2015年4月27日月曜日

教育管理で発生しがちな5つの問題点

Cindy Fazzi
MasterControl Inc.


多くの企業では、品質の概念は電子的な方法ではなく、主に紙媒体で明示されていると思います。あなたならどちらの方法を使用しますか?

規制対象企業である場合、品質基準を書面で掲げているだけでは不十分だということはご存知だと思います。実際に実施し、日々の業務への統合が必要であり、また、監査機関に対して基準や方針が正しく機能していることを証明しなければなりません。

製品管理ディレクターであるMasterControl(1)のDave Hunter氏の言葉を借りれば、「教育とは、品質を理論から現実へと転換させる一助となるものなのです」。
「効果的な教育は企業の品質管理戦略上の基礎部分となるもので、多くの品質問題の発生を防止するものとなるでしょう」。

それでも、大部分の規制対象企業において、品質は教育にではなく、紙を基本とした方針、SOP、作業手順書、マニュアルやその他に表現されています。

規制対象企業と長らく仕事をした経験から、Hunter氏は教育管理における5つの問題点を挙げています。これらの問題点は、自動化されたシステムを採用していない企業で拡大されてしまいます。



                                              
本記事に関連するホワイトペーパー
How Effective Training Management Can Help You Prevent Quality Issues. 


【1】規模と複雑さのマイナス影響

企業には、通常、その事業のさまざまな領域のSOPが定められています。例えば、企業に100人の従業員に適用される12のSOPが定められている場合、このグループの従業員だけで合計1,200もの教育タスクがあることを意味します。更に企業が紙ベースまたは複合型(一部紙媒体及び一部電子媒体)または自社製システムを使用する場合には、この労力は二倍となります。電子メールによる教育資料及びタスクの送信、スプレッドシートによる出欠及びタスク完成の追跡、対面やオンラインによる教育や試験の実施といった作業が伴います。

2】教育に繋がっていない文書改訂

通常、文書やプロセスが変更されると、更新したプロセスに対する再教育が必要となります。文書改訂手順が教育管理に繋がっていない場合、問題を見逃しやすくなり、従業員が旧SOP、マニュアルやその他文書の理解に基づいて職務を遂行してしまう可能性があります。この問題は、文書改訂と教育管理に紙ベースのプロセスまたは異種のシステムを使用する企業で一般に起こりがちです。

【3】不必要な事務上の負担

教育コーディネータは、通常、カリキュラムの作成と準備、教育プログラムの実施を行っています。手動のプロセスでは、大部分の時間とエネルギーが、教育管理の分配、フォローアップ、エスカレーション及びトラッキングに費やされます。また、これと同じくらいの時間が、試験実施、結果の検証、教育管理完了のトラッキングに費やされます。

4】監査及び査察の準備ができていない点

顧客または規制当局担当者による監査の観点から、教育に関し最も重要視されることは、規制に対応する教育記録をとっているかということです。監査員が組織図を見て、無作為に従業員の教育記録の提示を求めた場合に、準備ができていない企業が多く見受けられます。

【5】効果的ではない適格性評価

適格性の評価には注意が必要となる部分があります。多くの企業は、教育プログラムの本質をとらえるテストの作成や実施という点で失敗しています。手動のシステムでは、教育コーディネータは、日常的な業務に大きな労力を費やしているため、カリキュラムの内容に集中する時間がほとんどありません。


【教育コンプライアンス】

教育は、製品品質と安全性に欠かせない要素となっています。だからこそ、さまざまな基準及び規制(製薬企業向けFDA 21 CFR Part 820.25、医療機器メーカー向けFDA 21 CFR Part 820.25及び一般製造業者や他の企業向けのISO 9000 2000)では、良質な管理システムの一部として教育が要求されるのです。

企業がゼロから教育管理を確立しようとしているか、既存のプロセスを改善しているかどうかに関わらず、教育要求事項を全体のコンプライアンスや経営目的と統合しなければなりません。手動または自社製のプロセスを使用している場合は、自動化したシステム(2)への切り替えをご検討ください。教育の土台を選択する際に、最新技術をご活用ください。教育管理の確立及び維持に費やす時間、労力及びリソースは、長い目で見ると作業に付加価値を与えるものです。


【参照】

(1)Dave Hunterは、2002年にMasterControlに入社。彼の広範囲な技術経験は、マイクロソフト、ED、インテル及びTenFoldなど20年以上にも及ぶ。Brigham Young Universityから電気工学学科学士号及びMBAを取得。

(2)MasterControl Training及び教育管理の自動化及び合理化について詳細をお読みになりたい方は、http://www.mastercontrol.com/training_software/にアクセスしてください。


Cindy Fazzi
MasterControlユーザーを対象とするMasterControl Insider(毎月発行)のエディターを務める。主にライフサイエンス業界及びその他の規制対象環境について執筆。オハイオ及びニューヨークのAP通信社における経験は、新人ニュースリポーターから始まり、ライター及びエディターとしての20年に及ぶ。Ohio State Universityのジャーナリズム学科で修士号を取得。



本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年4月20日月曜日

リスク管理結果の評価

Rod Farrar
Director, Paladin Risk Management Services


Dr. Alan McLucasの著書「Decision Making:Risk Management, Systems Thinking and Situation Awareness(意思決定-リスク管理、そして状況認識)」からリスク管理のパラドックスについての概念をご紹介いたします。

「効果的なリスク管理業務というのは、典型的なパラドックスに振り回されてしまうものです。つまり、日常的にリスクが効果的に管理されていると、不測の出来事は非常に稀にしか発生しません。そのため慎重なリスク管理行動がどれだけ効果的であるかについて、誰も気付かないものなのです。管理担当者の肩をたたいて非常によくやったとは誰も褒めてくれません。しかしその正反対に、十分にリスク管理されない場合、一同が異口同音に非難するのです。」

組織のリスク管理者とは報われない業務である---きっとそんな風に感じたことがありますよね?

