EWG)の皆様に深い感謝を述べさせていただきます。
新ICHガイドライン及びEU規則及び企業への影響を詳しく知りたい方、ご連絡お待ちしております。
*ICH = International Conference on Harmonization日米EU医薬品規制調和国際会議
著者の紹介
Laurie Meehan
Polaris Compliance Consultants, Incでソーシャルメディアマネージャーを務める。同社のブログやeNewsletterを執筆。ソーシャルメディアプラットフォーム上での顧客や働く仲間とコミュニケーションを図り、企業のSOPやトレーニングの管理などを行う。2008年Polaris入社前は、テレコミュニケーションR&Dの大手企業にて、テレコミュニケーションサービスにおけるコンサルティングやトレーニング業務に従事。La Salle Universityでコンピュータサイエンス学士及びDrexel Universityでコンピュータサイエンス学士取得。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
Social Media Manager, Polaris Compliance Consultants
EU地域も対象に含めた国際臨床試験に関する法規制の改定が審議されています。 業務への影響とその時期は? |
国際臨床試験のGCP規則について、審議中の改定点とは?
改正の内容は?
改正の主なポイントは2つ挙げられます。
2015年の年初に、 ICH E6(R2)「医薬品の臨床試験の実施に関する基準のガイドラインの補遺(案)」がICH*で発表され、20年ぶりの国際的ガイドラインの大幅な改定と言われています。当該ガイドラインの実施とおおよそ同時期に、新しいClinical Trial Regulation (CTR) 563/2014が、制定から久しい現行のEU Directive 2001/20に代わって適用されることになります。
資料ダウンロード:
経緯:
ICH E6ではそもそも、治験依頼者による技術革新に高い柔軟性をもたらすことが意図されていましたが、時に誤った解釈をされ、革新の支障となってしまうことがあると、ICHのビジネスプランで述べられています。新しい補案ではこうした点が修正され、「臨床試験のデザイン、実施、監督、記録、報告アプローチの改善と効率化」が図られます。
RQA (旧 BARQA)のDr. Colin Wilsherが補遺(案)に関する詳しい分析を執筆しており、ガイダンスにおける変更点と臨床試験において所見の多くを占めている「最新の話題」との関連付けを行っています。
補遺(案)の内容
ICH E6(R2) の内容は次のとおりです。
- 原資料に関する要件 – ALCOAの綴りはCがひとつか2つか(Wilsherの分析参照)。ICH E6でALCOAが取り上げられるのは初めてのことです。
- 効果的なプロトコルデザイン及び重要な情報のみの収集を含む品質管理の定義
- リスクに基づく臨床試験管理のガイダンス(リスクに基づくモニタリング(RBM:Risk-Based Monitoring)を含む)
- 臨床試験のコンピュータ化が進む現状に則した「コンピュータシステムバリデーション“CSV”」を重視
- 電子記録及び必須文書に関する基準
- PIによる監督業務責任の追加
ICH E6(R2)の今後
ICHでは、欧州、米国、日本、カナダ、スイスを対象に規制当局への意見・情報を募集しています。最終合意ガイドラインの公表は2016年11月に予定されています。
EU Clinical Trial Regulation 536/2014
経緯:
欧州連合加盟国の臨床試験許可制度は大幅に遅れをとっていると言われています。新しい指令では、被験者の安全性に対して高い基準を維持しつつ、臨床試験実施地域として欧州連合国が魅力的なものとなるように設計され、効率化が図られています。
新規則の内容:
Dr. Martine Dehlinger-Kremer (SynteractHCR社メディカル及び薬事部門グローバルVP) による60分間のウェブセミナーでは、EUにおける新しい規則全般の概要が取り上げられています。
規制調和:Dr. Dehlinger-Kremerによると、現行の「指令(2001/20/EC)」の解釈は、細部では28加盟各国の裁量に委ねられており、国内で独自に異なった解釈で法化されていました。承認申請要件や、タイムスケジュール、安全性情報の取り扱いが異なっていることで、治験依頼者にとっては欧州諸国での臨床試験の計画は困難を極め、莫大な費用に繋がっています。(RQA GCP Committee は “gold-plating”と称される追加要件の義務化が各加盟国で取り決められていることについて言及しています)。新しい規則では、国別の解釈は不要となります。
新しいプロセスでは、単一の臨床試験許可申請の提出により試験に関連するEU全加盟国を網羅する一括申請が可能となります。審査はすべての関係加盟国(CMS:Concerned Member State)が行いますが、任命された参照加盟国(RMS:Reference Member State)が各国での審査を調整しますので、治験依頼者へは1つの成果文書が提示され、単一の審査報告書が作成され、全CMSに対し有効となります。新しい規則では、CMSから許可が下りないケースや治験施設独自の文書作成やプロセスなどの手順に関して限定的な条項はあるものの、EUポータルへの一括申請が可能になれば、これまでの各加盟国に対する申請手続きに係る作業量が劇的に軽減されることになります。
