2018年8月17日金曜日

治験実施医療機関選定のための10個のポイント

実施医療機関選定は、治験の実施において極めて重要な要素です。
実施する治験の内容に適した医療機関を選択することが成功の鍵となります。

各治験の実施は長期に渡り、治験実施には様々な管理プロセスの確立・運用が求められます。新薬を上市するまでに要する費用は20億ドル以上、市場参入遅延が発生した場合、その損害は1日あたり、100万ドルから800万ドルと推計された調査結果が発表されています。その為、治験全体の運用には非常に高度な効率性を考慮する必要があり、その点において、治験実施医療機関の選定が極めて重要です。

昨今、課題が発生した治験に対するサポートを主体としたビジネスが増加しているように、発生する問題を抑制する上で鍵となるのは、各治験の内容に適した医療機関を選択することです。

Tufts Center for the Study of Drug Development(CSDD)の調査では、目標症例数に達しなかった施設が37%、1例も得られなかった施設が11%と発表されています。最終的には、89%の治験で目標症例数に届いていますが、これは大幅なスケジュール遅延を意味しており、結果として、膨大な追加費用が発生しています。

このような問題に対して、製薬会社では必要数以上の医療機関と契約するなどの対応を行っている一方、このアプローチは、製薬会社と医療機関、CRO間における信頼を揺るがすことであり、大幅な費用増や遅延につながっています。

さらには、毎年約40%の治験責任医師がこれ以上の治験実施を望まないという判断をしている一方、一般的な多施設共同治験には約30%の新規医療機関を含める必要があり、結果として世界的なCRA不足が発生しています。

医療機関の選定が不十分であると、目標症例数に対する達成率の予測も不確実なものとなり、結果として治験の中止や終了になってしまう場合、約20%のコスト増をもたらす危険性もあります。その改善策として、適切な医療機関施設の選定におけるポイントを幾つかご紹介いたします。

1. 医療機関の設備・機器
プロトコールに明記された要件を満たす設備や機器が医療機関に備わっていること。

2. 担当者の経験等
法規制の遵守や治験のモニタリングを実施する上で必要な経験等を有する担当者がいること。

3.  治験実施医療機関としての実績
分野の関連性や過去の実績を考慮しながら、予定している治験の規模や複雑性に適していることを確認する。

4. 治験対象の疾患への専門性
予期せぬ課題の発生を防止する為、治験対象の疾患に専門性のある医療機関を選択すること。

5.  医療機関における患者数
目標症例数に対する達成率予測の精度をより確実なものとする為、対象疾患による患者数の把握も重要です。

6.  被験者の登録実績
被験者の登録予測の精度をより確実なものとする為、他の症例に対する過去の登録数の確認も重要です。

7. 治験開始までにかかる時間
治験開始までにかかる平均的な時間を確認すること。また、その時間の定義(被験者の登録終了から治験開始までの時間か)についても確認し、業界標準との比較を行うこと。

8.  対象疾患による患者の治療状況
対象疾患に対する治療状況や患者数等について確認すること。

9. 専門性の高い治験責任医師
長年、対象疾患の研究等で培った専門性を有する医師と協力することで、治験全体の質の向上が期待できます。

10. 施設における継続的改善
各治験で発生した課題を収集し、既存プロセスの是正や予防措置につながる活動を有しているか、また、ここ数年で採用した新しいプロセスやシステムについても確認すること。

このようなポイントは、アセスメントや事前調査時、プロジェクト中における重要な節目に考慮すべき項目です。医療機関の選定プロセスを最適化することは、治験全体の効率化にも繋がり、より戦略的に様々な治験を実施していくことが可能となります。

著者のご紹介
Craig Morgan
Head of Marketing, goBalto, Inc.
Craig Morganは、情報科学と生物情報学の創薬への応用において15年以上にわたる経験を有するテクノロジー及びライフサイエンスマネジメントのプロである。現在はgoBaltoにてマーケティングとブランド開発部門を率いており、治験実施責任組織、CROや施設と協働しながら臨床試験におけるサイクルタイムの短縮、コラボレーション及びオーバーサイトの向上に取り組む。 ご連絡は、cmorgan@gobalto.com.までEメールでお問合せください。

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