このパラドックスは、非常に重要な2つの見解をもたらしています。まず、なにより明白であるのは、組織のリスク管理担当者であるということは、報われない業務を行うことだということです。お褒めの言葉を頂戴することなど滅多にないことですし、逆に成果が結果通りに得られない場合には、最初に厳しい目にさらされるのです。第2の見解として、組織は、リスク管理の成果やリスク管理が組織に与えている価値の評価に慣れていないと考えます。

リスク管理が組織にもたらすメリットを評価することは難しい課題であります。こうした難題の解決には、リスク管理の実績評価にあたり広範囲な要素を考慮する必要があります。
評価は次の3つの分野に分けられます。

a.法令順守:組織が自社のリスク管理方針の指示に従っているかについて評価。

b.定着度:業界のベストプラクティスに対する組織のリスク管理プログラムの定着度を評価。

c.付加価値:組織の目的の達成度及び成果の一因となっているリスク管理の貢献範囲を評価。



本記事に関連するホワイトペーパー:



【法令順守】

組織のあらゆるプログラムと同様、リスク管理プログラムも順法監査の対象となります。この監査は、組織のリスク管理方針に詳述される基本的な要求事項の順守を確実にすることを目的としています。

一部の組織では、リスク管理方針の順守に関する評価は単なる評価にすぎません。リスク管理プログラムの実績を方針の順守に限定しているような場合には、根本的な欠陥があるのです。

リスク管理方針の要求事項すべてを100%順守しているものの、リスク管理が効果的な成果を生じていないケースも実際に考えられるため、注意する必要があるのです。


【定着度の評価】

組織のリスク管理体制の確立における第一ステップは、既存の管理プロセス及びシステムを評価することです。組織のリスク経営管理プロセスの現状を理解するのに最も有効な手段は、リスクマチュリティ評価を実施することです。

Paladin Risk Management Servicesが実施した評価結果を以下に示します。

組織は、リスクマチュリティに関する経時的変化の向上に取り組むべきだと考えます。






【付加価値】

法令順守及びリスク管理プログラムの定着度の評価は絶対的に不可欠なものである一方で、リスク管理が組織の目標達成の一因となっていることに多くの組織は関心を示していません。

皮肉なことに、組織で現在評価されているリスク管理の実績を示す評価基準を使用すれば、リスク管理の貢献度を把握することができるのです。

組織がリスクマチュリティの改善を継続的に行う場合、こうした評価基準に基づく実績も向上していきます。直線的関係を得られることは決してありませんが、リスクマチュリティが増大すれば結果的に実績も向上します。

次の図は、これを可視化した数値指標です。












これらの図表を具体的に説明すると、組織がリスクマチュリティを基準に従って評価する際には、同時に実績の評価に対しても基準に従って評価する必要があるということです。

しかしながら、これは精密科学ではないため、直接的に関係性を証明するのは不可能であることを理解しなければなりませんが、リスク管理の改善と実績の向上には非常に良好な相関関係が明らかになっています。

リスク管理の成果を評価する場合、これこそが企業が最も強く望んでいることなのです。

(※Paladin Risk Management Servicesから著者の許可を得て複製。)


この情報を使用する方法について:
LinkedInフェイスブックに投稿し情報を共有する。
下記にコメントを残してください。
rod@paladinrisk.com.auまでコメントをお寄せください。


Rod Farrar
オーストラリアでリスク管理に関するトレーニング及びコンサルティング・サービスを提供するPaladin Risk Management Services社のDirectorを務める。Paladin社の主要なトレーニングであるDiploma of Risk Management and Business Continuity、Advanced Diploma of Governance, Risk and Complianceには、オーストラリア全域及びインドネシア、ニュージーランド、パプアニューギニア、ソロモン諸島から300名以上が参加する。連絡先:rod@paladinrisk.com.au


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年4月16日木曜日

FDA査察 vs EU査察:類似点と相違点

Marie E. Dorat, CQA, CAA
IPRF, LLC
RA/QA Consulting & International Product Registration


【EU-FDA共同イニシアチブ】

米国食品医薬局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)によるGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)イニシアチブは、2009年9月に査察共同イニシアチブをスタートさせました。この査察プログラムは、米国及び欧州連合(EU)の治験実施施設、治験依頼者及び医薬品開発業務受託機関(CRO)を対象としたものです。

GCP査察共同実施は、欧州委員会、欧州医薬品庁(EMA)及びFDAの3機関で締結されています。このイニシアチブにより、査察及び所見に関する情報の共有化が整備され、共同査察の円滑な実施が可能となります。最終的な目的は、欧州連合(EU)及びFDAの査察官が同一施設に関して同じ情報を共有することです。


【では、ここで求められているものとは何なのでしょうか?】

FDAによる治験実施施設の査察は、医薬品、生物製剤または医療機器など製品固有な内容で実施されます。治験分担医師は、具体的には21 CFR 312(Investigational New Drug Application)及び21 CFR 812(Investigational Device Exemption)の規制を含むFDA規則を順守しなければなりません。治験依頼者、CRO及びモニターが対象の査察の場合には、治験依頼者やCROによって実施された業務と手順についてFDAへの申請で定めた内容との比較が行われます。


                     
 本記事に関連するホワイトペーパー
Managing Change Control to Comply with FDA and EU Regulations


EUの場合、監督はEMAのGCP査察実施部門(GCP Inspection Services Group)が担っています。EMA査察は、部門からの要求時、特定製品への関心が高い場合や、あるいは単にGCP要求事項への順守を確認するために実施されます。査察官は、共同実施イニシアチブを通じて加盟国間での整合性を図り、欧州諸国間において治験に対し認知される取り決めとの適合性を確認します。EUにおける臨床試験実施要求事項には、GCP、GMP(医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令)及び査察が含まれており、臨床試験指令(指令2001/20/EC)、GCP指令(指令2005/28/EC)及び関連するガイダンスにより実施されます。


【査察準備】

担当者の準備という観点から、模擬査察を実施されることを強く推奨します。ICH/GCP Consolidated Guidanceを使用しての包括的なチェックリストの作成、特に必須文書(Essential Documents)に関するチェックリストの作成について検討すべきだと思います。

  • 施設におけるすべての証拠資料(Documentation)の確認
  • 担当者とのGCP要求事項及びプロトコールの確認
  • 治験依頼者やIRBから適切な認可をすべて取得しているかの確認
  • 限移譲に関する責務の対応がなされているかの確認
  • 証拠資料(Documentation)に対する正確性及び法令順守の観点からの確認
  • 矛盾の有無を確認し、修正可能な場合は修正、この時点で修正できない項目は明確化を図る(通常は“Note to File”)。
  • 記録の欠落の特定
  • 可能な場合、未解決の問題や未処理の問題を解決
  • 原資料と症例報告書(CRF)の入力値を比較し、データ入力の正確性を確認
  • 薬事関連ファイルを見直し、現行の必須文書が含まれていることを確認
  • 同意取得を得るための同意説明文書フォーム及び手順の確認

 模擬査察では担当者と実際に面接を行い、誰が何について説明するか決定します。質問に対する回答の練習を行ってみてください。査察官からの質問事項に対する回答内容について話し合い、次の事項について徹底していきます。

  • 簡潔であること。問題とされている内容に対してのみ回答する。
  • 回答は正直かつ率直に。
  • 任意の情報提供は行わない。
  • 推測や憶測を述べない。
  • 議論しない。