臨床試験許可申請と同様、安全性報告に関しても、欧州連合加盟国間で調整される予定です。
申請のタイムスケジュール:許可申請の審査までのタイムスケジュールは決められた日程で進むため、治験依頼者は確実なスケジュールに基づいて計画を進めることができます。しかしながら、タイムスケジュールがタイトな場合には、治験依頼者にとっては計画こそが重要になってきます。申請審査のプロセスとなる60日間には、申請者が詳細な回答を求められるタイミングが2回あります。回答は30日以内と決められているので、正確な情報を準備しておく必要があります。
透明性:新しい規則では、臨床試験結果の報告制度についての記述があり、研究に関する透明性の確保と知見の共有化といった業界の動向が反映されています。申請の取り下げや最終的に承認に至らないといった場合も、治験依頼者は「医療関係者以外の一般の人々にも分かりやすい」概要書を準備し、販売承認申請書と併せて治験の総括報告書(Clinical Study Report: CSR)の提出することが求められています。こうしたデータはEUの新しいデータベースに蓄積され公開される予定です。
柔軟性:新しい規則では、治験マスターファイル(TMF)の内容やモニタリング業務(RBMを考慮)の柔軟性を支持する条項が含まれています。
FDAとの重要な相違点:EUにおける新しい規則の下では、開始前のEUデータベースへの登録が義務付けられています。米国では治験者登録開始後 21 日以内と規定があります。さらに、EUでは第1相試験のEUデータベースへの登録が必要ですが、米国では第1相試験はClinicalTrials.gov(米国の臨床試験登録システム)への登録が規定されていません。治験依頼者がEUでの販売承認の裏付けに、米国での臨床試験で収集されたデータを使用したい場合には、米国で実施される試験もEUにおける新しい規則の登録要件を遵守しなければなりません。
CTR 536/2014の今後
当該規則は早ければ2016年5月に発効される可能性があります。実現的には、臨床試験の透明性の確保を目的とした管理データベース及び臨床試験許可制度のためのポータルサイトをともに6か月で実用化することが前提条件であり、これを満たす必要があります。
最後に、現行版への改定内容を統合し新しい内容を判り易いようにご配慮いただきましたことに関し、ICH エキスパートワーキンググループ (EWG)の皆様に深い感謝を述べさせていただきます。
新ICHガイドライン及びEU規則及び企業への影響を詳しく知りたい方、ご連絡お待ちしております。
*ICH = International Conference on Harmonization日米EU医薬品規制調和国際会議
著者の紹介
Laurie Meehan
Polaris Compliance Consultants, Incでソーシャルメディアマネージャーを務める。同社のブログやeNewsletterを執筆。ソーシャルメディアプラットフォーム上での顧客や働く仲間とコミュニケーションを図り、企業のSOPやトレーニングの管理などを行う。2008年Polaris入社前は、テレコミュニケーションR&Dの大手企業にて、テレコミュニケーションサービスにおけるコンサルティングやトレーニング業務に従事。La Salle Universityでコンピュータサイエンス学士及びDrexel Universityでコンピュータサイエンス学士取得。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
ラベル:
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Y. Uchino
CLIA vs QSR
説明を追加検査がどこで実施されるかに関わらず、被検者の臨床検査結果に精度、信頼性、適時性 を担保するために1988年アメリカで品質基準を確立する臨床検査機関改善修正法 (CLIA: Clinical Laboratory Improvement Amendment)が制定されました。 |
本稿の内容は2部構成でお届けし、FDAからの注目度の高いCLIAラボの施設開発検査 (LDT: Laboratory Developed Test)について、その問題点と現状を考察していきます。CLIAラボで独自に行われる検査は、最近までFDAの未踏の領域でした。(気づいていなかったとは言っていないですが…)
発行後比較的間もないドラフトガイダンス「FDA Notification and Medical Device Reporting for Laboratory Developed Tests (LDTs); Oct 2014」では、FDAの関心がLDTにあり、業界のこの分野に目が向けられていることが改めて表明されています。
自動車メーカー、NASA、情報技術システムメーカを含む数多くの企業では、高い品質基準で製品が製造されることを目的として品質管理システム(QMS)の実装が義務化されています。
医療機器のような製品では、QMSによって高品質の製品、また意図する性能を発揮する「有効性」や使用目的における安全性が実現されることになります。
米国議会は、検査がどこで実施されるかに関わらず、被検者の臨床検査結果に精度、信頼性、適時性を担保するために臨床検査室を実施するすべての研究機関に対する品質基準を確立する臨床検査改善修正法案(CLIA: Clinical Laboratory Improvement Amendment)を1988年に通過させました。最終CLIA品質システム規制は、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)及びCMS(Centers for Medicare & Medicaid Services)から発表され、2003年4月24日に施行されました。
臨床検査室における検査に関する規制が相次いで発行されるなか、1992年2月28日付けで米国保健福祉省(DHH S: Department of Health and Human Services)より、臨床検査室改善法基準(CLIA:1998)施行に係る臨床検査室標準規制(57 FR 7002)が発行されました(42 U.S.C. 263a)。こうした施行規則は42 CFR Part 493に集成されています。
CLIA規制では検査方法の複雑さに応じた品質基準を発表しており、FDAが医療機器メーカー向けに確立している品質システム要件に類似しながらも、それとは異なる臨床検査室向けの品質基準を確立しています。
検査システムが複雑になると、より厳しい基準が適用されるもので、検査の複雑度が「低度」「中度」「高度」に分類されます。そのため、特定検査の実施を予定する臨床検査室では、品質に関する新基準に適合すればCLIA規制に適合することができるものと考えられます。
1998年以降、臨床検査室ではLDT(laboratory developed test)と呼ばれる自家調整された検査法が開発されてきました。LDTは通常、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ満たされていない治療のニーズ・未だ有効な治療法がない医療ニーズ)を満たす目的で、病院、大学、臨床検査室などの自施設内で用いられるもので、一般的に、被検者の迅速かつ正確な診断、モニタリング、治療方針の決定を目的として使用されます。
21世紀初頭、医学の進歩は目覚ましいものがあり、個別化医療という概念が急速な変化を遂げ、患者一人一人に応じた最適な薬剤を判断するためにLDTが発展していったのです。
こうした薬剤に特化したLDTは、通常、患者個人の薬剤への反応性を治療前に検査することをコンパニオン診断(またはCDx)と称されます。コンパニオン診断薬の進化に伴い、臨床での体外診断用医薬品(IVD)は、近年からFDAによる薬事法上の監視下に置かれるようになったのです。
これまで、CDx用医療機器として、開発あるいはFDA承認を取得した製品はほとんどありませんが、明確になってきている事実が一つあります。それは、LDTであっても、医療機器や医薬品に関する規制下で製品の管理を行うことをFDAがCDxメーカーに対し要求しているということです。
そのため、医薬品や医療機器に関するFDA規制に準拠したQMSの策定は差し迫った課題であり、現在は特定検査に対しては義務化されている状態です。しかし、既存のQMSがCLIAの水準に適合している多くの臨床検査施設では、FDAのQMS規制に十分に適合できるものと考えがちですが、一言で言うとそれは間違いです。
特に、CLIA認定ラボで導入されているQMSというものは、QMSの基礎的仕組みを築くためのもので、医療機器の品質システム規則である21 CFR Part 820と似てはいますが、「非常に良く似た別もの」です。 CLIA QMSの要求事項は、不十分な点が多く、さらに、近年のCDx用製品の承認により、医療機器のQSRに十分適合するようなQMSが臨床検査室においても導入されることが期待されています。
第1部では、一連のQMS要件の類似点及び相違点についてご説明します。また第2部では、(FDAの対応に不慣れな企業の皆様に向けて)規制準拠を目的とした適正な対応ができているかを正しく判断するための方法についてご説明いたします。
誤った認識:いずれの品質管理システムも、構築されるシステムは同じである。
通常、QMSでは、業務の責任は階層型に定められ、プロセスや製造を安定的に継続するための手順を確立しています。
組織内の役割及び責任、QMSプロセスのモニタリング方法及びモニタリング後の改善方法、プロセスやシステムで不適合となる製品やアウトプットの同定、評価、適切な処分等を確実に行うための方法が文書化されています。
CLIA規制適合QMSとFDA規制適合QMSとの重要な相違点は、要求事項の適用範囲にあります。
現行のCLIA規制(42 CFR 493)のサブパートKでは、複雑度が「低度」以外(つまり「中度」または「高度」の場合)の検査を実施する臨床検査施設に対する品質システムに関する要求事項が定められています。
この規制では、適切な要員の資格認定、検査の生成前後及び最中における被検者の検査結果の生成及び管理方法に着目しており、被検者の検査結果を得るために用いられる検査システムの管理も含まれています。
サブパートKではこの他に、臨床検査施設の検査プロセスが規定に従って実施されていない場合や分析検査で予測値から外れてしまった場合に是正措置を講じ、既存品質管理システムにおける操作や処理手順の評価方法が規定されています。
しかし、重視している点は、被検者検体識別時の最終製品、被検者検体の取り扱い管理、検体の検査メソッド、最終結果報告となっています。
医療機器QSR (21 CFR 820)は、医療機器メーカーに適用されます。QSRに準拠する品質システムでは、機器の使用に疑問や不適切さが感じられる場合の管理や行動を含み、医療機器の設計、開発、製造、流通がどのように行われたかを重視しています。
QSR QMSで着目するのは、最終製品の性能だけではなく、すべてのプロセスがどのように遂行されたかである、とも言え、医療機器の最終ユーザーである医師や機器の使用を受けた患者に意図しない後遺症が残ってしまうことがないように規制しているのです。