査察の通知を受理したら、査察の準備に取り組みましょう。行動順序を考え整理していきます。

  • 査察官用に個室を予約。
  ◦ 治験に登録した全被験者の診療記録及び症例報告書が利用できるように準備します。 
  ◦ また必須文書ファイルも用意しておきましょう。


  • 査察官が到着するまでに適切なファイルにアクセスできるように、コンピューターの設定を行う。

  ◦ アクセス制限のかかった一時的なパスワードを設定し、利用可能な状態にしておきます。
  ◦ データベースの内容に関するクィックリファレンスガイド(早見用手引き)を準備しておきま
    しょう。


  • 近くにコピー機を準備する。


【査察当日】

FDA査察官が身分証明書及び署名のあるFDA Form 482(Notice of Inspection)原本を監査対象企業の一番の責任者(通常管理責任者)に提示し、査察が開始されます。一方、EUの場合、査察開始時に提示するために発行される公式文書はありません。その代わりに、オープニングミーティングで査察の目的、期待内容、必要な文書や面接が必要な担当者などについて、口頭で説明が行われます。

FDA及びEUの査察官はいずれも、企業から要求される文書への署名義務はありません。FDA査察官は、FDAのフォーム以外のものへは署名しないように指示されていますが、こうした要求は書面による施設査察報告書(EIR)への報告の対象となります。この点に関してはEMAもFDAと同様です。

FDA査察官及びEU査察官の両者は施設の確認を行い、リソース、要員、また施設全体が実施予定の治験に対し適切であるか否かを確認し、評価するための質問を投げ掛けます。見学の際には、手順書及びその他の文書(製品保管場所の温度管理/記録など)が求められる場合があります。

EU査察官は、要求し受領したすべての文書の追跡記録を保持します。すべてのリクエストが文書により記録されていることを確認する目的で、この文書は査察実施施設へ提出されます。一方、FDAの場合には文書の正式な要求は口頭のみで行われます。引き続き査察官に立ち会い要求、質問事項及びコメントをすべて記載する担当者を決めます。また、査察官に提示する全ての文書に『Confidential』のスタンプを押してください。可能な限り、査察官に提示するコピーから被験者の識別情報は削除しておきます。


【査察終了時クロージングミーティング】

査察の終了時に、FDA査察官から書面によるFDA Form 483(List of Objectionable Conditions)が被査察施設に渡されます。これは査察時の重要な査察所見の報告書であり、製品やプロセスに関連する重要な所見や、FD&C法及び関連法への違反の有無が記されています。FDAの場合、重要且つ認可対象の製品または被査察プロセスに関連する所見のみがリストされます。前回査察時の所見が修正されていない事項や、再発している事項がある場合にはFDA-483に記載されます。

EU査察官の場合、査察の終了時に問題ありと判断された所見の書面によるリストは提示されず、その代わりにクロージングミーティングにおいて口頭で所見に関する説明が行われます。EMAからは、各被査察施設に対し査察報告書及び総合査察報告書(IIR)が提供されます。監査報告書は、英語で作成されます。施設査察では、治験実施者と治験実施責任者に報告書の写しが提供されますが、CRO/治験実施責任者の査察は被監査組織にのみ写しが提供されます。

クロージングミーティングでは、査察官からのコメントや査察官との協議内容をすべてメモします。監査の際の是正事項については説明を行ってください。所見についての査察官の解釈に異議があれば話し合ってください。可能な限り、どのような問題も査察官と対面している間に明確にしておきましょう。明確、正直、そして万全な準備というキーワードを忘れないでください。



Marie E Dorat
法令順守/維持に取り組む企業を支援する薬事/品質管理コンサルティング会社IPRF社のCEOを務める。IPRF社は、国際製品登録書類の合法化にかかる時間を2か月から2~5日に短縮するといった費用効果に優れたシステムを提供し、競合他社よりも一歩早い製品の市場投入を実現する支援を行っております。医療機器及び生物薬剤/製薬業界における品質管理の現場でその専門スタッフとして13年間在籍。品質管理システムに関する並外れた知識と規制に関する高度な専門知識を備え、さらに、バリデーション、ギャップ分析、CAPA、変更管理、監査及びトレーニングにおいて豊富な経験を有しております。cGxPsガイドラインの順守、ISO規格、国際的な規制への順守を確実にし、クライアント品質管理システム/eQMSを開発、適用し、運用しています。360Predict eQMSシステムのSMEも務め、その開発を支援しています。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年3月30日月曜日

ISO 9001:2015改正への対応

Christopher Paris
Operations, Oxebridge Quality Resources


ISO9001次期改正は2015年内の予定であり、これまでの版よりも大きな論議を呼ぶことが予想されています。
ドキュメントは現在、国際規格原案(DIS :Draft International Standard)の段階でほぼ固まっており、最終案に向けた作業での変更はほとんどないと思われます。

改正対応に大きなプレッシャーを与える内容の記事をインターネット上で見かけますが、変更内容は我々が考えるほど大幅なものではありません。
現行の2008年版と文字数だけを比較してみた場合、新規要求事項はなく、74%は単に既存の要求事項の文言の変更であり、残りの20%はISO評議会からの新規要求事項、6%はTC176による新規文言となっています。

「ISO9001:2015への移行」に向けて多額の費用を費やしたくない企業にとっては朗報かもしれませんが、ISO9001が21世紀に対応する、より近代的な規格へと進化することを期待する企業にとっては、朗報とは言えません。


【Annex SL】

要求事項のテキストは、ISO専門委員会(TC :Technical Committees)の運営手順に関する全要求事項を定めた「Consolidated Supplement(総合版ISO補足指針)」と呼ばれるISO専門手順書に従って作成されます。発行は、TCの全活動の監視組織であるISO技術管理評議会(TMB:Technical Management Board)が行います。
通常、TCはISO規格のみ発行できることになっていますが、ISO加盟国の代表でTCが構成されていることから、2009年にTMBはISO9001や14001などすべてのISOマネジメントシステム規格の共通要素である「章立て(High Level Structure)」を定めたISOガイド83の作成に乗り出しました。
ガイド83(案)は最終化されることがなかったため、TMBはその後、異例(かつ水面下)ながらガイド83の用語をAnnex SLとして総合版ISO補足指針-ISO専門手順に組み入れました。これによりTMBはTCの代表者の合意なしで、TCに旧ガイド83の規定を採用させることとなりました。

従って、TC176ではAnnex SLを変更することなくその構造や用語を導入することが求められ、新しいAnnex SLの番号設定に合わせてISO9001の条項を再構成するのに多くの時間が費やされました。
2015年発行というISOからのプレッシャーに加え、直接顔を合わせる例会の実施回数も極めて少なかったことから、TC176ではISO9001に対し品質マネジメントの新しいベストプラクティスや最新の進展を考慮するには、とにかく時間が足りない状況でした。


【リスク思考(Risk-based Thinking)】

ISO9001へのリスク概念の導入には、多くの解釈があります。TC176の偏った解釈とは対照的に、リスク概念の導入はユーザーの声から生じたものではありませんでした。
ISO9001ユーザーの要望に関して実施されたユーザーサーベイでは、リスク概念の導入は第5位でしたし、このサーベイが終了する約1年前にはすでにTC176にAnnex SLが義務づけられていたことになります。

社内にはリスクマネジメントの専門家はおらず、TC176はタイトなスケジュールの下でこの複雑な分野の調査に行き詰まり、それを打開できずにいました。
「リスク思考」という概念は、TMBからのリスクの組み入れに関する指令に対応したものであると同時に、これまでの是正措置用語の問題を解決するために考え出されたものでもあります。
ここで問題なのは、「リスク思考」というものが既存のリスクマネジメント領域に存在しておらず、さらにリスクに関する専門的な知識体系にもない概念であり、TC176が何の根拠もないところから考案されたものということです。
その結果、リスクに関する要求事項では、実質、何も要求していません。記録、手順、プロセス、リソースに関する要求事項がないのです。これはリスクマネジメントではないとさえ明確に述べているのです。
単にリスクについて考えることが要求されており、企業ではすでに実施されています。ISOに設置されたリスクマネジメントに関するTCに所属する委員が「リスク思考は音声のボトルを販売するようなものだ」とコメントしたことがあります。

ただその前に、GCPについて簡単に触れたいと思います。残念なことに、米国規則ではGCPに対しては、GLPまたはGMPほど白黒はっきりとした区別がありません。生データの定義さえも明確にされていない状態です。手短に言えば、GCPとは「販売承認に関する法令基準を満たすことができるデータ」を提供し、治験責任医師に対し「十分かつ正確な病歴」の維持を要求するものであります。新薬の製造及び販売を可能にする意思決定を裏付ける目的でヒト対象者から得た信頼性の高い試験施設データは、非臨床及び製造の試験施設データと同じデータの完全性という特性を有するべきであるということにご同意いただけると思います。

上述以外に議論の的となっているのは、「ポジティブリスク」の概念で、ネガティブリスクと同様の取り組みをISOは組織に期待しています。
ポジティブリスクという概念は、リスクマネジメント専門家のあいだでは意見が二極化しており、製品安全や金融・保険の専門家のあいだでは拒絶されています。
それでもISOがポジティブリスクの推進派であるため、現在のISO9001規格ではひとつの要素となっているのです。


【その他の改正】

その他の重要な改正は次のとおりです。

  • 組織の構成――これはISOへの適合性を理解する前に、企業に自社の組織構成を把握するよう強く要請する歓迎すべき変更点です。
  • 人的要因――明確に表示されているわけではありませんが、作業環境におけるこの新しい用語は、企業に対し職場内での「社会的・心理的」要因の管理を求めています。つまり、品質管理担当者や監査員は一夜の心理学者にならざるを得ないような惨事も起こりかねません。
  • 変更管理――最終的に、管理された方法でプロセス変更の実施を確実にすることという用語をISO9001に追加しています。
  • 文書化された情報――TC176は「文書」と「記録」をどうした理由からかひとくくりにして「文書化された情報」としています。現在、ISO9001が求めているものは文書なのか記録なのか、あるいは何の管理規定がどれに適用されるのかさえも不明確です。TC176からは偏った見解が述べられていますが、文書管理規定では印刷物を綴じて保管する方法や署名がいまだ好ましいものとされています。Wikis、SharePoint、Confluenceなどの最新ツールに移行している企業にとっては、適合への対応は困難となるでしょう。
  • 組織的な知識――リスク思考と同様に新規要求事項であり、また「知識」とは何であるのかが定義されていないことから、TC176がここで何を要求しているかは不明確です。
  • ドキュメンテーションの削減――いろいろと言われていますが、TC176は文書化については表現を変えるに留まり、廃止はしませんでした。明確に手順を要求する代わりに、「定義する」という単語をいたるところで使用していますが、書かずにどのように定義するのか疑問です。依然、TC176は「包括的」と「曖昧さ」を混同しているのです。

【不足点について】

  • 圧倒的ハードウエアバイアス――サービスプロバイダーはISO9001を引き続き敬遠すると考えられるため、代わりにCMMIや別の規格を実行する方向性が強まっていくと思われます。TC176はこの問題には解決の糸口がないとし、すでに規格を分割する必要があります。
  • プロセスと目的がリンクしない――規格では、品質目標とプロセスが堅固に結びついていないため、プロセスアプローチはいまだ紛らわしいままです。せっかくの好機を逃してしまいました。
  • フレキシブルなデザインモデル――ISO9001は現在もAgileなど多くの最新モデルとは相反する設計及び開発モデルを要求しています。まるで1950年代から抜け出せないかのようです。

【生き残りをかけて】

幸いなことに、新規格には曖昧で不完全な概念がたくさんあり、企業はいかようにも解釈することができます。ISO9001:2015のもとでは、企業が生き残る重要な鍵は「調整力」にあるのです。

中身のない品質管理マニュアルを作成するよりも、ISO9001要求事項の解釈を条文ごとに定義する方針文書を作成すべきです。単文でも構わないので方針を作成したら、次にこれを支持する手順を示します。これらは従来の品質管理マニュアルのようですが、まったく別のもののように見えます。こうした文書は、トレーニング用として、また何より第三者監査員への提供用として役立ちます。

このようなポリシーステートメント(方針要綱)は、企業のプロセスに沿ったものであるべきで、各プロセスは必ず(多くではないにせよ)いずれかの要綱と対応させます。次に、各プロセスの目的(プロセス毎に最低1つ)を決め、これをポリシーステートメントの裏付けとし、各プロセスの効果を評価することが可能となります。不明確なプロセスマップや忌まわしいタートル図を処分する良いタイミングかもしれません。

次に、企業独自の解釈に関して問題に遭遇した場合、特に認証機関の監査員から異議があった場合には、企業の意見を主張する必要があります。解釈上の不一致がなく実際の要求事項に厳密に沿っていることを認証機関(CB)の監査員が理解すれば、企業による解釈を受け入れるはずです。これまでは企業がCBに対し解釈のガイダンスを求めていました。つまり後ろ向きだったのですが、認証機関は企業による解釈を評価する機関であり、認証機関の解釈を評価するものではありません。