QSR QMSでは、適切な管理と組織の仕組みを確保する目的で、要員、製品及びプロセスの継続的な改善方法、様々な段階におけるQMSのモニタリング方法に関する要件が定められています。
また、この基準には、医療機器の開発プロセスの要件や、製造プロセスの管理で期待される事項、不適合な品や不適合なプロセスの特定、評価及び廃棄に関する事項も定められています。
CLIAとQSRの相違点は、QSR QMSは、最終製品やQMSプロセスに着目している点で、単に製品自体に着目しているのではないということです。
品質システム要件の違いは、規制当局が異なる点と、規制上の着目点が異なる点です。 CLIA規制はCenters for Medicare and Medicaid Services (CMS)によるものですが、医療機器の品質管理に関する規制はFDAのCenters for Devices and Radiological Health (CDRH)が定めています。
いずれの規制当局も、第一に重要視しているのは被検者(及び、多くの場合に製品及び検査システムの使用者)の安全性ですが、CDRH規制21 CFR 820下のQMSでは、意図した製品性能の有効性に重点を置いています。
有効性は、機器を使用する度に同一の性能を示す、あるいは単回使用の医療機器の場合は、機器ごとに同一性能を示すことにより明らかになります。CDRHは、21 CFR820規制下では市販後の医療機器の安全性及び有効性の責任はメーカーにあるとしています。
CLIAラボがLDTを行い、特定の薬剤/生物学的製剤の技術、または医療機器の使用に当てはめようとした場合、製品の法律上の分類が異なる可能性があります。
明らかなことは、CDRHの下ではLDTは施行の自由裁量(enforcement discretion)がとられてきたのですが、最近発表されたコンビネーションプロダクトに関する21 CFR Part 4では、LDTがCDxとして医薬品・生物学的製品、または医療機器に並ぶものとして認識されています。
これは、LDTに対する施行の自由裁量を停止し、FDA規制下での積極的な監督の確立を行うものです。
さらに最も顕著なのは、薬剤/生物学的製品/医療機器に使用するLDTは、In Vitro Diagnostic(IVD)として知られる医療機器に分類されることが定められています。
これらの医療機器は、最近では2014年10月3日発行のFDAガイダンス(案)「Framework for Regulatory Oversight of Laboratory Developed Tests (LDTs) (検査室開発検査(LDT)に関する薬事法上の枠組みの概要)」で分類されている通り、21 CFR820規制下のQSR QMSモデルへの適合が求められています。
当初、CLIA認証と一致する簡略化されたシステム構成となることを推測していましたが、CLIAラボに関する最近の事例によると、こうした考え方は誤りであることがわかります。ガイダンスには、LDTの監督に対応するリスクベースのフレームワークに関する記載があり、LDTを「製造」する臨床検査室を対象としたガイダンスが示されています。
また、検査施設に対しFDAがどのように、医療機器メーカーとして検査施設に関連する規制の施行を適用しようとしているかが示されています。
ガイダンスは、包括的な内容を記述した構成ではありませんが、明確な方向性と何から始めるべきか判りやすい枠組みが示されています。
繰り返しになりますが、品質システムで着目する点が異なることから、CLIA QMSでは、CDxやIVDとして使用するためのLDTの開発、つまり「製造」における臨床検査施設の活動のごく一部分だけが対象範囲となっています。
CLIAは被検者の検査結果の出し方に関連するプロセスに着目しているのに対し、QSRでは検査(例えば医療機器等)の設計及び製造プロセスに着目しているということです。
CLIAラボが気をつけるべき点は、今後検査で被検者検体を使用する前段階のLDT「作成」時の行動に説明責任があるということです。
例えば、ELISAゲルを調整して測定する場合、LDT製造プロセスというは、試薬の受け入れや材料の組み合わせ手順を含む範囲になるわけです。
QSRにおける検証の目的がCLIAラボにとって、わかりにくいことが何度もありました。臨床検査施設の検査の「検証」活動では、臨床検査施設において検査を実施するプロセスと被検者の検査結果を出すプロセスは一致するところも多く、まったく同じプロセスで実施されてしまうことさえもあります。
こうした場合、被検者の検査結果生成という行為は、製造したものを直ちに使用するもので、「検証」の対象物が何も残されないことになります。
しかしながら、FDAの見解では、試薬に対する試験などの開発プロセス、または被検者検体の検査で使用する機器の管理は「製造」活動の一部であり、手順やプロセスの文書化は必須で、これらのプロセスが予見されうるパフォーマンスを発揮しなかった場合に措置を講じることも含め、設計・開発・管理されなければなりません。
次回トピック:How to work with the FDA to establish a compliant system
許可なく本稿を複写することを禁止します。本稿は、Med Device Onlineに掲載されたものです。第2部も本サイトでお楽しみください。
Sharon Kvistad
Navigant’s Healthcare and Life Sciences Disputes, Regulatory, Compliance, and Investigations (HLS DRCI) practiceアソシエイトディレクター
米国内及び国外において医療機器の薬事関連業務に30年以上携わる。FDA規制プロセスを導入した企業の設立及び事業展開に関するアドバイザーとしても活躍し、薬事戦略の開発及び実施や、当局への臨床及び販売承認申請に係る業務が専門。国内においては、IDE、 PMA、PMA/S、HUD/HDE、510(k)の申請経験を有する。
また、製品開発においては薬事部門の要員として参加し、FDAや関連規制当局と、クライアント代理として交渉に当たる。手順書の作成や導入、エンジニアリング、製造、マーケティング、販売部門要員のトレーニングプログラムにおける経験が豊富。これまでに携わった製品には、心臓インターベンション製品、短期及び長期植え込み型の心臓関連製品及びアクセサリー、心臓カテーテル、植え込み型人工内耳、クラスI製品がある。
Paula Gray, RAC
Navigant’s Healthcare and Life Sciences Disputes, Regulatory, Compliance, and Investigations (HLS DRCI) practiceシニアコンサルタントとしてFDA規制関連に着目したサービスを提供している。
医療機器及び診断分野の法令遵守、品質システム、監査(社内及び購買先)に関する業務に15年間携わる。市販前及び市販後の法令遵守が専門で、品質管理及び品質保証、文書管理、設計管理、ソフトウエアに関する法令遵守関係、リスクマネジメント、不適合製品に関する取扱い、苦情処理、有害事象、CAPAなどの経験を有する。組合せ製品に関する経験も豊富。
著者のご紹介
Paula Gray, Navigant
連絡先:317-288-725
paula.gray@navigant.com
Sharon Kvistad, Navigant
連絡先:317-228-8715
sharon.kvistad@navigant.com
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
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Y. Uchino
FDAの歴史には詳しいですか?
有効かつ安全なプロダクトの実現に向けた努力は 300年も前に始まっていたのです。 |
by Lisa Weeks
Marketing Communications
MasterControl
Editor’s note:本稿は二部構成の第一部となります。
秋真っ盛り。新学期の始まりです。
子供の頃、私は新学期が好きでした。 それは新たなスタートであり、新しい先生や新しい服、新しい文具を意味するものであったからです。あの頃初登場したTrapper Keeper®が最高のブランドだったことを思い出します。
ご存知のない方のために説明いたしますと、Trapper Keeperは80年代の文具の必需品で、カバー(キーパー)付きの3穴バインダーで、光沢のある原色のフォルダ(トラッパー)が中に収納されており、カバーは折り畳み式のマジックテープで留められるような構造になっていました。
私が持っていた、雲や虹やハートが描かれた美しい柄を今でも鮮明に思い出すことができます。そしてそれと同時に中学1年生の時、私が大好きだったMr. Wardの歴史クラスへと向かうときのあのわくわくするような気持ちが私の心に蘇ってくるのです。
ですが、悲しいことに子供たちには、私の学校や歴史そしてTrapper Keepersに感じている愛おしさなど伝わりません。「なんで僕たちがそんなことを知らなきゃいけないの?」「昔のことでしょ。訳わかんない」など不平を言うのです。
「楽しいじゃない」「面白いでしょ」と繰り返しても子供たちにはまだよくわからない様子で、おかしなことを言う人を見るような目で私を見ます。
最終的に「過去から学ばない人々が同じ過ちを繰り返す運命なのよ」と古い格言を言ってみると、興味を引いたのは『運命』という言葉だったようですが、彼らの注意をようやく引くことができたという次第です。
品質やライフサイエンスに関連する文書を読み書きする人がこの格言を聞くとドキっとしてしまいます。我々の業界では、確実に望ましい結果を得ること、あるいは望ましくない結果を回避することが経験や歴史が研究によって証明されているベストプラクティスの概念やテクニック・方法論といったものを糧にしているからです。
FDAは、あらゆる面においてベストプラクティスの管理人的な存在です。継続的改善や誤りから学習することの重要性を常に我々に思い出させてくれる役割をも担っています。
もしその重要性を我々が忘れてしまえば、危険な時に破滅的な状況に陥ってしまうのです。
FDAの起源
FDAは1930年に現在の名称となりました。
1906年6月23日に純正食品薬事法(Pure Food and Drugs Act)が通過し、現在のFDAの薬事的な業務が行なわれるようになりました。成立に四半世紀もの歳月を要したこの法律によって、不純物の混入や表示に誤りのある食品・医薬品の国内商取引が禁止されたのです。
(1)この法律制定以前は数多の怪しい治療薬や、様々な物質が混入する効果のない調剤、そして麻薬やアルコールが規制されることなく、どこでも誰でも購入可能な状況でした。
成分が記載されたものや誤使用に関する表示がある調剤はほとんど存在しない状態だったのです。したがって、人々は「薬剤師」から伝えられる言葉や経験から薬に関する情報を得なければならない状況にありました。
Pure Food and Drugs Act法案成立とFDAの設立は、第26代米国大統領Theodore Roosevelt氏と農務省化学局長(chief chemist of the Bureau of Chemistry in the Department of Agriculture)Harvey W. Wiley氏の功績です。