最後に、CBとの間に避けられない衝突が発生する状況においては、企業は自社の主張や抗議を行い、抗議をエスカレーションする権利を行使する準備が必要です。CB業界では、監査員のトレーニングに経費をかけることを嫌がり、特にリスクマネジメントに関する複雑な分野に関しては、今すぐに着手することはないでしょう。企業は再度自社の解釈に関するドキュメントを示し、問題に遭遇した場合には意見を主張するのです。企業は、これまで以上に監査員の規定を定めたISO17032及びISO19011を読み込む必要があり、身を守るためにいつでもこの規定を使えるようになっておかなければならないのです。

結果的には、企業のプロセスに適切に対応し極めて優れた最終製品やサービスを保証するプロセスをより効果的に評価する、より根本的な品質マネジメントシステムが構築されます。しかし、これらはすべてISO9001のためではなく、ISO9001とは無関係に生じるもので、TC176が国際的に発信した大きな欠陥のある曖昧な用語を大いに活用することに依存しています。
ISO9001:2015に備えてあなたの会社ではどのようなことをしていますか? どのようなことにお困りでしょうか?
下のコメント欄に記載いただくか、弊社SNSページまでご意見をお寄せください。

         
Christopher Paris
化学製造業界にて勤務後、現職はOxebridge Quality ResourceのVP Operation、またISO9001及びAS9100のエキスパートであり、ISO TC176 米国技術諮問グループ前主任監査員も歴任しています。Oxebridgeは、SpaceX、Lufthansa、Northrup Grumman、L3、JetBlueとも取引があります。また、Christopher Parisは世界唯一のISO9001のパロディーであるEyesore 9000を書いた風刺作家であり、そのダウンロード数はほぼ2万5千回に達しており、規格対応に携わっている企業の権利に関する熱心な提唱者として世界的に活躍しています。お問い合わせは、www.oxebridge.comからアクセスしてください。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

2015年2月25日水曜日

SNSアカウント開設のお知らせ

マスターコントロールでは、お客様への新しい情報発信の方法として、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を開始致しました。SNSでは、ソフトウェアやサービスの最新情報に限らず、業界の専門家による規制動向等の論文や批評、また、マスターコントロール及び関係会社が提供するイベントやセミナーの情報などの掲載も予定しています。各SNSアカウントへのアクセスは下記URLをご確認ください。





最後に、マスターコントロールの会社紹介や製品紹介、お客様事例などの動画をご紹介するYouTubeアカウントも開設致しました。現在は少ない本数ですが、今後拡充していく予定ですので、併せてご覧ください。

 



 「MasterControlについて」      

全世界の社員が出演し、マスターコントロールについて紹介しています。







それでは、今後ともマスターコントロールを宜しくお願い致します。



2015年1月13日火曜日

FDAによるデータの完全性に関する新たなQ&Aの発表

Jamie Colgin(Colgin Consulting, Inc.)著
先日、発表されたFDAの新たなQ&Aは、GMPを対象にするものですが、信頼性保証に従事する誰もが活用できる7つの質疑応答から構成されています。
FDAは新たに7つの質疑応答を公表しました。その中で、データの完全性及び電子署名に関して3つの質問が取り上げられています。また、Q&AはGMPを対象に作成されていますが、他の分野でも学べることの多い内容となっています。

・ システムにて作成された電子記録を保持する:紙媒体の印刷物はこれと同等ではない
・ コンピュータシステムのアカウントは共有しない:アクションの属性から個人を特定できるこ
・ 電子署名を使用する:署名者の特定を確実とする方法を文書に記録すること

その他の質疑では、監査報告書の破棄、原材料の判定及び対処、化学物質、試薬、溶液及び溶剤の使用期限の設定、システム適合性試験への実サンプルの使用に関する内容が取り上げられています。
最初の2つの質問に関しては、FDAがここ3年間に発行したWarning Letterでも頻繁に取り上げられている内容です。

この記事はホワイトペーパー「Managing Change Control to Comply with FDA and EU Regulations」に関連しています。詳細はフリーコピーをダウンロードしてください。

データの完全性及び電子署名に関する3つの質問をさらに掘り下げていきましょう。

ただその前に、GCPについて簡単に触れたいと思います。残念なことに、米国規則ではGCPに対しては、GLPまたはGMPほど白黒はっきりとした区別がありません。生データの定義さえも明確にされていない状態です。手短に言えば、GCPとは「販売承認に関する法令基準を満たすことができるデータ」を提供し、治験責任医師に対し「十分かつ正確な病歴」の維持を要求するものであります。新薬の製造及び販売を可能にする意思決定を裏付ける目的でヒト対象者から得た信頼性の高い試験施設データは、非臨床及び製造の試験施設データと同じデータの完全性という特性を有するべきであるということにご同意いただけると思います。


【試験機器データ】

最初のデータ完全性に関する質疑では、Part 11及び関連規則要件をどのように「コンピュータ化されたラボラトリーシステムにより作成された電子記録及び医薬品の製造及び試験に使用され印刷されたクロマトグラムによって作成される電子記録に適用する」のかについて取り上げられています。

FDAは、印刷された記録を必ずしも電子記録の「本当のコピー」や「正確かつ完全な」コピーとはみなさないとしています。電子記録は、「インジェクションの順序、計測器法、インテグレーションの方法、または監査証跡」など「クロマトグラムを作成するために使用した」情報または有効性の確立に使用される情報を含みます。従って、「コンピュータ化されたラボラトリーシステムにより作成された電子記録は、これらの要件に基づき維持されなければなりません。」

GLP試験に関しては、Part 58においてすべての生データの保持が要求されており、生データ及び正確なコピーの定義を規定しています。しかしながら、GLP及びGCPの試験施設で使用される大部分の計器に関しては、FDAの回答で記述される同じ理由から、印刷された記録は電子記録の「正確なコピー」とはならないのです。

では、我々は何をすべきなのでしょうか? GLP及びGCPで使用される計測システムによって作成される電子記録を維持します。紙媒体の印刷物はこれと同等とはみなされません。


【共有ログインアカウント】

第2のデータ完全性に関する質問は、「なぜ、FDAはコンピュータシステムへの共有ログインアカウントの使用を問題にするのか?」について取り上げています。

本件に関するFDAの回答は、「ログイン認証情報が共有され、ログインを通して特定の個人の識別が不可能な場合には、CGMP要件を満たしていないと見なします」というものでした。

Part 58では、ユーザーを「データ入力時に識別」すること及びデータの変更時の監査証跡が求められています。

では、我々は何をしたらよいのでしょう? それはコンピュータシステムのアカウントを共有しないことです。つまり個々のアクションから個人を特定することが可能でなければなりません。