(2)1862年、Abraham Lincoln大統領やWiley氏の前任者であるCharles Wetherillが現代の食品及び医薬品に関する規制の種をまいたと言う人もいます。Roosevelt氏もWiley氏も、かつて存在していなかった消費者保護という局面に尽力し、その実現の一端を担った人物たちでした。
Pure Food and Drugs Actが施行日と同日に、Upton Sinclairの著書「The Jungle(シカゴ精肉業業界の暴露本)」を受けて、Roosevelt氏は連邦食肉検査法(Federal Meat Inspection Act;FMIA)に署名しました。
この法律により検査の権限が農務長官(Secretary of Agriculture)に付与され、不良(adulterated)や不当表示(misbranded)のある肉やその加工品が食用として販売されることを避け、肉やその加工品が衛生管理下で食肉処理、加工されることが定められたのです。
(3)FMIAの規制に従うことはとても簡単そうに思えますが、この法律により米国内の製造施設の現状がどのような状況にあるのか、またそれに対し施設責任者の目が配られていないという驚くような状況が白日の下になったのでした。悲しいことにこうした不適切な状況と人の目を欺むいた行為は、なんと300年間も続けられてきたのです。
・初期の食品及び医薬品に関する規制
初の植民地法: 1646 Massachusetts Bread Law
パン製造業というのは、ニューワールドに生まれた最初の商業でした。ほどなくして不誠実なパン屋は利益率を挙げる目的で、白亜や挽いた豆類といった安価な材料等を使用するようになったのです。本法律では「パン一斤」の価格は1ペニーと規定し、重量に応じて単価が下がる仕組みがとられました。査察官は施設に立ち入り「light(重量の軽いパン)」を押収していたのです。
*(lite(糖質やカロリーなどが低い)は当時存在していませんでした)
こうしたことは、はたして現代にまで何らかの影響を及ぼしているのでしょうか?
私はもちろん影響があると考えています。
(4)2007年中国のペットフードメーカーがタンパク質の代わりに、試験により模造可能な石炭誘導体メラミンを使用していたことが発覚しました。何千匹もの動物が腎不全に苦しみ死んでいきました。さらに酷いことに、2008年には中国の乳児用粉ミルクメーカーにより同様の不正が行われていたのです。確認されただけで少なくとも、乳児6人が死亡し、30万人が健康被害を受ける問題に発展したのでした。
・初の州法: 1785年、マサチューセッツ法Unwholesome Provisions Law
この法律は、特定の製品(パン等)だけでなく、食品全般に適用されるのは州で初めての法律でした。
FDA規則を読み解くのは大変だという皆さんのために、1785年の法律からの抜粋を以下に示します。
「…強欲や不正利得といった動機から悪意を持った者が、公衆衛生や平和を著しく害するような有病、腐敗、伝染、不衛生な食品を販売した場合」
なんてことでしょう!Form483やwarning lettersのことは忘れてください。
この法律の違反者は、「さらしもの」にされました。法を犯した者は数時間公の場にさらされたのです。
・初の連邦法:1789 Act of Laying a Duty on Imported Goods, Wares, and Merchandise
この法律には米国に輸入されている商品の品質管理を支援する目的で品質に関する条項が盛り込まれた収益創出を目的とする法令でした。
過去の食物及び医薬品に関する違反者への処罰 |
現代の食品及び医薬品に関する規制
1900年代初頭、Pure Food and Drugs Actが食物と医薬品の販売のための安全性および有効性に関し、その改善に大きな役割を果たしたものの、米国ではまだその取り組みは始まったばかりでした。法律の網をくぐり、特許権取得医薬品としてではなく「処方薬」として、悪徳業者は広告戦術を変えただけで怪しい薬の販売を継続し、近所の薬局に「あふれて」いる状態でした。
嘘の効能で最も多いのは現在も続いているダイエット製品でした。
(5)1906年の法律では、医薬品に対しその効果や純度の基準を設けるに留まっており、市販前にFDAへの医薬品情報の提出が義務化されていなかったため、健康詐欺が横行していました。
裏付ける医学的根拠のない癌のためのJohnson’s Mild Combination Treatmentのような「特効薬」が販売されることは完全に合法であると言えます。
米国政府対ジョンソン社の裁判で最高裁は、製品の有効性について1906法令の範囲を逸脱しているといった判決が下されました。
(6) ・1912年Sherley Amendment
米国対ジョンソンとの判決結果を受け議会は、Sherley Amendmentを立法化し医薬品の虚偽の効能記載が禁止されました。
Sherleyは、正しい目的への第一歩を踏み出したものの、理想からはかけ離れたものでした。
医薬品のラベリングに誤りやまぎらわしい記載であることの立証責任は政府にあり、その多くが立証困難な事例でした。
雑草のスギナから作られた偽糖尿病薬Banbarで多くの死亡事故が発生したケースでは、この薬品を服用した糖尿病患者の死亡診断書を政府が作成できたという事実や、薬製造業者が元シャツのセールスマンであったという事実にもかかわらず、陪審員が下したのは、医薬品メーカー側にとって有利な判決だったのです!
当然、2,000人以上の申込者の中から1907年に選ばれた最初の食品及び医薬品の検査官28名は、厄介な仕事を抱えることになったのです。
(7)・1914年Harrison Narcotic Act
特許権取得医薬品の乱用で最も悲惨な出来事には、赤ちゃんを泣き止ませるために与えられた「鎮静シロップ」の中毒がありました。当時一般的となった「鎮静剤」には、モルヒネやヘロイン・アヘン・アヘンチンキ(アルコールとアヘンの混成物)といった成分が含有されていたのです。
1906年の法律では内容物である麻薬(narcotics)の名称と用量の表示のみが義務付けられていました。このため、薬剤師が店頭で強力かつ常用性のある麻薬シロップを販売することが可能だったのです。
米国医師会と全国雑誌による反アヘン運動による圧力を受けて、1914年Harrison Narcotic Actが可決され、店頭での薬剤師による麻薬含有シロップの販売が禁止されたのです。
(8)・1938年Food Drug and Cosmetic Act
実際の変化は、S.E. Massengill社からエチレングリコール(不凍液)とトリメチレングリコールの副産物として生成されたジエチレングリコールが添加されていたエリキシール(スルファニルアミド)の製造及び販売に対する人々の抗議によって起こりました。エリキシールによる中毒が発生し、児童を中心に100名以上の患者が不幸にして死亡しました。人々は怒り、その後この溶媒を考案した化学者が自殺しました。
ある悲しみに打ちひしがれた母親が、6才の娘の死についてFranklin D. Roosevelt大統領に宛てて書いた痛ましい手紙の一文です。
「彼女との思いでは…小さい体が震え、小さい声で痛みを訴える姿であり、その思い出には悲しみがいっぱいで、私はとても正気ではいられませんでした。命を奪い、こうした苦しみを死後に残してしまう薬の販売をどうか停止してください… 」
(9)1937年のスルファニルアミドの悲劇が起こったことで、1906年の法律の全般的な見直しの必要性が明らかとなりました。この時、食品・医薬品・化粧品法(別名FD&C法及びFFDCA)が可決され、1938年6月25日にFranklin D. Roosevelt大統領が法案に署名しました。
消費者への販売前に医薬品の安全性を証明することが、初めて製造者に義務付けられたのです。1906年のPure Food and Drug Act が改正され1938年に本法律が成立しました。Sherley Amendmentも廃止され、有毒物質の安全性や耐性、認可された製造施設の査察などが盛り込まれました。
さてその後は? 引き続き、第二部もお楽しみください。
FD&C規制の改正は度々行われていますが、米国の食品及び医薬品の安全性に関する規制で中核となる法律は他にも存在します。第二部では関連する出来事も含めFD&C規制の重要な改正内容をご紹介いたします。
第二部には面白いクイズもあるのでFDAに関するあなたの知識を試してみてください。
歴史を語るのはやっぱり楽しいですね!