【電子署名】

最後に、「標準製造指図及び管理記録における電子署名は手書き署名の代わりに使用することができますか?」という質問です。

それに対するFDAの回答は「Yes」であり、「記録に対し電子的な署名を行った特定人物の識別を確実にするために使用した管理方法を文書化すること」を企業に推奨しています。この質問では、FDAの査察官がいったい何を見ているかということを改めて考えさせられました。

我々は、何をすべきなのでしょうか? それは進んで電子署名を使用することです。そして署名者を識別する方法を記録しておくことです。


Jamie Colgin著。統合コンピュータシステム・コンプライアンス監査に精通。他のCSVコンサルタントや監査員とは異なり、彼女の包括的なアプローチは、リスク及び問題の所在を明らかにすることにより、GLP及びGCP規制要件にリンクさせ、社内のエグゼクティブチームまたはスポンサーの視覚的な解釈を促しコミュニケーションの向上を図ることを特徴とします。御社の有望なスタッフに向けた監査、模擬査察、改善または職場内訓練に関する支援が必要な場合には、是非お問合せください。



本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。

規制関連記録入門書パート1:医療機器製造業者に関する要求事項の解読

Les Schnoll(Quality Docs, LLC)著
記録は、紙媒体または電子的であっても、手順が適切に実行されたことをFDAが確認することにかけて極めて重要な役割を果たすものです。


概要

品質システム規則(QSR)は、規制要求事項を実行するための手順の構築、実行及び維持が医療機器の安全性及び有効性を保証するという理論を前提とするものです。
従って、品質システム手順の実行を文書化するために要求される記録の重要性は容易にご理解いただけると思います。

品質システム査察ガイド(QSIT)(医療機器製造業者の査察中に使用)の基本テーマの1つに、「テストを確立する」があります。QSRでは「確立する」ことが求められている手順が多数あり、「確立する」とは「明確にし、文書化(書面または電子的)し、かつ実施すること」と定義されています。

記録とは、査察対象企業によって手順が適切に実行されていることをFDAが確認するうえで、またより広い範囲においては十分かつ効果的な品質システムが確立され、維持されていることを確認するうえで極めて重要な役割を果たすものとなります。


一般的要求事項

【アクセシビリティ】
21 CFR 820.180では、QSRで要求されるすべての記録は、製造業者の責任者及び査察の実施に指名されたFDA職員が容易に立ち入ることのできる製造施設またはその他の場所に維持する
ことを義務付けています。このような記録は、査察を受ける施設に保管されていないものも含め、FDA職員が直ちにレビュー及びコピー(複製)できることが求められます。
FDAにおける「コピー(複製)する」には、電子記録の印刷ならびに複写が含まれます。


FDAは、QSRで要求される記録が査察の期間中に利用可能な状態であることとしています。
製造業者が記録を遠隔地に維持する場合、翌営業日、遅くとも2営業日に査察用記録を作成する
ことを希望するものです。


【可読性及び保管】

21 CFR 820.18では、QSRによって必要とされる記録は文字が読みやすく、劣化を最小限にし、紛失を防止するように保管されることを義務づけています。
加えて、自動化データ処理システムに保管される記録は、バックアップをとることが求められます。これは、記録の保管に使用する媒体に応じて読み取り可能な旧技術を維持することも企業に要求する場合があります。


【機密保持】

21 CFR 820.180(a)「機密保持(Confidentiality)」では、製造業者は機密にする記録にその旨マークをつけ、FDAの要員がその情報を21 CFR Part 20の情報公開規制(Public Information Regulation)のもとで開示してよいか否かの判断材料とすることを示しています。
これは必ずしも、「極秘」とスタンプが押されたすべての記録をFDAが機密情報とみなす
ということを意味するものではありません。


【記録の保管期間】

21 CFR 820.180(b)「記録の保管期間(Record Retention Period)」には、品質システム規則によって必要とされるすべての記録が機器の設計及び期待される寿命と同じ期間保管されること、ただしいかなる場合も製造業者により商業流通のためにリリースした日から2年未満ではないことが定められています。
品質システム記録を含むすべての記録は、この要求事項の対象となります。調査の実施の際にこのような記録が必要となる場合があるために、FDAではこの保管期間が必要であると考えられています。


【例外】
21 CFR 820.180(c)の「例外(Exceptions)」では、§820.20(c)「マネジメントレビュー」、§820.22「品質監査」で要求される報告書、並びに§820.50(a)「供給者、契約者及びコンサルタントの評価」の要求事項を満たすため使用されるサプライヤー監査報告書にはこのセクションが適用されないことが説明されています。
しかしこれらの条文のもとで確立された手順には適用されます。


21 CFR 820.180(c)には、FDAが(方針の問題として)通常査察中にレビューまたはコピー(複製)を要求しない記録のタイプが記載されています。
しかしながら、21 CFR 820.180(c)では、指名されたFDA要員の要請に応じて、製造業者の執行責任を有する経営者は、QRSで要求されているマネジメントレビュー及び品質監査(該当する場合には供給者監査)が実施され文書化されていること、それらが実施された日付及び必要な是正措置が講じられたか否かを書面にて証明することを義務付けています。
FDA調査官には(スーパーバイザーを通して)、この証明の要請前にはCDRHとのコンサルティングが義務づけられています。


機器原簿

21 CFR 820.181「機器原簿(Device Master Record)」では、各製造業者は機器原簿(DMR)を維持することが要求されています。「機器原簿」とは、21 CFR 820.3(j)で定義され、完成機器に対する手順及び仕様を含む記録を編集したものを意味します。
機器原簿とは、この情報の場所を含むか、またはその所在を参照するものです。


FDAはDMRの一貫性及び連続性を確保するうえで管理が必要であると考えており、各製造業者は各DMRが作成され、820.40「文書管理(Document Controls)」に従って承認されることを確実にすることが義務づけられています。
21 CFR 820.181では、各DMRは、次のものを含むか、またはその所在を参照するものであることが定められています。


●機器の仕様:適切な図面、構成、配合、構成部品仕様書及びソフトウェア仕様書を含む機器の仕様書。

●生産工程仕様書:適切な設備仕様書、生産方法、生産手順及び生産環境仕様書を含む生産工程の仕様書。

●信頼性保証手順:使用した合否判定基準及び信頼性保証のための設備を含む信頼性保証手順及び仕様書。

●包装及びラベリングの仕様書:使用した方法及びプロセスを含む包装及びラベリングの仕様書。

● 据付け、保守及び付帯サービス:据付け、保守及び付帯サービスの手順及び方法。


【DMRとDHFの対比】

機器原簿とは、特定の機器または機器群を製造するための製造現場における現行の手順及び仕様を含むか、参照することを目的に作成されるものです。一方で、設計履歴ファイルは、調査及び連続した設計への継続的な取り組みの際に使用する機器の設計活動(設計履歴)の進行を記録している履歴ファイルです。