MasterControl社 品質部門マネージャーのLillian Erickson女史からの多大なるご協力いただきましたことに、心より感謝申し上げます。
著者のご紹介
Lisa Weeks
MasterControl社マーケティングコミュニケーションスペシャリスト。テクノロジーやライフサイエンスや規制に関連する業務など、広範囲のテーマで執筆活動を行っている。
McNeil Pharmaceuticals、SAP AG、SCA Mölnlycke、Crozer-Keystone Health Systems、 NovaCare Rehabilitation/Select Medなどの企業のマーケティング及び広告に関する業務を20年間行ってきた経験を有する。Medical Product Manufacturing NEWS (MPMN)、Medtech Pulse、Risk Insights, MD+DI、Pharmaceutical Processing、Genetic Engineering & Biotechnology News (GEN)、PharmaTechなど多くの業界紙においてそのスキルが発揮されている。
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Y. Uchino
2017年3月7日火曜日
FDAが21世紀に果たすべき役割
現在の医療市場は、1906年FDA設立時から大きく変わっています。 |
Executive Director, Rothman Institute of Innovation & Entrepreneurship
現在の医療市場は、FDA法の基本的事項が可決された頃のものから大きく変わっています。
テクノロジーは著しい発展を遂げ、患者の新薬・医療機器に対する要求は益々高まっているにも関わらず、FDAは医薬品承認のために法的に定められる安全性や有効性の基準から大幅に反れてしまいました。
現在、FDAは販売承認の要件として生存率や疾病の転帰を含む臨床的有用性の立証を求められることが多くあります。しかし、臨床的有用性における決定的証拠となるデータを得るのは、たとえラベルに安全性や有効性が明確に記載される医薬品であっても定義しにくいものとなります。このような理由により安全かつ有効な医薬品の承認を阻むことよりも、医師や患者が転帰重視の意思決定ができるようになることが必要なのです。
そして、医療市場を通じて医師が実世界において高い臨床的有用性をで安全かつ有効な医薬品の導入を促進していくことです。
本調査では、新しい医薬品に対するFDAの現行のポリシーについて評価を行い、FDAが医薬品・医療機器の安全性及び有効性の監視役としての役割に戻るべきであると結論付けています。
公衆衛生に関するFDAの責務が議会の意図していないやり方で行われているため、健康に関する民間の判断にFDAは深く介入するようになってしまっています。医薬品の最善の使用法を決定できる環境に医師や患者が身を置けるよう促し、市場に置かれた医薬品の安全性及び有効性の確保に徹底するのではなく、FDAはベネフィットとリスクに関し医師や患者がどのような判断を下すのかという結果をコントロールすることへの関心を高めてしまっているのです。
新しい医療の市場では、安全性や有効性に関しFDAに再び焦点を当て、医薬品のベネフィット及びリスクの評価や判断はその使用経験に基づいて、患者や医師が行うことが可能であるべきだと考えます。
著者のご紹介
Dr. Joseph Gulfo
Dr. Joseph Gulfo
Fairleigh Dickinson 大学でRothman Institute of Innovation & Entrepreneurshipのエグゼクティブディレクターを務め、患者の立場に立った改革をイニシアティブする手法(Initiative for Patient Centered Innovation) を確立。バイオ医薬品及び医療機器業界で25年の経験を有する。2012年には、最優秀ビジネス大賞American Business Awardsを受賞し、Ernst & Young Entrepreneurとして最終選考に残る。大学院にて癌生物学の教鞭をとる。過去にはMELA Sciencesで社長兼CEOを務め(2004-2013)、取締役会長(2011-2013)でもあった。近年では、Homeland Security and Government Affairs Committeeで"Connecting Patients to New and Potential Life Saving Treatments”に関して証言を行い、同氏の取り組みはWall Street Journal、Forbes、CNBC、US News & World Report、その他の国内の出版物でも取り上げられている。The Hillへ定期的に寄稿。
最新の出版物には、2016年9月13日出版予定の同氏の最新本「Care Quotient: Transforming Business Through People」は、予約注文が可能である。
本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。
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Y. Uchino
2017年1月30日月曜日
米国本社移転のご案内
マスターコントロールは、ここ数年の業務拡大及び業務効率の向上をはかることを目的に、米国本社を下記に移転することを決定いたしましたので、お知らせいたします。
所在地: Old Mill III, 6350 South 3000 East,
Salt Lake City, UT 84121
業務開始日: 2017年2月1日
電話: 1-801-942-4000
FAX: 1-801-942-7088
新オフィスは、旧オフィスから徒歩数分の同じビジネスエリアに位置しています。また、2017年4月までの製品トレーニングは、旧オフィス(Old Mill IV)にて実施いたします。
今後とも、変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
まずは書中をもってお知らせかたがたご挨拶申し上げます。
所在地: Old Mill III, 6350 South 3000 East,
Salt Lake City, UT 84121
業務開始日: 2017年2月1日
電話: 1-801-942-4000
FAX: 1-801-942-7088
新オフィスは、旧オフィスから徒歩数分の同じビジネスエリアに位置しています。また、2017年4月までの製品トレーニングは、旧オフィス(Old Mill IV)にて実施いたします。
今後とも、変わらぬお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
まずは書中をもってお知らせかたがたご挨拶申し上げます。
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