ソフトウェアに関しては、ソフトウェア仕様書にソフトウェアソースコードが含まれます。特定の機器または機器群の生産に移管される最終的なソフトウェア仕様書は機器原簿に格納されるか、参照されるものであり、それ以前のバージョンは設計履歴ファイルに格納されるか参照されます。
機器の処理に関するバリデーション(妥当性確認)及びベリフィケーション(検証)の要求事項は、DHFよりもDMRに保存されることが望ましい場合があります。

しかしながら、複数の異なる機器または機器群に実施されるプロセスに関するバリデーション(妥当性確認)及びベリフィケーション(検証)活動のドキュメンテーションは、製造者にとって最適である場所に格納または参照することが可能です。

FDAでは、情報を特定のファイルにまとめることよりも、製造業者が効果的な方法で情報を維持、保存、及び検索することがより重要であると考えています。


【保存及び検索】

21 CFR 820.181では、情報を「含むか、またはその所在を参照する」というオプションをDMRに提示しています。また、そのような情報を特定のファイルにまとめることよりも、製造業者が効果的な方法で情報を保存し検索することをFDAでは重要視しています。


機器履歴簿

21 CFR 820.184では、製造業者は機器履歴簿(DHR)を維持することを義務付けています。
「機器履歴簿」とは、21 CFR 820.3(i)で定義されており、完成機器の生産の履歴を含む記録を
編集したものを意味します。

DHRとは、各バッチ、ロットまたはユニットに対し維持され、機器が機器原簿及び品質システム規制の要求事項に従って製造されたということを示すものです。
DHRは、こうした情報を含むか、またはその所在を参照するものです。

基本的に、DHRは特定のバッチ、ロット、またはユニットに対する生産の履歴を記録するのに必要な情報を提供するものであり、機器の設計履歴を文書化するために必要な情報を提供する設計履歴ファイルとは異なります。
DHRは、以下の情報を含むか、またはその所在を参照することが義務付けられています。


● 製造日

●製造数量

● 流通のためにリリースした数量

●機器がDMRに従って製造されたことを示す合格記録

●各製造ユニットに使用された一次的認識ラベル及びラベリング

●使用された機器の識別及び管理番号


【現行の基準】

基本的に、DHRは機器のバッチ、ロット、またはユニットに対する生産履歴の記録で構成されています。
DHRは、機器原簿の最新版に含まれる文書の要求事項を反映すべきものです。
FDAでは、機器履歴簿に含まれる合格記録が機器原簿に含まれる最新の合否判定基準を反映していなかった事例の発生が確認されています。

【ラベリング】

FDAは、DHRには各生産ユニットで使用された第一次ラベル及びラベリングを含むことという要件により、21 CFR 820.120のラベリングの管理とあいまって、適切なラベリングが使用され、願わくは不適切なラベリングに起因する回収の回数が減少される効果をもたらすことを期待しています。

【識別及びトレーサビリティ】

「使用された機器識別及び管理番号」の文書化に関する条項は、21 CFR 820.60「識別(Identification)」及び820.65「トレーサビリティ(Traceability)」に明示されていない要求事項を追加するものではありません。

【レビュー】

DHRはQSの必要条件となっているため、DHRの妥当性についてレビューを行い、21 CFR 820.40「文書管理(Document Controls)」に従って指定された個人によって承認されることが必要となります。


品質システム記録

21 CFR 820.186では、製造業者が品質システム記録(QSR)を維持することを定めています。「品質システム記録」とは、21 CFR 820.186で定義され、特定の機器または機器群に固有ではないもので、QSRの要求する活動の手順及び文書化を含むか、その所在を参照するものであり、21 CFR 820.20「経営者の責任(Management Responsibility)」で要求される記録を含むがそれだけに限らないものとされています。
各製造業者にはQSRが820.40に従って作成され承認されることを確認することが求められます。

【機器に固有ではないQSR】

品質システム記録と機器原簿は区別されるものです。機器原簿に含まれる、または参照される文書は、製造されている特定の現行機器または機器群に関連するものです。
一方で品質システム記録は、特定のタイプの機器に固有ではない活動の手順及びドキュメンテーションを含むか、その所在を参照するものです。

基本的に21 CFR 820.186「品質システム記録(Quality System Record)」では、DMRに含まれる機器に固有の記録と、特定のタイプの機器または機器群に固有でない活動の手順及びドキュメンテーションとを区別しています。

【QSR及びDMRデータ】

機器の品質特性の測定に必要となる特定の計器(及び手順)はDMRに含まれるか、参照をつけることが要求されますが、こうした計器の通常の較正手順はQSRに含むか、参照をつけることができます。

苦情処理記録

21 CFR 820.198は、製造業者が苦情ファイルを維持し、苦情の受付、レビュー、及び評価を行うための手順を確立することを定めています。「苦情」とは、21 CFR 820.3(b)で定義されており、「機器が流通にリリースされた後で、機器の識別・品質・耐久性・信頼性・安全性・有効性または性能に関連した欠陥を主張する、文書、電子媒体、または口頭のコミュニケーション」を意味します。


流通前に同定された不適合に関する問題は、企業の不適合品の管理ならびに是正措置及び予防措置関連のシステムの取り扱いとなります。
機器が流通にリリースされた後の欠陥を主張するいかなるコミュニケーションも、まず企業の苦情処理システムで対応し、最終的に同様に他のシステム(CAPAなど)での対応が実施される可能性があります。

21 CFR 820.198「苦情ファイル(Complaint Files)」には多くの詳細情報が記載されていますが、苦情処理活動の有意性から、FDAは21 CFR 820.198の詳細情報量を適切であると考えています。

21 CFR 820.198(a)では、製造業者が苦情ファイルを維持しなければならないという一般要求事項を定めています。製造業者は、正式に指名された部署によって、苦情の受付、レビュー及び評価を行うための手順を確立し維持することが義務づけられています。

苦情処理の手順によって、次の事項を確実にすることが求められています。

●すべての苦情が均一かつタイムリーな方法で処理されること。

● 口頭での苦情は、受付時に文書化すること。

●21 CFR Part 803「医療機器報告制度(Medical Device Reporting)」のもとでFDAへの報告が要求されている事象か否かを判断するため、苦情を評価すること。

【初期評価】

21 CFR 820.198(b)によって要求される苦情の「レビュー及び評価…」は、苦情が「有効」であるか否かを判断する苦情の最初のレビュー及び評価です。
この評価は、21 CFR 820.198(c)及び820.198(d)で必要とされる苦情の調査と同じものではありません。

この初期評価は、次の判断を下すために実施されるものです。


● 情報が真に苦情であるか否か。

● 苦情の調査が必要であるか否か(苦情処理が有効である場合)。

【調査】

21 CFR 820.198(c)では、製造業者は機器、ラベリング、または包装がその仕様を満たしていない可能性を含む苦情をレビューし、評価し、調査を行うこととしていますが、だだし、そのような調査を類似の苦情に対し既に実施していて、改めて調査する必要がない場合はこの限りではないとしています。
すなわち、製造業者が同じタイプの不具合または不適合の調査が実施済みであることを示すことができる場合、重複する調査は必要ありません。
21 CFR 820.198(b)では製造業者に調査を行わなかった理由を文書化することが要求されているため、過去に行われた苦情調査に関する言及を正当性の根拠に含む必要があります。


【FDAへの報告の対象となる苦情(MDR規則下)】

21 CFR 820.198(d)では、医療機器事故報告規則(Medical Device Reporting Regulation)(21 CFR Part 803)のもとで、FDAへの報告が義務付けられる事象に相当する苦情は、指名されたものにより直ちにレビューされ、評価され、調査が実施されることが製造業者に要求されます。
MDRとして報告されなければならない事象を含む苦情は、苦情ファイルに別に区分、またはその他の方法で明確に識別された状態で維持することが求められます。


【是正措置/予防措置】

21 CFR 820.100「是正措置及び予防措置(Corrective and Preventive Action)」では、流通の前または後に発見された不適合品に対し、不適合の重要度及びリスクに応じて調査を行うことが定められており、企業は苦情調査を是正措置及び予防措置システムに関連づけるかの判断を下します。それ以外の場合には、苦情調査の手順に21 CFR 820.100の必須要素が統合され、製品の不適合が同定された場合に21 CFR 820.198及び21 CFR 820.100の要求事項が満たされていることを確認する必要があります。



【苦情処理記録】

21 CFR 820.198(e)では、このセクションに基づき調査を行う場合、各調査の記録は21 CFR 820.198(a)で正式に指名された部署によって維持されることが定められています。
調査の記録には必ず次の事項を含むことが要求されます。

●  機器の名称

● 苦情受理日

●  使用された機器の識別及び管理番号

●  苦情元の氏名、住所、電話番号

●  苦情の性質及び詳細

●  調査の日付及び結果

●  実施した是正措置、及び

●  苦情元への回答

追加情報

820.198(e)で要求されている情報に加えて、820.198(d)の要求事項に応じて実施される調査の記録には、以下の決定事項が含まれることが義務付けられています。 

● 実際に機器が仕様書どおりに機能しなかったかどうか。

●  機器が患者の治療、または診断のために使用されていたかどうか。

●  機器が報告された事故、または望ましくない事象に関係しているならば、どのような関係か。

設計履歴ファイル

21 CFR 820.30「設計管理(Design Controls)」は、各製造業者が各機器タイプに対し設計履歴ファイル(DHF)を確立し維持することを義務づけています。
DHFは、承認された設計計画及びQSRの要求事項に従って設計が作成されたということを示すために必要な記録を含むか、または参照しなければならないとしています。

正式な設計管理及び設計履歴

ファイルの要求事項(双方ともGMPの一部)は、1996年から1997年にFDAによって制定されたものです。

こうした要求事項は、規制により「準拠が義務化」されるだけではなく、開発及び変更の適切な文書化を通じて、またフォルススタート、行き詰まりや「窮境」の記録などを通じて企業のIP(知的財産)の保持」につながるものでもあります。

設計履歴ファイルとは、医療機器の重要文書であり、医療機器の設計履歴を説明する一連の文書の記録です。つまり、医療機器製造へのインプットが予め設定されたプロセスにて最終製品に至るまでの道のりに関するドキュメンテーションです。DHF要求事項は、DHFを構成する重要な要素です。

DHFは、FDAからの厳しい要求事項であり、基本的に21 CFR 820.30の指示に従い設計管理に一致していることを示すものです。DHFは、製品に指定されたインプットが最終製品に反映されていることを示すためのものであり、開始日が設定された後にはさらにはそれが管理条件下で達成されてきたのかについて示すものです。
つまり、最終的には設計管理要素を示すものとなります。

求められるDHF要求事項のパラメータまたは要素とは、以下の通りです。

●  設計計画

● 設計入力

● 設計出力

●設計変更

●設計レビュー

●設計検証

●設計バリデーション

● 設計移管

● 設計履歴ファイル


DHFは、製品がどのような開発のあゆみをたどってきたのか、どのような意思決定が成されてきたのか、またその理由について歴代の従業員が理解するための長期記憶としての役割を果たすものです。



Leslie (Les) Schnoll, J.D., MBA, M.S., RAC, CQP。医療機器、医薬及び臨床/前臨床医学の業界で信頼性保証、品質管理、監査、規制コンプライアンス、マネジメント及び微生物学に幅広い経験を持ちます。

Quality Docs, LLCの主導者であり、FDAの規制対象企業及びArizona Department of Healthの規制対象企業に対する品質及び規制関連サービスを提供しています。

現在、College of Professional Studies at Northeastern UniversityのMaster of Science in Regulatory Affairs for Drugs, Biologics, and Medical Deviceプログラムのインストラクタ、及びMS Regulatory Science and Health Safety Programにおいて、Arizona State University, College of Nursing and Health InnovationのFaculty Associateを務めています。

また近年では、J.T. Posey CompanyのQuality Assurance and Regulatory AffairsのVice Presidentを務めた経験があり、ThermoGenesis、 Theravance、Solectron、 Hill-Rom、Gliatech、Cyberonics、Southern Research Institute、 KPMG Quality Registrar、及びDow Corning Corporationの幹部役職を歴任。

Lesは、米国、カナダ、ヨーロッパ、南アメリカ、ロシア、オーストラリア及び環太平洋諸国でさまざな
トレーニングプログラム、監査及びシステム開発に従事した豊富な経験を有しています。
お問合せは、(623)889-5707へお電話をいただくか、もしくはfdaquality@yahoo.comまでアクセスしてください。ウェブサイトwww.qualitydocs.orgも合わせてご覧ください。


本投稿は、英語の文献を元に翻訳または抄訳及び校正を行っており、本サイトに掲載されている全ての情報や画像の著作権は、当社(マスターコントロール株式会社)に帰属します(他社提供のクレジット表記入り画像等を除く)。コンテンツの再発行及び再配布は、個人利用の場合を除き、当社より許可を得た場合のみ可能です。また、本ブログを含む当社のWebコンテンツを利用することで発生する損害やトラブルについて、当社は一切の責任を負いません。